Thoughts

November 2011

癒されて

今回の釜石行きを考える時に、以前に一緒に作業したMさんにピアノを弾く事が 一つの目的でした。前回「ピアノ弾いたらみんな喜ぶと思うよ」と云われた時になんで弾かなかったんだろう、とつくづく後になって後悔していたのだが、今回、釜石に向かうローカル線に乗っている時に急に理由が分かりました。被災地に入る時の緊張感だけでなく、気持ちも体も急に萎縮する感覚に陥りました。この時に「こんな状態だったらやっぱり弾けなかったのは仕方がなかった」と思いました。

そして、今回は機会があれば弾こうとは決めていたけど、実際の現地にいる感じは音楽、特にクラシック音楽からはまだ遠い気がします。自分も2日目位から自分がピアノを弾く人間だと云う事をすっかり忘れていました。何のジャンルにしても「音楽」そのものが聞こえて来る事がほとんど無かったように思う。

実はリサイタルが終わってからも、目覚めた瞬間から頭の中で前の日に練習いた音楽が鳴っていて、神経が異常に覚醒し過ぎている感があって困っていたが、これは釜石に行っている間に無くなりました。本当に音楽とは無縁の4日間。

%E6%95%99%E4%BC%9A_resize.jpg帰って来た翌朝(前日の真夜中に帰って来たので)に最初に耳にしたのは、友人が10年以上前に作ったCD。以前から「いいな〜」とは思っていたけど、今回はつくづく癒されました。こんなにもピアノの音が心に染み入るか、という感じでした。こんなに感動すると、「今回は弾けなかったけど、録音して送ろう」なんてまた張り切っちゃうんだけど、やはりこれも離れているから感じる事なんだろうな〜と思ったり...。

心に染み入ると云えば、つい先日、出掛ける前にちょっと教会に寄ってお祈りしようと思ったら教会で親しくしているKさんがオルガンの練習をしていました。陽の光がちょうど窓から差し込んでいて、曲も素敵だったのだが、Kさんの弾き方がまたとても優しい感じでとても癒されました。ご挨拶しようかなとも思ったのだが、あまりに素敵な空間だったので、そのままそ〜っと出て来ました。

最近つくづく音楽の素晴らしさに目覚めているような気がする。自分で弾いていてもそうだし、クラシックだけでなくスポーツクラブで運動をしている時のポップス系の軽い音楽にも感動している自分がいる。何だか今頃になって音楽が体の中に完全に入っていっている感じがする。今、ばりばりと練習している訳ではないが、さなぎ状態で音楽的な大きな変化が起きているように思う。

再び釜石へ:Ⅳ

                        大型タンカーのあった場所
%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%82%AB%E3%83%BC%E5%BE%8C_resize.jpg釜石4日目。

釜石での最終日。釜石での最後の日とあって、どうしても港まで行きたかったので、朝5:30に起床。明るくなって来たのを見計らって6時頃に一人で散歩に出掛けました。

港に行きたかった理由は、釜石ベースキャンプのブログで港に乗り上げていた巨大なタンカーが無くなっている事を知っていたから。6月に釜石に来た時に見ていただけに(7月のブログ参照)、その後、どうなっていたかをぜひ見に行きたいと思っていました。

港近くは瓦礫が無くなっていたり、道路が整備されたりもしているが、やはりまだまだ半壊の建物も多い。ずんずんと歩いていたら、見覚えの無い所に出て来たので、変に思って戻ったら、タンカーのあった所を通り過ぎていました。今では岸壁に大きな窪みが残っているのみでした。

%E3%81%8C%E3%82%93%E3%81%B0%E3%82%8C%E6%9D%B1%E5%8C%97_resize.jpgそれにしても海が美しい。前日に仮設住宅の方と鎌倉の海の話になり、彼が「湘南の海は水が濁っているよね」と云うので、「確かに夏はそうだけど、冬の海はきれいですよ」と切り返したが、この釜石の海の色は深みがあるのに独特の透明感があり、毎回見る度にその美しさに感動してしまう。この海が、と思うと悲しくなったり...。

7時過ぎにベースキャンプに戻り、朝食にまたお昼のおにぎり作り。一連のミーティングとベースキャンプのお掃除。

この日は昨日とは別の仮設住宅での心のケア。ベースキャンプから歩いて5分程のところにある仮設住宅。

午前と午後に1時間半程ずつ戸別訪問をして、他の時間は集会所でのお手伝い。この仮設住宅の方達は元気で明るい方が多く、前日の仮設住宅とは全然雰囲気が違っていた。やはりコミュニティーによって色があるよう。踊りの先生をしていらした方は、お家の中に招きいれて下さり、こたつに入って一緒に一時間近くお話しました。踊りのお話からご家族の話、そして津波の話。本当に人生の縮図を聞くような濃い一時間でした。

お昼はスタッフと地元の方お一人と一緒に。その方の娘さんが作って下さったという美味しいカボチャのコロッケをみんなで頂きました。

%E5%A4%A9%E7%A5%9E%E4%BB%AE%E8%A8%AD_resize.jpg午後は喫茶スペースでお茶を出したり、手芸のお手伝いをしたり。
そして、午後2:46になるとサイレンが鳴りました。この日は11月11日。月命日でした。それまで賑わっていた集会室も皆で黙祷。一分間が過ぎるとまた皆で賑やかに話し出しましたが、やはり皆涙目でした。中には「今日だったの忘れていたね、お母さん」と云っていらした方もいたし、「このサイレンはいつまで鳴らすのかね」と訊いていた人もいました。色々と複雑な思いが交錯していて、こちらも色々と考えさせられました。

午後4時には集会所の掃除や片付けも終わらせて、ベースキャンプに戻りました。
心のケアチームで最後のミーティング。

その後お世話になった皆さんにご挨拶して、4時半過ぎにベースキャンプを出発。
皆さんがお見送りして下さって、釜石を後にしました。

今回の旅は本当に色々と考えさせられました。メディアでは入って来ない様々な状況や情報を知る事が出来た事だけでも行った意味はあったように思います。
6月に行った時には全体的な一体感みたいなものを感じましたが、今回はとにかく皆さんがそれぞれに個々のペースがあり、個々のニーズがあるのだという事をひしひしと感じました。
物資や食料等は今でも無料で提供される事が多いが、被災者自身からの「もう無料で提供しないで欲しい」という声もあれば、逆にただで提供されるのが当たり前と思われてしまっている状況もあったり、たくさんの企業が仕事を提供出来るように努め、求人するのだが全然人が来ない等々、鎌倉にいれば知る事の出来なかった事を色々と知る事が出来ました。

時の経過と共に3月11日のインパクトは弱くなりがちだけど、今回再び釜石で過ごした時間や思い、新しく出逢った人達によって被災地への思いは風化しないようにしたいと思っています。

再び釜石へ:Ⅲ

釜石3日目。

朝5時に散歩に誘われていたのだが、さすがに前日が睡眠不足だったので、お断りして朝はゆっくりと寝る事にしました。

6:30に起床。
朝食はパンに手作りの林檎ジャム。お昼のおにぎりも作って。

7:45にミーティング、そして8:00から掃除。

この日は仮設住宅での心のケアの活動。
戸別訪問や気をつけるべき点についてのミーティングが8:30から。
仮設住宅での「心のケア」は初めてだったので、私だけその後に個人的な指導もして下さいました。

荷物を一式、バンに積み込み、9:20に出発。

%E5%B9%B3%E7%94%B0%E4%BB%AE%E8%A8%AD_resize.jpgこの日は山間にある仮設住宅。抜けるような青空に山の紅葉が映えて、とても気持ちのいいお天気でした。しかし、寒さも半端なく、喫茶スペースとなる集会所の部屋も床も冷えきっていて相当寒い一日になりそうな予感。。。

集会所は着いてすぐに窓を開け放って、掃除、それからお茶やお菓子の用意、手芸用品やゲーム、おもちゃ等を準備。喫茶スペース「お茶っ子サロン」は10:00〜12:00、13:00〜15:00までだが、10:00前に人が来始めました。お茶っ子サロンを楽しみにしているのが伝わって来ます。

私はSさんと組んで二人で個別訪問。一軒一軒にノックをして皆さんにお声掛けをして皆さんの様子を聞いていきます。

DSCF1786_resize.jpg1時間半程回った後にサロンに戻ると、あんなに寒かった集会所が熱気でムンムン。窓が全部曇っていました。おば樣方が手芸で盛り上がっていて、とっても楽しそう。今回釜石に来て、こんなに楽しそうな顔と声をたくさん見聞きしたのは初めて。とても嬉しくなりました。子供やおじさま方もいらして、本当に賑やかな雰囲気でした。

お昼になると、皆一度家に帰るので、スタッフだけでの静かなお昼。太陽の光がサンサンと入って来て、皆で少しゆったりとした良い時間を過ごせました。

午後になるとまたたくさんの人が集まって来ました。一緒に手芸のお手伝いをしたり、おじさま方にまわり将棋を教えてもらったり、そして、お話をしたり...。和やかながら、やはり皆それぞれに背負わされてしまったものはとてつもなく大きい。

15:00にサロンが終わり、掃除と片付けをしてベースに。
16:00過ぎに「心のケア」チームでのミーティング。気になる事について報告します。

16:45から、ベース全体のミーティング。今日一日の皆様の活動報告を聞いて、そしてグループに別れて分かち合いをしました。

夕食は前日に引続き、うどんと焼売。そして、甘党の私としてはとっても嬉しいあんみつをシスターが作って下さっていました!美味しかったです!

近くの銭湯にお風呂に入りに行って、皆と少しおしゃべりをして、少し遅め(!)の10:30に就寝。

それにしても、この日は初めての仮設住宅での心のケアの活動。集会所での皆さんの賑わいと、集会所にいらっしゃれない方の差の大きさにとてもショックを受けました。ミーティングでも話に上がったのだが、二極化が進んでいて、それをどうするべきかが課題となっています。足が悪いからとか、夫/親の介護があるからとか、そう云う理由で来れない方もいらっしゃれば、やはり人と会いたくない、話したくない、という理由でいらっしゃれない方もいらして、高齢者の多い仮設住宅だっただけに、皆さんの孤立感、孤独感をすごく感じてしまった一日でした。時間が経てば経つ程、人は千差万別で、それぞれのニーズも千差万別なのだと云う事を認識させられました。

再び釜石へ:Ⅱ

                          作業場の大槌小学校
%E4%BD%9C%E6%A5%AD%E5%A0%B4%EF%BC%92_resize.jpg釜石での2日目。

もう少し遅くても良かったようだが、シスターが5:30に「ブレーカーが降りてしまったんだけど、どこにブレーカーがあるのか分からない!」と皆を起こしに来たので、5:30にそのまま起きました。皆はまた寝に戻ってしまったけど...。外は真っ暗だし。前回と違って、朝の時間帯はもう少しのんびりとしている。6:30まで寝ても大丈夫なよう。

前日に皆があまりにも早く寝てしまうので(8:30!!!)一人で食堂に上がって勉強していたのだが、寝床に入ったのは10:00。全然眠れず、時間が早いせいなのか、床で寝袋で寝ているせいなのか、とか色々と考えていたのだが、しばらく経ってから誰かが寝言で「寒い、寒い」と云ったら、他の人が暖房を付けてくれて、暖かくなったら急に眠気が襲って来て寝る事が出来ました。結局寒かったんですね。。。寝言でもない限り、こういう場所ではこういう事は云えないので、内心感謝でした...。

朝食を済ませ、お昼のおにぎりも作って、7:45にミーティング。その日の作業のチェックをして、シスターがお祈りをして皆を送り出して下さいます。

8:00に掃除。これも前回とは違って人数が少ないので、掃除用具も掃除する場所も足りなくなる事はなく、凄いダッシュをする事もなくゆったりとトイレや洗面所の掃除をしました。

%E4%BD%9C%E6%A5%AD%E5%A0%B4%EF%BC%93_resize.jpg9:30に4人で出発。
前回、大槌町の体育館で行なわれていた写真洗浄が場所を移して、大槌町の廃墟となっている小学校で引き続き行なわれているので、そこでの活動でした。実はこちらで作業しているMさんに会うのが今回の一つの大きな目的でした。前回、Mさんと一緒に作業中に私がピアノを弾く話をした時に「この体育館にピアノがあるよ。弾いてくれたら皆喜ぶと思うよ。」と云われたのだが、皆が寝泊まりしている場所で許可なく弾くのも気が引けたし、私も初めての被災地で相当気持ちも不安定だったので、弾くどころではなかった。なので、Mさんとお別れする時に「必ずまた戻って来て、今度はピアノ弾きます」と約束しました。

%E4%BD%9C%E6%A5%AD%E5%A0%B4%EF%BC%91_resize.jpg今回は弾く機会も場所もあるか分からなかったのだが、そういうチャンスがあったら、と思って小品や子供のためのアニメの曲や童謡等を何曲か準備していきました。

久しぶりにお会いしたMさん。相変わらずお元気そうだったが、やはり事態の深刻さを感じさせる言葉が出て来たり、ご自身の心の変化も色々と感じました。
今回は体育館ではなく、津波にやられて、その上火事で焼けた学校の中での作業。窓のガラスもなく、吹きっさらしだったので、ボランティアの一人が、一日掛けて、全ての窓をビニールシートで塞いで下さいました。電気も無い所での作業なので、そこで毎日作業しているMさんは相当大変だろうと思う。。。

お昼はMさんの仮設住宅で。仮設住宅は山間のあちこちに点在していて、Mさんのご自宅は山の奥の奥の方。今まであったコミュニティーみたいなものはつくづくバラバラになってしまったんだろうな〜と実感してしまいました。

この日の作業は10:00〜4:00まで。Mさんは6月の時と変わらず、きちっとこの時間を守って作業していらっしゃいました。作業を一緒にしている間も、人への気遣いや言葉掛けを忘れる事もなく、本当に人間的に素晴らしい人だな〜と思う。

残念ながら、今回もピアノを弾く事は出来なかったが、一応弾くつもりで来た事は伝えられたので、自分としては約束が少し果たせたと思えました。

%E4%BD%9C%E6%A5%AD%E5%A0%B4%EF%BC%94_resize.jpgベースキャンプに帰って来て、ミーティング。夕食は香川からいらしていたボランティアさんの手打ちうどん。その後、いつも行っている銭湯は定休日なので、車で10分程のホテルのお風呂に入りに。神父様を含めて4人で。神父様とお風呂に入りにいくと云う体験はあまり出来ません(笑)。

前日あまり寝れていなかったので、あっという間に10時にころっと寝れました。
朝が早かったので、長く感じた一日でした。
                          作業場の目の前の風景

再び釜石へ:Ⅰ

%E9%87%9C%E7%9F%B3%E7%B4%85%E8%91%89_resize.jpg今ひとつ元気を取り戻せていない自分がもどかしいが、それでも時は流れていて。。。

先週、また被災地の釜石に行ってきました。3泊4日で活動は3日間させて頂きました。

前回とは違って、今回は準備しなくてはいけないものも全部揃っていたし、現地での様子も分かっていたので全く不安や気負いも無く、あっさりと出発出来ました。

電車の乗り継ぎも勝手が分かっていたし、景色も見慣れたもので、懐かしささえ感じました。それでも、最後のローカル線に乗って釜石に段々と近づくと体が緊張して来て胃が痛くなって来ました。やはり被災地に入ると云う事で何とも云えない緊張感があります。

6月に行った時と全く同じ電車を乗り継ぎ、到着時間(17時前)も全く同じだったにも関わらず、今回着いたら、もう真っ暗でした。前回はまだ外も明るく、ベースキャンプに着いてからもお散歩をしたくらいなので、この違いにびっくり。タクシーの運転手さん曰く、山があるから日が沈むと一気に暗くなるのだそう。
駅の前の工場の大きな煙突からは白い煙がもくもくと上がっていて,この街が「生きている」事を象徴しているように感じました。後で聞いたら、24時間態勢で瓦礫を燃やしているのだそう。
%E9%87%9C%E7%9F%B3LAWSON_resize.jpgベースキャンプに近付くと,壊れた建物が多く残っていながらも、前回はなかったコンビニの明かりがこうこうと付いていて、復興は進んでいるんだな〜と思えました。コンビニは何とも云えない安心感を与えてくれるのが不思議。

ベースキャンプの教会に着くと、前回も一緒だったAさんが迎え入れてくれて、急に緊張がほぐれました。ちょうどミーティング中だったが、中に入っていくとやはり6月に一緒だった方が数名いらして、嬉しくなりました。やはり親しみのある顔に出逢えると気持ちがほぐれます。

6月に来た時はボランティアの人数も多く、そして若い方が多かったので、何となく賑やかな感じでしたが、今回は人数も少なく、年齢層も上がっていたので、ベースキャンプ内はとても静かな感じでした。

被災地の状況も、ボランティアの内容もどんどん変わって来ているのを着いた日早々、実感しました。

一から

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長い間黙々と孤独な練習を続けた後に舞台に上がり,舞台の上では孤独のようでいて孤独でないのだが、その後がとにかく大勢の人と一気に接する事になる。
今回は特にハードプログラムだったので、2ヶ月近く閉じこもって自分と向き合わなくてはいけない毎日だったのだが、終わった途端にたくさんの人からのフィードバックもあり、この両極端が凄いな〜と思いながら、急に今度はたくさんの人とのコミュニケーションが始まる。

もちろんポジティブなご感想はとても嬉しく、自分の励みにもなるし、次回への自信や頑張りにつながっていくのだが、逆にネガティブなご感想は自分の進歩や視野を広げるためにとても大切なものと思っています。コンサートが終わってすぐにマイナスの言葉を飲み込むのはなかなか難しいのだが、やはり演奏家としてはそれは受け入れなくてはいけない事だと思っている。それをどう解釈するかは別にして、聴いて頂いた一人一人のご感想は本当に貴重なものと思って一つ一つ心に留めるようにしています。

今回のコンサートは日本で初めてリサイタルをしてから10年目に当たるが、とてもラッキーな事に、この10年間、ずっと応援して下さっている方々がいらっしゃいます。本当に感謝な事です。
その中に、私がとても尊敬している方がいらして、今回のコンサートをとても喜んで下さっていました。その方は音楽家でもなく、音楽を専門的に詳しい訳ではないが、人や物事の本質を見抜く事が出来て、人間的に素晴らしいのです。初めてのリサイタルの時も喜んで下さったのだが、その数年後に都内で大きなリサイタルをした時に「いいんだけど、商業的になっちゃったね」と首を傾げながら仰っていました。この時のリサイタルは自分ではその時の自分に出来る限りの演奏は出来たと思うし、自分では満足しているので,何も後悔はないのだが、「商業的」と云われて,「ああ,なるほど」と思い当たる事もありました。
大きなリサイタルをするに当たり,自分の音楽に対する思いよりも、形を作り上げる事に一生懸命になってしまったような気がしないでもない。
そして、その後のコンサートではいつもこの言葉を胸に抱きながら練習に向かっていました。

しかし,今回のコンサートではこの方がとても喜んで下さり「みほさんのあるべき姿がありました。プロの演奏になりましたね」と仰って下さり、私もとても嬉しくなりました。「商業的」と「プロ」の違いさえも分かっていなかった自分が愚かしい。

曖昧にしか理解していなかった「商業的」という言葉でしたが、実はつい先日、知り合いの方がコンサートで弾いていらしたのを聴いてハッとしました。
彼女はまだ若く,これからという面もあったが、とにかく彼女にしかない、彼女の個性がにじみ出ているような演奏でした。全くコマーシャリズムに汚されていない演奏がとても新鮮でした。

私自身、まだまだこれからなのだが、やっと今最初の一歩を踏み出したが気がします。
音楽の道は本当に果てしない.................................................................。

充電期間

10月のリサイタルが終わってから3週間強。今回のコンサートは心魂注ぎ過ぎてしまってなかなか疲れが取れずにいたが、昨日の夜、急に脳が再び正常に働き出してくれたような実感がありました(笑)。

この数週間はクリエイティブなものは何も出て来ず、とにかく受け身状態。何かを発信したい、という気持ちが全然なかったので、ブログも書こうという気持ちになれず...。ずっとこの状態が続いたらどうしよう、とも考えたりもしたが、休養期間と思って、この間に家の大片付けやペンキ塗り、庭掃除をしたり、美術館に行ったり、コンサートや映画に行ったり。ここ数カ月間練習の毎日で何も出来なかった分を取り返していました。

しかし、疲れ切っている時は発信も出来ないのだが、受信もなかなか出来ないでいるような気がしないでもない。美術館に行ってもなかなか感動出来ないでいる自分がいて、少々がっかり。徐々に元気になって来て、徐々に感動も出来るようになって来た気がします。

昨日、脳も覚醒している感覚が戻って来て,今日の練習がやはり全然違う。
リサイタルが終わってからも練習は少しはしていたが、何だかスカスカの音楽で自分で弾いていてもちょっと情けなくなってしまっていました。
何かを表現したいという気持ちがなければ、ピアノを弾くという行為は意味をなさないんだな〜と実感しました。「何かを表現したい」というのもやはり元気でなければなかなか出て来ない気持ちなので、今はとにかく体と心の充電期間と思っています。