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May 2011

ニューヨークでのリサイタル Ⅱ:プログラム変更 

ニューヨークに経つ2週間程前にコンサートの全プログラムを友人のMちゃんに聴いてもらいました。ちょうど地震の前日でした。モーツアルトのキラキラ星変奏曲、シューベルトの即興曲、ベートーベンの熱情ソナタ、後半がオール・リストで「忘れられたワルツ」「葬送」「コンソレーション」そして「メフィスト・ワルツ」でした。時間的には前半後半共に40分以上のフルリサイタル・プログラムでした。Mちゃんのアドバイスがまた的確で気付かなかった事を色々と気付かされたり、一つの事にこだわり過ぎてしまっていたために違う方向に行ってしまっていた音楽を引き戻すきっかけになったり、作曲家や曲自体の個性をそれぞれに話し合う事で自分のやりたい事を再認識すると共に自分の足りない所をどのようにしたら改善出来るかを色々と発見出来ました。コンサートまでは2週間あるので、改善出来る時間は十分。最後のラスト・スパートは大変ながら、充実もする時期です。

張り切って最後の追い込みを、と思っている時に地震。
予定通りにはいかなかったけれでも、自分に出来る事は最後まであきらめずにコンサートまでやったつもりです。

予定通りにいかなかったのはしかし練習だけではありませんでした。
プログラムの中のリスト作曲の「葬送」。コンサートには乗せた事はなかったが今まで何回か先生と共に勉強した好きな曲で、今回楽しみな曲の一つでした。(実はMちゃんが一番褒めてくれた曲でもありました...。)

しかし、ニューヨークに発つ前の金曜日(コンサートの8日前)から急にこの曲が弾けなくなりました。左手の単音の低音で大きな音で始まるのだが、どうしても身体に拒否反応が出てしまい、どうしても身体がその最初の音を出したがらないのです。
地震のニュースで「死」というものがあまりにも近くにたくさんあり過ぎた事、そして相反するのだが、曲の内容が自分の体感している「死」とあまりにかけ離れていてとても欺瞞的に感じてしまっていたのだと思います。後から調べたら、この「葬送」は革命で亡くなった友人達を悼んで書いたらしいので、あの時期の私には何か英雄的すぎる感じがしたのかもしれない。

そしてもう一つ引っ掛かってしまったのが、地震から一週間が過ぎた時に黙祷を捧げるニュースの中で、行方不明になっているがまだ生きているかもしれないから黙祷をしない人もいる、というのを聞いて、この「葬送」を弾くのは不謹慎とも思ってしまいました。

なので、この「葬送」を弾くかどうかはニューヨークに着いてから決めようと思っていました。飛行機の中で元気の出る映画をいくつか見て、ニューヨークに着けば着くで、何不自由ない普通の生活が送れるので、大丈夫かも、とも思ったが、やはりピアノの前に行くと、身体がどうしても弾かせてくれません(泣)。

T.Roosevelt%20Birthplace_resize.jpgコンサートの主催者側は私の気持ちを尊重して下さり、おまけに「プログラムが全体的にに長過ぎると思っていたので、ちょうど良かった」とも云って下さったので、ので、最終的には「葬送」は今回弾かない事にしました。

自分の中でのもう一つの変更が最後のアンコールでした。リサイタルの時はいつも自分で話す事は全くしないのだが、やはり今回はどうしても日本から来た身として話をしたかった。プログラムを全部弾き終わってから、少し話させて頂きましたが、やはり地震の話をするだけで何ともいえない感情が沸き上がってしまうので、音楽を弾く状態ではなくなってしまいました。なので、今回はアンコールはなしでした。

私はいつも自分の結婚式で弾いている友人がとても不思議でした。嬉しい席だが、それにしても感情的になっている場でよく弾けるな〜といつも感心していました。
そして、究極と思っているのが、ダイアナ妃のお葬式。あの時にダイアナ妃のとても親しい友人だったというエルトン・ジョンが「Candle in the Wind」というのをその場で歌っていたが、あれがどうにも信じられない。プロ意識の違いなのかもしれないが、自分の友人が亡くなったら私はきっと何も出来なくなってしまうと思う。今回の地震で身近な人が亡くなった訳ではないが、ニューヨークのコンサートに色々と影響が出たのは確か。嘘偽りないコンサートになったとは思うので、悔いはないが...。

ニューヨークでのリサイタル Ⅰ:映画「バーレスク』

やっと少し心の余裕が出て来たので、ニューヨークの話を少し。

3月の大地震の後にニューヨークでリサイタルがありました。
こんな時に日本を出るべきなのか、コンサートをするべきなのか、と色々と迷いがありましたが、色々と考えた末に結局予定通りニューヨークに行く事にしました。

震災直後は余震も多く、計画停電があったり、テレビでは連日の津波映像や家族再会の感動映像、原発の全く予測の付かない状況に精神的にとても不安定でした。練習も停電の時は寒い中、暗い中ロウソクの光の中何とか続けていましたが、しかし何よりも、テレビで見た行方不明の親族を捜している人達の映像が練習中も心に浮かんでは泣けて来てしまうのでなかなか集中出来ません。こんな時にピアノを弾いている場合なのか、と疑問に思ったり...。しかし、震災後すぐには自分が何か直接的に役に立つ訳でもなく...。そんな中、何とか成田(この時期は空港まで行くのでさえも様々な壁が...)まで行き、そして飛行機に乗りました。

コンサートは準備に色々な人が関わっているので、やはり携わっている方々に迷惑をかけてはいけないというプレッシャーがあります。ニューヨークまで辿り着けるのだろうか、という不安さえもあったので、飛行機に乗って初めて、少し肩の力を抜く事が出来ました。

そして、飛行機の中で素晴らしい映画を観ました。
バーレスク」というミュージカルで、クリスティーナ・アギレラが主役。アギレラは遅ればせながら名前は知っていたが歌をちゃんと聴いた事がなかった。なので、この映画を観て超びっくり。こんなに凄い人だったんですね!!!かっこいい!そして、全身全霊で歌っているその姿に本当に感動しました。この映画一本でとてつもない元気と勇気をもらえました。今までの不安や心の迷いも消えて、ニューヨークでは自分の出来る限りの演奏をしょうとつくづく思えました。

映画、音楽、歌、芸術は本当に意味があって、凄い力があるのだと実感出来て、救われた思いでした。

お祈りの灯

%E9%8E%8C%E5%80%89%E5%AE%AE%EF%BC%91_resize.jpg先日、鎌倉宮で「東日本大震災 万灯追善供養復興祈願祭」が行なわれたので、行ってきました。これは先日参加した「子供のためのチャリティ・イベント」の際にこの祈願祭に灯すロウソクのためのブースがあったので知りました。遠くであればロウソクだけでも良かったのだが、鎌倉宮は家から歩いて15分なので行く事にしました。明るいうちから始まっていたのだが、暗くなるとその灯りの美しさに感動します。そこに込められていると思いに...。

琴の演奏が奉納され、神主さんと共にお祈りを捧げ、ロウソクが灯される。
一人のお祈りも力はあると思うが、やはり大勢の人と一緒にお祈りするというのは大きな相乗効果を生み出すように思う。多くの人とお祈りする事によって、自分の心にも大きな力と平安がもたらされました。

%E9%8E%8C%E5%80%89%E5%AE%AE3_resize.jpg後から少し考えて思ったのだが、前回の鶴が岡八幡宮での祈願祭も今回の祈願祭もお宮で行なわれたもの。やはり神道が最も日本という国と密接に繋がっているように感じてしまう。仏教もキリスト教も今回の震災で色々と動きはあるのだが、何か人ごとのような気がしないでもない。(と、書いてしまったが、今回の祈願祭は鎌倉宮と長谷寺、二カ所で行なわれたもの。同時刻にロウソクが灯されるようになっていたらしい。)

私はクリスチャンだが、今回の事ではやはり宗教とは関係なく、とにかく多くの人と一緒に祈りたいという気持ちが強く、こういう場を作ってくれるのは本当に感謝な事。教会というのは残念ながら建物なので、信者ではない人がお祈りするためだけでも入って来づらいと思うのだが、オープンスペースの神社はそういう垣根の高さがないのですね。

鎌倉子どもチャリティイベント

%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%8A%E3%81%95%E3%82%93_resize.jpgゴールデンウィーク真っ最中。今日の鎌倉の人手は尋常でなかった。桜が咲き始めた時に、自粛ムードが強く、人も車も少なくて急に寂しくなっちゃったけど、こうも反動で出て来られると戸惑います(笑)。複雑な気分。ちょうど良い人手というのはなかなか難しい。。。

休日続きだが、インターナショナル・スクールに行っている生徒が多いのでレッスンはいつも通り。全くお休みの感じはなしだが、今回の連休中に一つだけイベントが。
昨日、鎌倉の海浜公園で行なわれた東日本大震災・鎌倉子どもチャリティイベントに参加して来ました。

Charity%20Event1_resize.jpg10日程前にいつも行っている教会で御ミサの後にこのイベントの主催者の方がこの宣伝をなさったのだが、その方の熱意がひしひしと伝わって来て、また主旨にもすぐに賛同出来たので、終わった後で直接お話を聞きに行きました。

火曜日はいつもレッスンが午後から入っているので、半日だけでもと思っていたらラッキーな事に生徒さんの方から日にちの変更のリクエストがあったので全日参加する事が出来るようになりました。

集合は朝7時(!!)。結構広い海浜公園の飾り付けから始まりました。世界各国の子ども達の書いた被災地の子ども達への励ましのカードや絵、鯉のぼり、色とりどりの旗、大きな布に描いた絵等,会場中に飾られました。意外とボランティアの数が限られていたので,結構動きっぱなしでしたが、随分と殺風景な公園が華やかになりました。そして、10時半からはフードの販売。鎌倉では有名なベルグフェルドさんのミートパイやキッシュ、日進堂さんのおかず/お菓子パン、おおくにさんのどら焼き、T-サイド(インド料理レストラン)のサモサ、北村牛肉店さんのコロッケ、フロレスタのドーナッツなど、全て寄付されたこれらのものを販売、そして完売。

他にチーズナチョスや,ソーセージやエスニックフードの売店があったり、ロミロミマッサージや,整体、人力車体験、フリーマーケット、そしてステージでは和太鼓や歌、フラダンス等のパフォーマンスもありました。上げられた収益の全てはワールド・ビジョン・ジャパンへと寄付されるそうです。

%E5%92%8C%E5%A4%AA%E9%BC%93%E3%80%80%EF%BC%91_resize.jpg地震以来、どうしても寄付やお祈り以外に何か自分の身体を使って出来る事はないのだろうか、と思い続けて来たがやっとそれが一つ実現出来て、本当に良かった。私の隣で一緒に販売をしていた高校生の男の子に「今日は家族と一緒に来たの?」と訊いたら「いや,一人で来ました。」と云っていた。近所に貼ってあったチラシを見てボランティアに。ロミロミのマッサージをして下さった方も、仲良くなった他のボランティアのアーティストの人達も相当遠くから来ていてびっくり。朝7時集合で私も久しぶりに5時半に起きたが、その人達は4時起きと云っていた...。

このイベントの実行委員会の熱意と実行力にはとにかく脱帽。たくさんの人が何かしたい、けれど何をしたらいいのか分からないのをまとめて下さって、それが形となって被災地に届くのは本当にこちらも感謝。今回のイベントは特に子どもに絞っていたので、とても明確で本当に共感出来ました。みんなの思いが被災された子ども達に届きますように...。

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