原点
アメリカでの休暇から帰って来ました。ニューヨークを拠点にボストンとヴァージニアまで足を延ばして、小学校の時の恩師や旧友に会いに行きました。自分の原点を顧みるような、本当に楽しい有意義な旅となりました。
心も身体もリフレッシュして、音楽にまた新たに向き合えそう!
アメリカでの休暇から帰って来ました。ニューヨークを拠点にボストンとヴァージニアまで足を延ばして、小学校の時の恩師や旧友に会いに行きました。自分の原点を顧みるような、本当に楽しい有意義な旅となりました。
心も身体もリフレッシュして、音楽にまた新たに向き合えそう!
初めての韓国。こんなにも字も言葉も何も分からないところに行くのは初めてかも。光州というソウルから飛行機で一時間程の都市だったせいもあるが、英語もほとんど全くと云っていい程通じなかった。最初は相当戸惑っていたが、いかに思いを通じさせるか、云いたい事を伝えるか、欲しいものを手にいれるか、行きたい場所に辿り着けるかのチャレンジが快感になっていきました(笑)。食事も美味しいし安いし、人もとっても親切でフレンドリーで、街中やバスの中、飛行場でも地図やガイドブックを見て立ち止まっていると何人もの人が助けに集まってきます(笑)。観光が出来なかったのは残念だったが、韓国に対してのとても良いイメージを持って帰って来ました。
想像力を試される様々なサイン...。
夏休み旅行の事、まだまだ書きたい事がいっぱいあるのだが、もう9月なので、今日が最後(笑)。
今年はニューヨークにいる間にお誕生日を迎えました。あちこちに住んでいる友人達からお祝いメールが届いて、本当に嬉しかった。
ニューヨークではずっと従妹達のところに滞在していたのだが、お誕生日の夜は予約が何ヶ月か待ちのBlue Hillという素敵なレストランに招待してくれました。ニューヨークに行く前に既に予約を取っていてくれたそう。本当に感謝。食事も雰囲気も全てが素敵だったけど、やはり何と云ってもお祝いしてくれるその気持ちが嬉しい。従妹とは全然タイプが違うし、感じ方や考え方とかも随分違うのだが、それがまた面白くて視野が広がったり、物事を違う角度から見れたりして本当につくづく楽しい。
この世界に生まれて、色々な人と出逢うけれども、それがずっと繋がったり、一回きりだったり。以前は頂いたご縁は何が何でも大切にしなきゃいけない、と思ってしがみついていたように思うけど、最近は一回きりの出逢いもあるし、続かないご縁もあるんだろうな、と思えるようになりました。その中で、ずっとお付き合いが続いたり、本当に深い絆や友情になったりするのは逆に凄く稀な事なのかな、とも思うようになりました。そういうご縁こそを大切に大切にしなきゃいけないな〜としみじみ思うこの頃です...。
今回のニューヨーク滞在中はあまり多くの友人達に会う事は出来なかったが、ひさ〜しぶりに会えた友人が一人。私がまだ十代の頃にあるプロジェクトで日本に来て、うちに滞在したカメラマンさん。いつもタイミングがなかなか合わなくて、この30年間でその後に会えたのは今回を含めて2回。実に15年に一回くらいの割合でしか会えていない(笑)。それでも、何かとても深い所でつながっている気がします。
今回も13年振り。もともと銀行だったところが自宅兼ギャラリーで、とてつもない建物に住んでいる。セミナーもそこでやっているという事で、色々と説明しながら案内してくれました。
写真の道に進む人に「この道は本当に孤独な道で道しるべも何もないから自分で道を探すしかない。でも、良い作品が出来た時に本当に幸せがある。」と云うそう。音楽も同じだな〜と思う。
そして、女優さんを撮っていた時にその女優さんが俳優として一番大切な事は何だったって云ったと思う?と訊かれて内心すぐに「愛」と思っちゃったのだが、答えは「好奇心」だったそう。「写真も同じだよ」と云っていた。音楽はどうかな〜...。好奇心も大切だけど、私にとっては一番大切な事ではないような気がする。
巨大な家(アンディー・ウオーホールのファクトリーより大きい気が...!)を案内してくれた後に、外に食事に出掛けたのだが、やはりカメラを持っていて、何かを見付けると興奮して写真を撮っていた。本当に少年のように駆け寄って、急に生き生きしだすから驚いた。80歳を超えても、自分が一生仕事にして来た事にワクワク出来るって云うのは本当に素晴らしい。
戸締まりも大変!→
メトロポリアン・ミュージアムに通って、凄く目についたのが子供の多さ。夏休み、という事もあったと思うが、とても小さな子供が多かったのに驚いた。子供が自由に展示物の中を泳いでいて、目に止まるものがあると、親がそこに歩み寄って色々と懇切丁寧に説明したり、気付いた事に目を向けるようにしたり。子供達も無理矢理見せられている感が無く、自分の興味のあるものの前に行くと、本当に興味津々で見入っていました。
今回会ったアメリカ人の友人にその話をしたら、やはり子供が小さいうちからしょっ中、メトロポリアン・ミュージアムには連れて行っていたよう。とにかく時間を短く、見たいものを探させて、そして、最後にエジプト展示場の池にお願いごとをするためにコインを投げ入れると云うような、楽しみを作ってあげる事が大事と云っていた。今では大人になったその子供はやはりメトロポリアン・ミュージアムが大好きでよく行くそう。
ミュージアムに行った帰りに立ち寄った近くの素敵なブティックの店員さんも、私が持っていたミュージアム・ショップの紙袋を見ると「メットに行って来たの?」と訊かれ、「僕もお昼休みによく行くんだ。あそこは美しいものがたくさんあって、本当に楽しいよね!」と云っていた。
本当に超一流の世界的名品が共有されて、生活の一部になっているニューヨークは凄いと思う。
今回の旅行は移動が結構多かったので、ニューヨークにいる間はとにかく、のんびり。いつもは精力的に人に会うのだが、先生に会いに行くボストン旅行が現地に着くまで予定が曖昧だったので、ほとんど他の友人に連絡する事無くニューヨークに行ってしまいました。でも、こういう旅行もたまにはいい...。
なので、ニューヨークにいる間は今回はほとんど毎日メトロポリタン・ミュージアム通い。最初に行った時に、どうしても見たいと思っていたものがあって、それを探すために、アフリカ・オセアニア・南北アメリカの古代〜現在に至るまでの文明展示をつぶさに一つずつ本当に丁寧に見ていったのだが、ここでこのミュージアムの楽しさに開眼してしまいました。
巨大なミュージアムなので、いつもは自分の見たい物だけ、拾い上げて見て回っていたのだが、それでは、やはり全然表面的な捉え方や感じ方しかしていなかった事に気付きました。
その最初の一日目にあまりに面白くて「毎日行こう!」と決め、次の日はバロックからルネッサンス期の「イタリア絵画」、その次の日は「Charles James」という伝説的デザイナーの特別展、「Gary Winogrand」の写真展、そして、最後はラファエル前派とまたその横にあった中世の「イタリア絵画と美術」とテーマを絞って見に行きました。一つのテーマを見るだけで、軽く2時間とか掛かるので、満足感いっぱいで毎日帰って来ました。これが出来るのも、入場料が寄附制だから。(毎日$5払って、最終的に希望寄付額の$25を越えるようにしていました。)それにしても、ニューヨーカーがつくづく羨ましいと思いました。こんなに凄い展示がいつでもアクセス出来るんなんて、本当に恵まれているな〜と思います。
追記:そういえば、きっかけとなった、最初にどうしても見たいと思っていた焼き物がなく、調べていたら、現在展示していない事が分りました(笑)。
ボストンまでの電車はアメリカ全土を走っているAmtrack(アムトラック)という電車で、よく利用するのだが、前にも書いたように、とても快適。シートもフカフカだし、座席と座席との間隔が広いのでとてもゆったりとしています。Quiet Car (静かな車両)というのが必ず設けてあって、普通車なのだが、この車両は本当に静かにしないといけないので、話す時もヒソヒソ声だし、携帯電話ももちろん禁止。電気も少し暗くしてある(笑)のでとても落ち着きます。(実はアメリカもイギリスも基本的に携帯電話使用が禁止の場所がない。禁止ではないのだが、やはりマナーをわきまえていて、たま〜にはいるけど、電車、バス、カフェなどで、延々と電話で話している人はほとんどいない。レストランでテーブルで電話を取るなんて論外。中国に行った時に円卓でアジア人の人達が次から次へと電話に出るので、ヨーロッパ人が呆れ、アメリカ人が憤慨していたのがとても印象に残っている。電話に出るために席を立つのも基本的にはマナー違反。)
ボストンに着くと、すぐに地下鉄に乗ったのだが、何ともレトロな感じで、着いて早々感激!ディズニーランドの乗り物のようでとてもかわいい。駅のホームも線路も地面と同じ高さなので、とても気軽な感じ。
そして、今回は先生に会いに行くのにバスにも乗ったのだが、ビックリだったのが自転車をバスの前に乗せていた事!大学の街なので確かに自転車が多いのだが、その意外な発想に目が点。新しい街に行くと些細な事が色々と楽しい!
ボストンでの滞在をとにかくフル活用。
最後はホエール(クジラ)・ウオッチングでした!ボストンに行くのが決まるまで、そんな事が出来るのさえも知らなかったのだが、インターネットで電車の切符を買う際に宣伝で、このクジラ・ウオッチングのツアーが載っていて、まんまと引っ掛かってしまいました。
一生に一度はしたい事の一つだったので、これもまたウキウキ。
超高速スピードの大型ボートで都会のボストンから3時間のツアーでクジラが観れるなんて、超お得!と思っていたのだが..。
相当、想像力のいるツアーでした(笑)。ニューヨークに帰ってから、生徒さんのお母様とお食事をした時にその時のクジラの写真をお見せしたら、吹き出していました(笑)。その方はご家族でハワイでこういうツアーに参加した時は、クジラはダイナミックに動いてくれるし、イルカはボートの横でピョンピョン跳ねているしで、それはそれはまるでショーをしてくれているようだったと感激していらしたそう...。
確かに2匹のザトウ・クジラには出逢えたのだが、テレビで観るようなドラマチックな感じではなく、背中がとき〜どき見える程度。30分くらい、クジラのそばを旋回していたが、結構飽きちゃって全然観ていない人もいた程。なかなか難しいです...。
クジラのスケールの大きさを実感出来るツアーにいつか参加出来たらいいな〜と夢はまだ続く事になりました。
港からすぐに駅に向かってニューヨークに帰ったので、ボストンには結局30時間くらいしかいなかったけど、とてつもなく充実した小旅行でした。
今回の旅は恩師に会うのが最大の目的だったのだが、いつも訪ねに行っていた場所からボストン郊外の老人ホームに移ったので、果たして本当にそこに辿り着けるのかどうか、結構心配でした。車社会のアメリカは交通機関がなかなか無かったりするので、行く前に国際免許を取りに行ったりして、万端の準備はしていったが。でも、旅行中に疲れているのに慣れない所を長距離運転するのはどうなの?と色々な人に反対され、何とか公共のバスや地下鉄で行けないものかと調べたら、ちゃんと行けました(笑)。良かった。
ニューヨークからボストンまでは電車で4時間半程。電車は席も気持ち良くてゆったりしているし、ボストンまでの景色もとてもきれいだったので、とっても快適な旅でした。
初めてのボストンでしたが、電車降りた瞬間に直感的にすぐに好きになりました。行く前に色々と良くない話を聞いていたので結構身構えていたのだが、私にはとにかく素敵な街として目に映りました。地下鉄も街も何となくレトロな感じだし、近代的な所は洗練されているし。日本に帰って来てから友人にその話をしたら、「裕福な街だからね」というコメントに納得。緑も多いし、とても活気がある感じがしました。
荷物を泊まる所に置いて、すぐに出発。地下鉄に30分乗って、それからまたバスで30分程。恩師の所に辿り着きました。今年で93歳になる先生だが、頭は私より冴えていて、20年以上前に会った私の友達の名前や去年会いに行った日にちまで覚えていて、ビックリする事が度々。会いに行った事をとても喜んで下さって、辿り着くまで本当に色々と不安だったけど、行けて良かったとしみじみ思ってしまった。一緒にお散歩して、夕食を一緒に頂いて帰って来ました。
今でもおきれいで、溌剌としていらして、とても明るくて、そして何事も感謝の気持ちで受け止めている事が本当に素晴らしい。この先生と出逢えた事、そして今でもお付き合い出来ている事に本当に感謝です。
ニューヨークから帰って来て一週間。まだ時差が凄い...。でも、生徒さんのレッスンもまばらなので少しゆったりモード。練習はバリバリしているけど(笑)。
今回の旅行の一番の目的が小学校の恩師に会いに行くため。無事に元気な姿が見れて、本当に良かった。そして、もう一つの目的が来年の春のコンサートの話し合いをするため。残念ながら、こちらは実現出来なくなってしまいました。国立公園も影響を受けた国の財政難が、いつもコンサート会場にしていた場所にも及んで、来年の秋まで閉鎖しているそう。色々と他の場所の候補も話し合ったり、見に行ったりしたが、かなり難しい。とっても残念。でも、とりあえず旅行中にしようと思っていた事は出来たので、とてもいい旅となりました。
考えてみたら、昨年の夏以来の休暇だったので本当に体も心も気分転換を欲していました。すっかりリフレッシュして、今またとっても張り切っています!
今回のコンサートは実はブリッジ・カルテットが主催した夏期講習の中での催しものでした。アマチュアの音楽家達がそれぞれに四重奏(カルテット)のグループに振り分けられ、講習をブリッジ・カルテットのメンバーから受ける形です。講習を受ける人数が20名、その上に家族や友人達も来ているので相当の人数が集まっています。なので、基本的にコンサートのお客様は講習を受けに来た方達でした。
私も色々な人に「来たいんだけど」と云われたのだが、残念な事に今回は随分とお断りしてしまう事になってしまいました。
それでも、二人だけ(笑)、招く事が許されたので従妹と従妹のボーイフレンドがニューヨークから来てくれました。
コンサートはシャトーの居間に椅子を並べて、40人程の小さなサロン的コンサートでした。とにかく雰囲気が温かく、何ともゆったりとした空気が流れていました。
最初はベートーベンの弦楽四重奏。自分は集中するため外で音を聴かないようにしていました。そして、ソロのリスト曲3曲。ピアノも部屋の雰囲気も音楽にあまりにぴったりで、自分はどこにいていつの時代にいるかを忘れてしまうような感じです。それでもやはりソロ曲は責任もあるので、浸っている訳にはいかず、出来るだけ集中力が飛ばないように気は張りつめていました。
しかし、ソロも弾き終わると気持ちも解放されて、後半のエルガーは本当に楽しみで仕方がなかった。そして、実際にとても楽しめました。リハーサルが少なかったので、相当気は引き締めていたが、それでも既にカルテットとの信頼関係が出来ていたのでとても自由にお互いに弾けたように思う。
実は終わった後にチェリストの人から凄く嬉しい褒め言葉を頂きました。「みほと演奏出来て本当に良かった。みほのピアノは凄く"しなやか"だね」という言葉でした。「しなやか」という言葉は室内楽においては本当に嬉しい言葉です。日本では全く重宝がられない特徴なのだが、自分では音楽的に目指しているものの一つなので、そこを認めて喜んでもらえたのは本当に嬉しかった。
お客様もみんな喜んでくれたようで、次の日から夏期講習の生徒さん達からコーチングをして欲しいと云うリクエストがたくさんありました。何だか急に引っ張りだこになってやけに忙しくなってしまったけど、その後の数日間、コンサートの余韻を楽しみながらのとても充実したモルゴン滞在となりました。こんな素敵な所で素晴らしい曲を素晴らしいブリッジ・カルテットと弾く機会を頂けて本当に大感謝でした。
ちょっと脱線するが、今回の旅で色々とびっくりした事がたくさんあるが、その中の一つが実はコンサートに大いに役立ちました(笑)。
コンサートの前日に、カルテットはモルゴンから一時間程離れた所でコンサートがあり、車に乗り切れないので、私とチェリストの旦那様が残る事になり、一緒に二人で夕食をする事になっていた。しかし、シャトーのオーナー家族も誘った所、一緒に行きたいというので結局5人で食事に行く事に。フランスでの初めての外食は少し塩が利いていたが、地元のワインと一緒だとそれも美味しい。大きな鍋ごと出て来るパテやチーズボードごと出て来るチーズに感動しながら、とっても和やかなディナーを楽しめました。実はこの時が唯一の少人数での食事だったのでとても貴重な時間でした。
シャトーに帰って来てから、どうしてそう云う流れになったのか思い出せないが、オーナーの息子さんがピアノを弾いてくれる事になりました。これが、超びっくり!!!弾いてくれた曲がワーグナーのトリスタンとイゾルデの有名な曲をリストが編曲したもので、和音が超複雑なのに、何だか異常に上手くて本当に感激/感動してしまいました。その後も色々と弾いてくれたが、全然音楽を専門的にやっていない人がこんなにも上手に、しかも自己表現出来る事に相当ショックを受けました。やはりヨーロッパは文化の歴史の深さが全然違う。
そんな訳で、コンサートでのエルガーの五重奏曲の時の譜めくりをどうしようか、と最後まで一人で悩んでいたのだが、これはいい人を見付けちゃったと思い、すぐにお願いしました。快く引き受けてくれたので、翌日のコンサートはもう準備万端!
コンサート準備に追われてなかなかブログが書けないでいたが、少し一段落したので夏の旅の事を少し書いていこうと思っています。
今年の夏はイギリスとフランスへ。イギリスはロンドンをベースにして友人達にあったり、コンサートや演劇を観に行ったり。大好きな国で大好きな人達にいっぱい会って来て、本当に心満たされる時間を過ごして来ました。
しかし、今回の旅の一番の目的はフランスでのコンサートでした。フランスに行くのは実に14年ぶり!今まではイタリアが好きでイタリアばかりに目が行っていたが、今回は本当にフランスの良さを発見する旅となりました。
コンサートはボジョレー地域のワイン・カントリーのシャトーで。本当に全てが美しい。ぶどう畑も空も、周りの自然も建物も本当にうっとりしてしまいます。こんなに周りが美しいと何だか、コンサート前の緊張も和らいでしまったような感じでした。今回のコンサートは弦楽四重奏とのコンサート。前半がベートーベンの弦楽四重奏曲、そしてピアノ・ソロ。後半がエルガーのピアノ五重奏曲。さすがにピアノのソロ曲はプレッシャーも責任もあるので相当気が張っていたが、後半の五重奏曲は楽しみの方が大きくて本当に楽しめました。
このエルガーのピアノ五重奏曲。日本ではなかなか演奏されないがイギリスでは結構有名でファンが多い。今回この曲を演奏する事になったのも、シャトーのオーナー(イギリス人)の一番好きな曲だそうでリクエストがあったらしい。私も今回弾く事になったので初めて聴いたのだが、最初に聴いた時に一聴き惚れでした。結構弾きにくかったりして練習も大変だったが、それでもロンドンに行くまでの2ヶ月、この曲をカルテットと一緒に弾けるのかと思うだけでワクワクしていた。ピアノ五重奏というのも初めてだったので、それも楽しみの原因の一つだったように思うが、とにかく準備期間をこんなにも楽しく過ごせたのは珍しい。
日本から最初にロンドンに飛んで、そこでカルテットとリハーサルをする予定になっていたが、ロンドンにいる間に今回一緒に弾くカルテットのコンサートがあり、聴きに行きました。20年も一緒に弾いているカルテットなのでその音の混ざり具合にまず大感激。4人が合わせて弾いているというよりも、一つの音楽を4人で作っている、という正にカルテットの理想的姿を見せてくれていました。一体感が凄い。「こんなに素晴らしいカルテットと一緒に弾くのか〜...」と最初はちょっと怖じ気づいてしまったが、そのうちに気持ちも切り替わって、またと〜っても楽しみになって来ました。
続く。。。
ニューヨークに経つ2週間程前にコンサートの全プログラムを友人のMちゃんに聴いてもらいました。ちょうど地震の前日でした。モーツアルトのキラキラ星変奏曲、シューベルトの即興曲、ベートーベンの熱情ソナタ、後半がオール・リストで「忘れられたワルツ」「葬送」「コンソレーション」そして「メフィスト・ワルツ」でした。時間的には前半後半共に40分以上のフルリサイタル・プログラムでした。Mちゃんのアドバイスがまた的確で気付かなかった事を色々と気付かされたり、一つの事にこだわり過ぎてしまっていたために違う方向に行ってしまっていた音楽を引き戻すきっかけになったり、作曲家や曲自体の個性をそれぞれに話し合う事で自分のやりたい事を再認識すると共に自分の足りない所をどのようにしたら改善出来るかを色々と発見出来ました。コンサートまでは2週間あるので、改善出来る時間は十分。最後のラスト・スパートは大変ながら、充実もする時期です。
張り切って最後の追い込みを、と思っている時に地震。
予定通りにはいかなかったけれでも、自分に出来る事は最後まであきらめずにコンサートまでやったつもりです。
予定通りにいかなかったのはしかし練習だけではありませんでした。
プログラムの中のリスト作曲の「葬送」。コンサートには乗せた事はなかったが今まで何回か先生と共に勉強した好きな曲で、今回楽しみな曲の一つでした。(実はMちゃんが一番褒めてくれた曲でもありました...。)
しかし、ニューヨークに発つ前の金曜日(コンサートの8日前)から急にこの曲が弾けなくなりました。左手の単音の低音で大きな音で始まるのだが、どうしても身体に拒否反応が出てしまい、どうしても身体がその最初の音を出したがらないのです。
地震のニュースで「死」というものがあまりにも近くにたくさんあり過ぎた事、そして相反するのだが、曲の内容が自分の体感している「死」とあまりにかけ離れていてとても欺瞞的に感じてしまっていたのだと思います。後から調べたら、この「葬送」は革命で亡くなった友人達を悼んで書いたらしいので、あの時期の私には何か英雄的すぎる感じがしたのかもしれない。
そしてもう一つ引っ掛かってしまったのが、地震から一週間が過ぎた時に黙祷を捧げるニュースの中で、行方不明になっているがまだ生きているかもしれないから黙祷をしない人もいる、というのを聞いて、この「葬送」を弾くのは不謹慎とも思ってしまいました。
なので、この「葬送」を弾くかどうかはニューヨークに着いてから決めようと思っていました。飛行機の中で元気の出る映画をいくつか見て、ニューヨークに着けば着くで、何不自由ない普通の生活が送れるので、大丈夫かも、とも思ったが、やはりピアノの前に行くと、身体がどうしても弾かせてくれません(泣)。
コンサートの主催者側は私の気持ちを尊重して下さり、おまけに「プログラムが全体的にに長過ぎると思っていたので、ちょうど良かった」とも云って下さったので、ので、最終的には「葬送」は今回弾かない事にしました。
自分の中でのもう一つの変更が最後のアンコールでした。リサイタルの時はいつも自分で話す事は全くしないのだが、やはり今回はどうしても日本から来た身として話をしたかった。プログラムを全部弾き終わってから、少し話させて頂きましたが、やはり地震の話をするだけで何ともいえない感情が沸き上がってしまうので、音楽を弾く状態ではなくなってしまいました。なので、今回はアンコールはなしでした。
私はいつも自分の結婚式で弾いている友人がとても不思議でした。嬉しい席だが、それにしても感情的になっている場でよく弾けるな〜といつも感心していました。
そして、究極と思っているのが、ダイアナ妃のお葬式。あの時にダイアナ妃のとても親しい友人だったというエルトン・ジョンが「Candle in the Wind」というのをその場で歌っていたが、あれがどうにも信じられない。プロ意識の違いなのかもしれないが、自分の友人が亡くなったら私はきっと何も出来なくなってしまうと思う。今回の地震で身近な人が亡くなった訳ではないが、ニューヨークのコンサートに色々と影響が出たのは確か。嘘偽りないコンサートになったとは思うので、悔いはないが...。
やっと少し心の余裕が出て来たので、ニューヨークの話を少し。
3月の大地震の後にニューヨークでリサイタルがありました。
こんな時に日本を出るべきなのか、コンサートをするべきなのか、と色々と迷いがありましたが、色々と考えた末に結局予定通りニューヨークに行く事にしました。
震災直後は余震も多く、計画停電があったり、テレビでは連日の津波映像や家族再会の感動映像、原発の全く予測の付かない状況に精神的にとても不安定でした。練習も停電の時は寒い中、暗い中ロウソクの光の中何とか続けていましたが、しかし何よりも、テレビで見た行方不明の親族を捜している人達の映像が練習中も心に浮かんでは泣けて来てしまうのでなかなか集中出来ません。こんな時にピアノを弾いている場合なのか、と疑問に思ったり...。しかし、震災後すぐには自分が何か直接的に役に立つ訳でもなく...。そんな中、何とか成田(この時期は空港まで行くのでさえも様々な壁が...)まで行き、そして飛行機に乗りました。
コンサートは準備に色々な人が関わっているので、やはり携わっている方々に迷惑をかけてはいけないというプレッシャーがあります。ニューヨークまで辿り着けるのだろうか、という不安さえもあったので、飛行機に乗って初めて、少し肩の力を抜く事が出来ました。
そして、飛行機の中で素晴らしい映画を観ました。
「バーレスク」というミュージカルで、クリスティーナ・アギレラが主役。アギレラは遅ればせながら名前は知っていたが歌をちゃんと聴いた事がなかった。なので、この映画を観て超びっくり。こんなに凄い人だったんですね!!!かっこいい!そして、全身全霊で歌っているその姿に本当に感動しました。この映画一本でとてつもない元気と勇気をもらえました。今までの不安や心の迷いも消えて、ニューヨークでは自分の出来る限りの演奏をしょうとつくづく思えました。
映画、音楽、歌、芸術は本当に意味があって、凄い力があるのだと実感出来て、救われた思いでした。
文化の豊かさといえば、オックスフォードの友人に会いに行ったついでちょっと街を観光したのだが、大学内の教会のほとんどに必ずと云っていい程に大きなグランド・ピアノが置いてあった。ピアノがあるだけでその建物に対して何とも云えない親近感を急に覚えてしまうのだが、本当にどこにでも音楽が満ちあふれている感じがして嬉しくなってしまいます。
コンサートもあちこちで行われており、今回特に目を引いたのはある大学の教会で行われていたバロックとそれ以前に書かれていた音楽をテーマ別に取り上げたコンサート・シリーズ。『エリザベスⅠ世の愛』『3人のジョージ』など歴史的にも面白そうなテーマ。ロウソクの明かりのもと行われるこれらのコンサート。全部が全部聴いてみたいものばかりで行けないがとっても残念。
心惹かれる空間やイベントがこんなにあって羨ましい限り。
←「リハーサル中」という立派な立て札(笑)
リッチモンド劇場
ヨーロッパに行くと文化の深さにつくづく感激する。本当に生活の一部として根付いているのが羨ましい。
今回は演劇を2つ観て来ました。一つは「Ghost Stories(ゴースト・ストーリーズ)」幽霊話という事になるが、ロンドンに行く前から評判がすこぶる良いのを知っていたのと、他に興味をそそるものがなかったのでこれに決めてしまいました。
が、劇場に一歩入ってすぐに後悔。幽霊屋敷も怪談話も超苦手なのにどうしてまたこんな所に来ちゃったんだろう、と席に付いてからまた気付いてしまった(涙)。前に座っていた人がやけに体の大きい人で本来だったら苦笑いしている所だが、隠れられる安心感があって感謝してしまったくらい(笑)。評判が良かったというのも「大人でもとっても怖い」という事だったので、自分の愚かさにつくづく呆れてしまった。
何度も前の大きい人を盾にして隙間から見たりしていたのだが、一番怖い所はもう手で覆って観ないようにしてまった。自分で何しに来たんだかよく分からない。。。とにかく怖かった。。。
もう一つの劇はロンドン郊外のリッチモンドの劇場でやっていた、シェークスピアの一生を語る一人芝居。俳優が「フォー・ウエディング」で死んでしまうゲイのカップルの男の人、Simon Callow (サイモン・キャロー)。演技は素晴らしく、声がとってもいいので見ていても心地いいのだが、劇自体があまり良くなくてちょっとがっかり。
隣に座っていたアメリカ人と「何が云いたいんだろうね〜」と意気投合してしまった(笑)。
それにしても驚いたのが、ロンドンから1時間程のこの劇場。100年以上の歴史があってとっても立派。ロンドンの劇場に全くひけを取らない。おまけに平日なのに、800人強の劇場が超満杯でぎりぎりで私もチケットが取れたようなもの。天気も良く、始まる前や休憩時間は外に出てゆったりと過ごしているイギリス人達を見ていると、つくづく豊かな生活だな〜と思わざるおえません。
今回は演劇内容は二つとも(Ghost Storiesはインパクトはあったものの)心に残るものではなかったのが残念だったが、やはり観客や劇場の雰囲気を味わえて来れただけでも心が豊かになった気分です。
今回のイギリスの旅は2週間程。
ロンドンでは色々と刺激を受けて、郊外の田舎に行けば癒されて...。移動も多かったので、何となく落ち着かない感じもあったが、少しの時間でも普段会えない友達と会えて、心にまたたくさんの財産を蓄えて来る事ができました。特に子供に会うとそう感じます。成長している過程を年に一度でも見れると離れていても、何となく共に時間を”進んでいる”感じがします。スカイプで顔を見て話せるのも本当に凄い事だと思うけど、やはり同じ空間にいる喜びは何事にも代え難い。
あまりというか、ほとんど観光というものが出来なかった今回の中国の旅だったが、色々と目にした面白い光景を写真に録ってみました。かなり「!」と「?」を経験出来ました(笑)。
(左)かなりの大通りで車がびゅんびゅん走っている所で車の修理を。。。
(中)靴だけが。。。当たりには人っこ一人いない。。。
(右)歩道の真ん中で本を読む人。本を覗き込んだら漢字ばかり。当たり前だけど(笑)。
とっても中途半端な旅行記になってしまったけど、ここで明日からロンドンに行ってしまいます。なので、中国旅行記はここまで。。。
中国はクラシックの香りは日本以上にしないが、情熱や人の持ち得るエネルギーや自己表現(自己主張?)と云う意味では本当に共感出来る事がいっぱいあってとても居心地が良かったです。思わぬきっかけで今回中国に行けて、本当に良い経験が出来た事に大感謝でした。
今回は青島大学内のホールを使ってのイベント。
多目的ホールだったが、空調もあり、照明も整っているし、椅子もとっても快適。イタリアの夏のコンクールで空調のないホールで何度か弾いた事があるが、汗だくだくになりながら弾いた事を覚えているし、友人も、ヨーロッパのどこかの小さなホールで弾いた時に額の汗が目に入って、コンタクトをしていたので、しみてしみて目が開けられなくて大変だった話も聞いた事がある。それに比べると、中国は随分と進んで来てしまっているんだな〜と感心してしまった。
面白いのが椅子の並べ方。少しずつ後ろにいくに従って傾斜はあるのだが、その傾斜がとっても小さい。考えてみたら、中国の人民大会等の映像を見ても、顔の上半分だけが見える程度に段差がついている。ホールに入ると、それと全く同じ雰囲気を醸し出していました(笑)。
青島にいる間に様々な美味しいものを頂いたが、中でも一番のヒットが「刀鮮」と云う貝。青島の名産らしいが、貝なのに鶏肉のように肉厚で海老のようにプリプリとした食感。貝自体は桜貝のようにとっても薄いので、どうやってあの貝の中にあんなに大きな身が入っているんだろう?と不思議でした(笑)。味付けもニンニクが利いていて何とも美味しい!
もともと貝にあまり興味がないので、最初は味見に1個だけお皿に取ったのだが、あまりの美味しさにその後何度もおかわりしてしまった。数日後にまたこの刀鮮のお料理が出て来た時には、周りの人に「ほら、Mihoの好きな貝が出て来てたよ。いっぱい取りな!」とまで云われてしまった(笑)。あの貝が次に食べれるのはいつだろう...?
青島滞在中に一回だけホテルの外のレストランに招待されました。
店構えは派手派手で、日本や西洋での高級になれば高級になるほどシックな感じになるのとは真逆の雰囲気だが、出て来る料理はこれでもかという位に豪華版。
フカヒレのスープも一年分のコラーゲンをこの一皿で取れたんではないかと思う位のドンブリで来ました(笑)。色がどぎつくて味が心配だったが、食べてみると何ともお上品な味でペロリとみんな平らげていた。オーストラリア産の伊勢エビやサーモンのお刺身、そして神戸牛のステーキなど、単品でも滅多に食べられないものをこの一食でいくつも堪能してしまいました。
何とも贅沢な思いをさせて頂きました。
特大フカヒレスープ、(笑)
今回はホテルから殆ど出る事がなかったために滞在中は三食、地下の食堂で。もちろん中華しか出て来ない。しかし、飽きる事ももたれる事もなく、出て来るもの出て来るもの全てが美味しかった。
日本で食べる中華は何なんだろう?と思わせるくらいに全てが新しい発見で毎回の食事がとにかく新鮮。食事の最後に必ず出て来る水餃子以外は見た事も食べた事もないものばかり。野菜も調理が上手いせいか歯ごたえや味が生き生きしている(笑)。中国三千年の歴史に恐れ入りました。
おまけに円卓で好きなものを好きな量だけ取れるので食べ過ぎるという事が決してないだけでなく、五日間いる間にデザートなるものは一度も出なかった。凄い甘党だがあまりに食事が美味しいので、二日目からは甘いものも欲しいとも思わなくなった。日中は仕事でおやつも食べる暇も買える場所もなかったので、それはそれは健康的な食生活をしていたように思う。体も喜んでいて、終止体がとっても調子良かった。
日本に帰って来てからもどうにかこの食生活を取り入れようとしたのだが、日本は誘惑が多すぎる(笑)。帰って来た当初はケーキを見ると「身体に悪そう」とまで思うようになったのだが、今では何の迷いもなしに食べられます(笑)。残念。。。
ホテルの食堂なのに生け簀完備→
バスルームのセンスもいい
今回の旅は本当に仕事一色だったので、ホテルに缶詰状態。青島大学内のホテルだったが、ホールもホテルと同じビルにあったために一歩も外に出ない日もあった(笑)。フロントで日本語はもちろん英語も通じないのはちょっと不便したが、基本的には私自身はあまり困る事がなかった。強いていえば、テレビの使い方が分からなかったので当てずっぽうで3日目にやっとチャンネルを変えられるようになったくらい(笑)。鍵が開かなかったり、トイレの水が流れなかったりという人もいたので、かなり大変だったと思う。
ホテルの部屋は壁紙が剥がれてたり、塗装が「?」と思う所もあったりしたが、基本的にはとても清潔で快適でした。冷蔵庫もポットも洗面道具一式もあるし、中国茶セットも完備。一つだけ驚いたのはベッドの硬さ。「板?」と最初座った時にびっくりしたが一応マットレスになっている。最初は「板」と思っていたがそのうち「岩」のように感じて来た。ベッドに入った時のリラックス感が全くない。そして寝ても寝返りを打つ度に体のあちこちが当たって痛い(笑)。
次の日に、早速他の人達ともその話になったがアメリカ人は「硬い方がよく眠れる。昨日は熟睡した」という人もいれば、オランダ人は「あんな硬いベッドじゃ全然寝れないよ。昨日は2時間も寝れなかった」と云っていた。
健康にはいいような気がするが、寝る時もなんだか鍛えられている気がして、ここにも中国のパワーの源があるのかな〜と感心してしまいました(笑)。
中国に行く前に上海に行った事のある従妹から色々と話を聞いていました。
腰を抜かす光景をよく目にする、と云っていたがその中の一つが「中国はとにかくお茶なんだよ」という話。マイボトルにお茶を入れて新鮮なお湯を注ぐという話だったが、そのマイボトルがネスカフェの空き瓶でお茶っ葉が口に入るのもお構いなしだったりする話を聞いて大笑い。確かに空港に着くなり、あちこちに水飲み場ならぬ、熱湯注ぎ場があって「こんなの飲めないよ〜」なんて思っていたが。
そして、空港からホテルに着くと今回のイベントの受付に10人近くがテーブルを並べて座っていたが、同じ数のマイお茶ボトルが見事に並んでいた(笑)。ネスカフェの空き瓶はさすがになかったが、透明なプラスチック製で結構1リットルくらい入る大きなもので、それぞれに入っているお茶っ葉も違っているよう。クコの実が入っていたり、白い綿帽子のようなものが入っていたり、きっと好みや体調に合わせたお茶(漢方?)なんだろうな〜とつくづく感心。
ホテルの部屋にもお茶の葉(ジャスミン茶、鳥龍茶など)が3缶も置いてあったし(またこれが美味しい!)、食事の時ももちろんだが、仕事中もとにかくお茶。マグカップにお茶っ葉が入れてあって、沸き立てのお湯を注ぎに来る。それも定期的に来るのでいつでも新鮮なお茶が飲める。日本ではキンキンに冷えたものを飲みたくなりがちだったが、つくづくこれはいい習慣だな〜と思って、日本に帰って来てからも出来るだけ温かいお茶を飲むようになりました。体にはつくづく良いような気がします。
中国に行くのは今回が初めて。
行く直前まであまり深く考えていなかったのだが、2〜3日前から急に色々と不安に。
共産主義国も初めてだし、日本のメディアの報道はあまり中国を良くないように取り上げているものが多いので、どれ位の生活レベルなのかも検討がつかなかった。
イギリスの友人が遥か遠くに感じる日本の事を思う時に「ビルとか建っているの?」と真面目に訊くので「うん。電気も通っているよ」と冗談まじりに返すが、失礼ながらそれと同じような感覚でした(笑)。
今回行ったのは中国の青島。成田からわずか3時間強。なんて楽な旅なんだろう(笑)。
この手軽さには感激。乗る前の気負いが何もない(笑)。
初めての中国。飛行場もとってもきれいだし、ホテルまでの大型のバスも日本と変わらず冷房まで入っている。以前にギリシャに旅行に行った時に荒野の中にポツンと作られた野外劇場を観に行くツアーに参加したが、40度以上の猛暑の中を冷房なしのバスに延々と数時間揺られた思い出があるので、「よっぽどヨーロッパより進んでいるわ!」と変に最初から感激してしまった。
車窓から見る景色はとにかくダイナミック。高速道路沿いにも木や花が植えられていたが、とにかくスケールが違う。木は所狭しと植えられているし、花も延々と咲き乱れていた。
そして何よりも凄いのが建築ラッシュ。想像を絶する。同じような高層ビル(きっと日本で云えば団地になるのだと思うが)が5〜6棟ドンドンドンと同時に建築中。それも一カ所や2カ所ではなく10秒もバスで走れば、次の建築中ビル群を目にする勢い。
何だか覆いも足場もなく、コンクリートが剥き出しなので色々と首を傾げたくなるが、その同時進行のパワーは凄いのひと言。日本の高度成長期もこんなだったのかな〜と考えたり。
実は、同じアジアのせいかあまり異国に来た感じはしなかったが、バスの窓から見た景色は新鮮でこれからの4日間に心はうきうき。良い旅になりそうな予感がしました。
写真(上)高速道路脇の花と木。ひしめき合っている(笑)。
写真(上中)あまり日本では見掛けない岩肌が剥き出しの山。分かりづらいが道路の反対側もボックスに植え込んだ花が延々と。
写真(下中)超高層クレーン群。
写真(下)コンクリートの枠組みだけのビル達。怖い。。。
初めて中国に行って来ました。青島という都市でしたが、かなり色々とカルチャーショックがあって、好奇心旺盛な自分としては本当に「面白い」旅となりました。
仕事で行っていたので立場上、内容についてはあまり詳しくは書けないのだが、旅行者としての範囲内で旅行記を書こうと思っています。
それにしても、中国はとにかくエネルギッシュ!大陸と云うスケールの大きさから来ているのだろうが、中国人はとにかくパワフル。ニューヨークがエネルギッシュ過ぎて、人によっては「疲れる」という友人が何人かいるが、中国も何かエネルギーが渦巻いている感じがする。私はそのエネルギーに乗せられるのが好きなので、滞在中はとっても元気だったのだが、空港に着いた途端にとてつもない疲労感に襲われて、知らないうちに自分のキャパ以上のパワーに巻き込まれていたんだな〜と実感しました。洗濯機でぐるんぐるんに回されて、脱水まで掛けられた感じ(笑)。
今回は中国人含めアメリカ人、オランダ人との仕事。議論する事が多く、その中で皆が声を荒げる事が一度や二度ではなかったが、皆、心があるべき所にはあって、頭ごなしに自分の意見を通そうとするものは一人もいないし、全てがオープンに話し合われるので、必ず皆がその時々に最善と思える結論に納得して達する事が出来ました。そう云う意味では外人との仕事は本当にやり易い。
しかし、限られた時間の中で出さなければならなかった最善と思っていた策も、あとになってみれば、最善ではなかったのかも、と反省する事もあり、最後の晩は「もっと良い方法があったのではないだろうか」ともんもんと眠れない夜を過ごしました。
中国にいる間に一緒に過ごした人達(大勢の日本人含め)は本当に心があって、学ばされる事が多かった。人間的に尊敬出来る素敵な人達と接して、自分の事を色々と考える良い機会ともなりました。仕事の中でも、もっと人の立場に立ったり、思いやりがなくては...。まだまだ人間出来ていません。
やっとこれで旅行記が終わりました(笑)。自分でもしつこいな〜と思っていたのだが、書き出したものを途中で中途半端に終わらせたくなかったので、季節外れになりながらも最後まで同じペースで書く事にしました。途中でオリンピックもあり、色々と思った事もあったのだが...。オリンピックに関してはたくさんの人が書いているだろうと思い、”我が道”を突き進みました。これで、やっと解放されてタイムリーな事も書けます(笑)。
実は旅行記を書いていて思わぬ作用がありました。旅行中に大きな心の変化があって、帰って来た当初はピアノもとても張り切っていたのに、2月の頭位から実生活の中では気分的に落ち込み気味でした。季節的なものもあるが、なかなか突破口が見付からない時にブログを書くと、ニューヨークにいた時に経験した精神的な発見や新たなものの見方が思い出されて、「ああ、そうだった!」と自分の事ながらまた張り切れる活力となっていました。人間はあっという間に感覚的に良い事も(悪い事も)忘れてしまうので、ブログは共有の場だけでなく、自分が思った事や考えた事を再確認出来る場所でもあるという云う事を今回の旅行記で発見しました。
本当に長い間、お付き合い下さいましてありがとうございました(笑)。
追記:ニュースにも度々出ている、倒れてしまった鶴が岡八幡宮の大銀杏。写真を今日のブログに載せたいと思い、明るいうちに行ってみました。階段の上からと思い、脇の階段を登りながら、「こういうのは写真を撮っていいものだろうか?」と急に疑問に思って来た。中央の大階段が封鎖されていたためによく見えないので、下に降りて来たが間近で見たら本当に痛々しかった。しめ縄もしてあるせいか、本当に人が倒れているようで涙が込み上げて来ました。隣にいたおばさんも一緒に来ていた人に「かわいそうだから、もう行こう」と云っていた。なので、今回は写真は撮るのはやめました。元気だった時の素晴らしい銀杏の写真を見て下さい(笑)。
帰りにクリーニング屋さんに寄ったら、「こんにちは」の次の二言目が「八幡様の銀杏が倒れてがっかりね...。」とおばさんがとっても悲しそうだった。今日はこのニュースのせいで鎌倉は凄い人出だったが、鎌倉の人にとっては本当に身近な存在だったんですね。とっても残念です。
旅行中はあまり考えずにぶらぶらと思いの向くままに歩く事が多いが、発見が多い代わりに2度と同じ所に行けないという難点もある。
前回ニューヨークに行った時に地下鉄の駅から目的の美術館に行くまでの間にとても興味深いお店を見付けました。とてもこじんまりとしていてドアには鍵が掛かっているのでブザーを鳴らさないと入れないのだが、ウィンドウがあまりにも面白そうだったので入ってみる事にしました。
全部の壁一面に所狭しと飾ってあるのは様々な歴史上の人物の直筆のサインや走り書きやメモ、手紙です。ナポレオンやチャーチル、ワシントンやリンカーン等のアメリカ歴代大統領の手紙、劇作家のサミュエル・ベケットや作家のヘミングウエイの手紙や画家のミロの走り書きとサイン等々。美術館よりも楽しいくらい。そして何よりも私にとって興味深いのは作曲家のもの。ベートーベン、ラフマニノフ、シュトラウス、ガーシュインのものなどがあったが、何と云っても感激なのはブラームスのもの。出版社への手紙だったと思ったがサインはJ.Brahmsと走り書きしてあって本当に目の前にブラームスが直接触れたものがあると思うだけで何ともいえない思いになります。値段は$6000(60万円)とそこまで高くはなかったのでいつか手に入れたいという夢は持てます(笑)。
前回の時にお店の住所を控えていなかったので、もうあそこは2度と見付からないとあきらめていたのだが、今回の旅行中にもたまたま歩いていたら、偶然にもこのお店に行き当たりました。今回も端から一つ一つじ〜っくりと見ていたのだが、お店の人と音楽の話になり、どの作曲家が好きなの?と訊かれ、「断トツでブラームス」と答えたら、奥からごそごそと大きな額縁を運んで来ました。1〜2段の楽譜と数文、そしてブラームスのフル・ネームのサインがありました。「フル・ネームのサインは珍しいんだよ」と教えてくれたのだが、こちらは$35,000でした。こちらはさすがに夢も持てませんね...。誰かプレゼントしてくれないかな〜...(笑)。
追記:歴史といえば、今日の明け方に家から歩いて5分の鶴が岡八幡宮の大銀杏が倒れてしまいました。樹齢千年の歴史ある素晴らしい木だったのに...。大ショック。
色とりどりの紙吹雪 ツリーの残骸
旅行中は道を歩いているだけでも色々と発見があって楽しい。
今回はクリスマスとお正月をかけていたので、季節がらみで日本では考えられない光景もいくつか。
大晦日のタイムズ・スクエアのお祭り騒ぎは有名だが、翌日の1日の夜にもまだ紙吹雪が舞っていました。そして、お正月も過ぎると、あちこちの道ばたにたくさんのクリスマス・ツリーが捨てられていました。まだ生き生きとしているのに...。少し悲しい...。
プッチーニの原譜
アメリカ旅行も最後の数日間はゆったりと過ごしていました。会うはずだった小学校の先生は体調が悪いと云う事で会えなくなり、その上、とてつもなく風の強い寒い日に外を歩いていたら鼻の炎症を起こしたらしく、風邪でもないのに鼻水が止まらない上に夜は痛くて眠れない程になってしまったので、日本に帰る前までの残りの数日は大事を取ってのんびりと過ごす事にしました。ピアノを練習しに行ったり、散歩する程度。
しかしあまりに観光をしていなかったので(笑)、最後に一カ所だけ今回の旅行でぜひ行きたいと思っていた「Morgan Library (モーガン図書館)」へ。ニューヨークに着いてすぐに行こうと思っていたので、インターネットで調べたらオペラの作曲家のプッチーニと作家/アーティストのウィリアム・ブレイクの展示があるというので大喜び。プッチーニはオペラの中では断トツ一位で好きな作曲家でブレイクは昔から興味を持っていた人。この組み合わせは私のためにあるようなものだわ!と思うくらいに楽しみでした。
しかし、行く機会を何回も逃し、ついに行けたのが最終日。行ってみたら、年が明けてしまったせいでブレイクの展覧会は終わっていました(涙)。とっても残念。プッチーニの展示も小さな一部屋で少し物足りなかったのだが、やはり直筆の楽譜を見るとわくわくします。
ブレイクの展示が終わってしまい、代わりにヨーロッパのエッチングの展示をしていました。その細やかさにびっくり。一つ一つの絵にとてつもない芸術性と技術を見いだしました。見ている人が私一人だった事もあり、守衛さんが話しかけて来ました。自分の好きな絵をいくつか教えてくれて、一人で見ていた時には気付かなかった細かな描写や見逃してしまうような繊細な美しさ、額との相性等を感激しながら話してくれました。ガタイの良い守衛さんだったが、美を感じ取れるその心の繊細さに感動しました。
モーガン図書館の展示はスケールが小さいので「展覧会」を期待して行くとがっかりするかもしれないが、ここは図書館になっている数部屋が見所。アメリカの大富豪の個人の家だったこの場所は書斎と図書館等の豪華さが必見。当時のお金持ちの家は芸術と生活が一体化していたのが素晴らしい。
ニューヨークは美味しいレストランが多く、今回も色々な人が連れて行って下さったり、自分で調べたり、と思いっきり美味しいものをたくさん食べて来ました。(日本ではほとんど外食をしないので食生活の差がとてつもなく激しい...笑。)
旅行も後数日という時に日本でのリサイタルでお世話になったKさんの娘さんとお会い出来る事になり、マンダリン・オリエンタルのホテルの中にある「Asiate(アシアテ)」を提案して下さいました。
高級感溢れるホテルの35階にあるレストラン「Asiate」。案内されたのはセントラル・パークも見える窓際の席。レストランの雰囲気も素敵なのだが、とにかく景色が素晴らしい。サービスも超一流で控えめなのに気が利いていて、本当に気持ちがいい。お料理一品一品がとにかく心細やか。見た目にも美しく、そして味もとっても繊細。日系アメリカ人のシェフが携わっているので、和の素材を多く使っていました。ニューヨークに来てまで日本人のシェフの料理?と思うかもしれないが、今回の旅では「最先端」という意味では一番ニューヨークらしい食事だったような気がします(笑)。雰囲気とサービスと食事の洗練は際立っていました。
全ての部屋が違うピアノ!
今回の旅でも色々なピアノとの出会いがありました。聞いた事も弾いた事もないブランドのピアノでも結構良い音がする楽器にも出逢えて楽しかったです。
今回、何回か練習しに行ったスタジオは時期的にすいていた事もあり、「自分の好きな部屋を選んで良いよ。」と空いている部屋のピアノを色々試し弾きさせてくれました。「カルメン」やら「トラヴィアータ」等、オペラの名前がそれぞれの部屋に付いていたが、私が気に入ったのは「ラ・ボエーム」の部屋のピアノ。音が少しキンキンするのが気になったが弾き心地がしっくりいったので、そこに決めて練習していました。帰り際にスタジオの人に「ラ・ボエームのピアノが一番弾きやすかった」と云ったら「あれはスタインウエイと同じアクションを使っているんだ」と云われ、納得。馴染みのある感触だったんですね(笑)。
それぞれの部屋はとても明るく、そして家具や絵が飾ってあったりして、何時間練習しても居心地が良かった。ロンドンで昔良く練習しに行っていたスタジオは照明も暗く、何もない部屋にグレーの絨毯にピアノがぽつんと置いてあるだけでした。練習にはとても集中出来るのだが、やはり2時間もすると外に出たくなっていました(笑)。今回はニューヨークで気持ちのいい練習場所が見付かって大収穫でした。
追記:12月にC家の紹介で弾かせて頂いた素晴らしいスタインウエイのある教会でも「いつでも練習しに来てね!」と云われ、何回か覗きに行きましたが、クリスマス時期という事もあったせいか、いつもどなたかがお祈りをしていらしてやはり練習するのは気が引けました...。残念...。他の時期だったら可能かな〜。
いつもニューヨークに行くと駅や道で歌ったり演奏したりしているストリート・パフォーマーのレベルの高さに驚きます。夢を追いかけて来ている人が多くて競争が激しいせいか、あまり下手な人というのがいないような気がします。(その点ロンドンは訳の分からない人もいて多種多様。)今回は冬だったせいか、2、3人しか遭遇しなかったのだが、オペラを歌っていた変わり種がいました。
アジア系の50歳くらいの男性で声はテノール。声質も良いし、音量も大きく、汚い地下鉄の駅にいながら、とても優雅な気分になりました。今のコマーシャリズムに乗っているオペラ歌手まがいの有名人達に比べたらよっぽど上手いし、心に響くものがありました。最近特に日本人にしろ外人にしろ、言葉や音楽的な意味はそっちのけに息継ぎをするためやドラマチックな効果をつくるためにやたらとフレーズをあちこちで好き勝手に切られるのがとても気になります。
その点、この地下鉄の方はフレージングもとってもきれいで、曲想も考えていて、とっても丁寧に一つ一つの歌を歌っていました。本格的なクラシックのトレーニングを受けたと思われるこの人がこの歳(若いうちはみんなやる事だが...)でもなぜ地下鉄で歌っているのか、色々と考えさせられたが、駅では多くの人が足を止めては聴き入っていました。「本物の音楽」は有名無名問わず、意外な所に存在したりするんですね。
ニューヨークの地下鉄は駅もあまりきれいではないし、電車の中もプラスチックのシートに鉄の吊り輪でとても味気ないのだが、時々駅構内にアートが散りベまられていて目を楽しませてくれます。 オブジェだったり、タイルの絵だったり、コラージュだったり。アメリカ自然史博物館の駅は通路がきれいに海の中にいるような青いタイル張りで、ホームの所には化石の標本のような物が壁にはめ込んである懲りよう。公共の場に遊び心があるのは羨ましい。日本も駅等で斬新な壁画も見るようになってきたが、見ていて楽しくなったり、笑いを誘うような物をなかなか見ないのは残念...。
2001年の9/11があった年末にも私はニューヨークに行っていました。当時もニューヨークに住んでいた従妹に会いたくて行ったのだが、今思うと街全体が「こんな事に負けてはいけない!」という異様なハイ状態になっていた気がします。観光客の減少を心配して、レストランやエンターテーメント業界が打撃を受けないように外出するようにニューヨーク市長が一生懸命宣伝していたように思うが、本当にあの時程レストランや街が賑わっているのは見た事がありません。
9/11の後は日本でも色々とドキュメンタリー番組をやっていたが、その中の一つに、もともとニューヨークに住んでいる人を取り上げてはその日常生活振りを見せていたものがありました。この番組はでいつもとても丁寧に作ってあって、表面的ではない突っ込んだ視点からのリポートでとても気に入っていました。
そして、9/11の結構すぐ後にも、あるレストランを取り上げたとってもポジティブな番組を作っていました。フレンチ・レストランの「Capsouto Freres (カプスート・フレール)」。ワールド・トレード・センターの近くにあったこのレストランは9/11の後、撤去作業に関わる人達のために解放し、食事をほとんど24時間態勢で支給していたそうです。家族経営でお店のオーナーは本当に温厚そうなおじさんでした。画面に映っていた食事もとっても美味しそうだったが、とにかくこのおじさんに感動してしまいました。
なので、12月にニューヨークに行った時にぜひとも行こうと思っていた場所でした。12月にはもうすでにレストランとして復帰していて、中の雰囲気もとっても素敵でした。壁がレンガでお花もゴージャスに飾られていてそれはそれはロマンチック。(当時とっても好きだった人と一緒だったのも心理的に大きかったのかもしれないが...笑。) 食事も美味しく、そしてオーナーもいらしたので、食事が終わってから少し話をする事も出来ました。とっても良い思い出のあるレストランです。
そして、今回の旅行でも大好きなC家と一緒に行く事になりました。昼間だったせいなのか、時が経ってしまっているせいなのか、大分寂れてしまった感があって少し寂しい気持ちになりましたが、料理が出て来て気持ちは一転。本当に出て来るもの出て来るものに全て感動がありました。パンから、パンに付いて来るバターからコンフィチュール、前菜のアスパラガスのトリュフ・ソース掛け、ほうれん草とチーズのスフレ、デザートのイチジクのスフレ、おまけに付いて来たオレンジ・ピールまで何から何まで一つ一つに技と心がこもっていてみんなで感激していました。
ここの名物はスフレなのだが、Hちゃんはスフレ初体験。超感動してくれて私も嬉しい。みんなもとっても喜んでくれた様子。最初にレストランに入った瞬間は「こんなだったかしら....」と不安になってしまったのだが、結果的にはみんな大満足のランチとなりました。
1月2日。前日のディナーの後はC宅に泊まらせて頂きました。帰って来たのも11時過ぎだったが、子供達がゲームをしたいというのでわいわいと遊んでから1時近くに寝ました。
そして、翌日6時半に起床。今回の旅で日本から楽しみにしていたレッスン(ピアノではありません!)があるので早起き。何のレッスンかと云うと、空中ブランコです。以前から死ぬまでにやりたい事リストに乗っているものの一つだったので、やっと念願が叶えられてわくわく。C家のHちゃんがニューヨークに住み出してからレッスンを受けている所で一緒に受けられるように手配して下さいました。
Hちゃんの弟のE君も一緒に早起き。土曜日というのに朝早くから水泳クラブの特訓があるという事で頑張って起きていました。鎌倉から移り住んで、色々な可能性にチャレンジしている姿を見て本当に嬉しいし、感動します。
みんなで一緒に家を出て、E君とお父様は学校へ、そしてHちゃんとお母様と私は空中ブランコ・スクールへ。
もう何年も空中ブランコはやってみたい事の一つだったが、空中ブランコで自分が気持ち良さそうに行ったり来たりしている姿だけを想像していました(笑)。Hちゃんのお母様から行く数日前に自分で足を引っ掛けたりしなくてはいけないと聞いて急に「自分に出来るだろうか?」という不安が出て来たのだが、心配はそれくらいでした。
大きなテントの中に大きな安全ネットがあり、その上に空中ブランコが。初心者グループが8人。(Hちゃんはもう『技』も出来る別グループ。)日本のように懇切丁寧に教えるというより、ポイントを押さえて後は実践!みたいな感じです。あっという間に上に上がる事に。
ここが自分の甘い所だと思うのだが、はしごを登り始めて、初めて恐怖感が出て来た!!!「なんで私こんな事する事になっちゃったんだろう!!!」なんて急に思ってしまった。一番上に着いて、台から飛び降りる前に体を反り出さなくてはいけないのだが、この時が本当に怖い。ここ最近経験した事のないくらいの体に感じる恐怖感でした。飛び出してからも下のインストラクターから色々と指示を受けるのだが、「手を離して!」といわれても、頭では分かっていても怖くてなかなか離せない(笑)。一瞬遅れると勢いがなくなってしまうので、なかなか難しい...。2、3回一人で足を引っ掛けたり、くるっと回ったり。そしてレッスンの最後には反対側のブランコの人につかまえてもらうのだが、苦労しながらも最後に出来たのはとっても嬉しかった。
一番最初にやった時は降りて来る時に足ががくがくと震えていて、自分でもよっぽど怖かったんだな〜と実感。足の震えは2〜3回していくうちになくなったが、最初の台から飛び降りる前の瞬間はさすがに最後まで相当怖かった。
レッスンが終わってHちゃんに「慣れて来たら、あの恐怖感はなくなるものなの?」って訊いたら「ううん。今でも毎回怖い...。」と云っていた。そうなの〜〜〜〜!!???
大した事ではないのかもしれないが、ずーっとやりたいと思っていた事の一つが出来た事と、自分ではとてつもない恐怖感を感じながらもチャレンジ出来た事に気分は晴れ晴れ。チャレンジ精神で始まったこの一年に良い予感がしました。
御ミサのなかった巨大カテドラル
3月に入ったのに、お正月の事を書くのもなんだが、旅行記ももうそろそろ終わりなのでもう少しお付き合い下さい...(笑)。
1月1日。日本にいる時はいつも大晦日は教会の夜中の御ミサに行っています。年の初めをお祈りの中で迎えられるのは私としては理想です。
今年は近くの教会は夜半の御ミサがなかったので、1日の日の朝に行こうと思っていました。なので、ピアノの練習をしにG宅に行く予定も「午前中はミサに行きたいので、午後練習に行っていいかしら?」と尋ねたら、「私も一緒にミサに行きたい!」というので急遽G宅近くのSt.John the Divineカテドラルに行く事にしました。インターネットで調べたら、1日は12:15から御ミサがあるというので、朝11時にG宅に伺って、一時間程練習してから一緒に教会に行く約束をしました。
1日の朝は色々と時間的に遅れてしまい、練習も30分程しかできないまま、教会に。実は世界で一番大きなカテドラルらしい。案内人に訊いて、12:15の御ミサがおこなわれる奥〜の方にあるチャペルへ。5分前に着いていたが、待っていたのは親子二人だけ。随分寂しいな〜なんて思っていたが...。12:15を過ぎても牧師さんが全然 現れない...。御ミサが遅れるというのはあまり聞いた事がなかったのだが、それでも10分程待ちました。さすがに何も起こる気配すらないので、また遠くにいる案内人に尋ねたら、急に思い出したように「今日は特別の日だから朝のミサしかなかったんだった!」と申し訳なさそうに謝っていた。ホームページにわざわざお正月の予定として書いてあったのは結局は間違いだった...。
1日に御ミサに行けないのは非常に残念と思い、相当がっかりしたのだが、どうする事も出来ないので、G宅に戻りまた2時間程練習。夜はC家とのディナーの約束が入っていたので、一度従妹達の所に荷物を取りに帰りました。
従妹に御ミサに行けなかった事をとても残念そうに話したら、「きっと夕方の御ミサのある教会があるよ」と、一生懸命インターネットで探し始めてくれました。凄い数の教会を一つ一つ調べてくれたのだが、ついにシアター街にある「←Actor's Church (俳優のための教会!)」というカトリックの教会を見付けてくれました。
御ミサの時間が微妙に遅くて、C家との約束のデイナーの時間には間に合わなくなってしまうので、少し時間をずらせないかと電話をしたら、「私たちも一緒に行きます!」と云って下さいました。
結局、鎌倉でも教会が一緒だったC家と1日の御ミサに一緒に行く事になり、私としてはこれ以上にない嬉しい一年のスタートとなりました。『Actor's Churchっていう事は、かっこいい俳優とかがいっぱい来ているんじゃない?』と従妹に云われて来たのだが、来ている人は結構普通でした(笑)。しかし神父様がすごいエンターテイナーで、話はドラマチックだし、歌がめちゃくちゃ上手かった。歌の上手な神父様というのは意外と多いのだが、私が今まで聞いて来た中ではナンバーワンかも。教会の正面も周りの劇場に負けない位に派手にライトアップされていて、土地柄がとても出ていました(笑)。
一緒に新年の最初の日を教会でC家とお祝い出来たのは本当に嬉しい事でした。元々の予定はC宅でのデイナーだったのだが、急遽教会に行く事になったので、帰りにフォンデュ専門のレストランに連れて行って下さいました。
チーズ、それからスープのフォンデュ。スープ・フォンデュは日本のしゃぶしゃぶからヒントを得て最近出来たものだそう。パンもそうだが、野菜や魚介類、そして何種類かのお肉(仔牛が特に美味!)を次から次へと食べて、楽しいし美味しいしでとっても幸せ。最後はおまけにチョコレート・フォンデュ!とっても贅沢なニュー・イヤー・ディナーとなりました。
当初1日に予定していた事は全てひっくり返ってしまったのだが、最終的には自分でも予想出来ないくらいに充実した幸せな一日となりました。
帽子がかわいいG
いつもニューヨークで練習をさせて頂いている友人Gから電話が。郊外からニューヨークに戻って来たのでぜひ会いましょうと云う事に。
お気に入りになったベジタリアン・レストラン『Candle Cafe』でランチ。その後、Gがメトロポリタン・ミュージアムの売店を見に行きたいというので一緒に。その間に私は20分だけ展示階の方に足を伸ばし、大好きなレンブラントの部屋へ。このミュージーアムはレンブラントの数が多くて本当に嬉しくなってしまいます。今回一番気に入った絵の前でしばしその素晴らしさに浸って来る事が出来ました。
31日、1日はさすがに練習スタジオが閉まっているのでどうしたものかな〜と思っていたのでGにちょっと練習させて頂いてもいいかと尋ねたら「ぜひ弾きに来て!ピアノも喜ぶわ〜!」と云ってくれたので、早速練習しに。とっても古いピアノだったが、友人のピアニストが所有していた物だけあって音がいい。
翌日の一日も結局練習に行ったので、年の終わり、そして年の初めにピアノに触れる事が出来ました。今年も音楽的に充実した年になりますように...!
←相当弾き込んであるピアノ。象牙の鍵盤はやはり指に心地いい...。
親友のE家族との滞在中は観光というものは全然せずにずっと話し通しだったような気がします(笑)。
しかし、EとEのお母様Nがピアノを聴きたいというので、Nがいつも行っている教会を特別に開けて頂いてピアノを弾かせて頂く事になりました。(実はEは子供の時以来、私のピアノを聴いた事がなかった。)
Eは小さい頃バレエをやっていて、一緒にいつか何か舞台で出来たらいいね、なんて子供の時は云っていましたが...。
教会のピアノは聞いた事もない名前のものでしたが、驚いた事にとても良い音ですんなりと音に入り込む事が出来ました。(ひどいピアノだと慣れるのに30分くらいはかかってしまうのだが。)15分くらいスケールやバッハで指ならしをしてから、本当に20分程の小さなコンサート。クリスマスの雰囲気の教会の中で、親友が親子三代でちょこんと並んで三人で静かに聴いてくれていました。どんなに親しい人でも演奏となったら緊張する私ですが、この時は本当に珍しく心が穏やかでした。太陽の光もサンサンと教会内に降り注いでいて、とっても素敵な時間となりました。
ワシントンから南にさらに下がってヴァージニアへ。
保育園時代からの親友Eがワシントンまで車で迎えに来てくれました。電話で話した時は「1時間半もかからないはずだから、迎えに行くよ〜」と云っていたので、その言葉に甘えてしまったが、結局交通渋滞で3時間掛かってしまったらしい。おまけにヴァージニアの家までまた戻るのにも3時間掛かってしまったので,彼女は計6時間も運転していた事になってしまった。申し訳なかった..。
Eは三歳からの親友なので、私にとっては一番古い友達。8歳からは離ればなれでそれぞれに全く違う人生を送って来ているのに、価値観が似ているせいか、話が異常に合う。年に数回しか話さないが、その時々に人生で経験している事を共有出来るだけでなく、お互いに共感出来る事に本当に驚きがあります。
ここ数年は急ぎ足でしか会えなかったのだが、今回はたっぷりと3日間一緒に過ごせたので、本当に色々な話が出来ました。一緒にいて思ったのがつくづく好みや思ったり感じたりする事が似ていて、ときどき気味が悪い位でした。着ている物や付けているアクセサリーも似てたりするのだが、セルフサービスのレストランで、別々に選んでいるのに、全く同じ物(前菜からデザートまで!)をおぼんに乗せているのを見てはおかしくなって、笑っていました。今では前世は双子だったに違いない、と思っている(笑)。
年齢が大きくなって、そして大人になるに従って、自分が友人として付き合っていく人は自分で選んでいるような気になってしまったりもするが、Eの事を思うと、縁や出会いというのは本当に与えられたお恵みとしか思えません。3歳の時に保育園で一緒だった友達が時間や距離を超えても繋がりを持ち続けられたというのは奇跡に近いように思う。おまけにただ一緒にいて楽しいだけの友達ではなく、本当に自分が生きている上での大切な存在と思える人とそんなに小さい時に出逢えたというのが本当に感謝です。
ワシントンの地下鉄。ニューヨークに比べて利用者も少ないせいか,随分ときれいで居心地がいい。
驚いたのは床に絨毯が!公共の乗り物というのはその街や沿線の特徴がよく出ていて興味深いのだが、絨毯が敷いてある地下鉄は初めてかも...。
駅のプラットホームもSF映画に出て来るような近未来的な感じでかっこいい。
小さなクリスマス・ツリーに 小さな椅子。かわいい!
ワシントンのナショナル・カテドラル。
色々と感動する事があったのだが、その一つが子供のためののチャペル。大きな教会に行くと、小さな小聖堂がメインの聖堂の周りにいくつもあるものだが、子供専用のためのものはここで初めて見ました。小さな部屋に全てがミニチュアサイズでなんともかわいい。子供にしたら、本当に居心地がいいのだと思います。
他にも教会内には小聖堂はあちこちにありましたが、階段脇に10人も座れないような小さなお祈りの場所もあったりして、本当に心温まります。
また、最上階の建築経過の展示には教会に取り付けてある色々なガーゴイルの彫刻の見本が飾ってありました。昔もそうだったと思うのだが、ユーモアのセンスが光る。近代的な要素を含んだ、カメラを持ったものやガスマスクしたもの、そしてダースベーダまであるようです。(残念ながらダースベーダの見本はありませんでした。)
本当に見るもの一つ一つに感動を覚えました。
ワシントンでは時間が限られていたのだが、一カ所だけ観光に。9.11の追悼ミサや国葬等にも使われるNational Cathedralに行きました。
その大きさにとにかく圧倒されました。おまけに1907年から建て始め1990年に完成したという。今の時代でもこんなにも巨大なゴシック建築の物を建てられるという事に本当にびっくりしました。教会内にはエレベーターも完備。最上階には建築過程の展示がしてあって写真でその経過を見る事が出来るのだが、とても興味深く、ここだけで一時間近くは見ていてように思う。イタリアを初めとするヨーロッパの職人を大量に呼び寄せたらしいが、彫り物に至るまでの細部も本当に素晴らしい。面白いのはヨーロッパの教会と比べて、この教会は同じような建築物なのにとにかく新しい(笑)。歩き回っていても壁や柱、床の石の新しさ、きれいさに不思議な感じがしました。
宗教や宗派を越えた教会だそうだが、聖堂はキリスト教の教会のようで、とても居心地が良い。スケールが凄いのだが,ステンドグラスも素晴らしく,色とりどりの光が聖堂内の壁や床に降り注いでいて本当にきれいでした。ステンドガラスはとても近代的なデザインでしたがどれも色のセンスが洗練されていて見とれてしまいます。珍しい物ではアポロが持って帰って来た月の石を真ん中にはめ込んだ「Moon Window」(左下の写真)というのもありました。オルガンもとてつもなく立派でしたが、定期的にコンサートもあるそう。
実は生徒さんのLちゃんはこの教会付属の高校に行っているという事で、毎日この聖堂で御ミサにあずかるそうです。こんな所に毎日来ていたら,本当に人生観も違うんだろうな〜と羨ましい限り。本当にスケール感が違います。
ワシントンでの観光はここだけでしたが、じっくりと落ち着いて見る事が出来て、目の保養にも、心の保養にもなる充実した時間でした。
12月27日〜28日。ここからまた旅。ニューヨークからワシントンへ。
10年近く前に日本で教えていたアメリカ人の生徒さんのご家族に会いに行きました。
当時小学生だったLちゃんも今年大学生。しかしながら、小学生の頃の自由奔放さと明るさは全く変わっていなくて,本当に長所がのびのびと育ったような知的で利発な素敵なティーンエージャーになっていました。今興味を持っている写真のポートフォリオも見せてくれたが、表現したいものがダイレクトに伝わって来て、上手だけではない何かがちゃんと形となっていました。一つ一つの写真を説明してくれる時のLちゃんの話もとても興味深く、思い入れの強さも感じられました。
Lちゃんの家族が日本を離れてからもう7〜8年経っていましたが、今回ご家族にお会い出来てLちゃんの成長振りを見れたのはとても嬉しかった。ピアノを教えていたのは確か1〜2年と短かったのだが、いつも気に掛けて下さっていて、Lちゃんの近況を知らせて下さっていました。2年程前には小包が急に届いて、開けてみたら素敵な室内履きの靴が入っていました!靴をプレゼントされたのは初めて(笑)!サイズもぴったり!
Lちゃんのご家族がまだ日本にいらした時に,ホームコンサートを企画して下さり、その際にスリッパがなかったのでお母様がご自分ののビーズの刺しゅうのしてある室内履きを貸して下さいました。その事を覚えていたようで、Lちゃんと街を歩いていた時に「これみほ先生にぴったりかも」と二人で思いついて送ってくれたそうです。何年も会ってないのに、急にワシントンの街角でそんな風に思い出してもらえるなんて本当に嬉しい。離れた所にいても、お互いに思い続けていられるご縁には本当に感謝です。
後日談だが、滞在させて頂いていた時に1時間程練習させて頂きました。階下でLちゃんが聴いていて「ピアノが聴けて楽しかった!」と云ってくれたのだが、その後のお母様から来た手紙によると、Lちゃんが前より練習するようになった、と書いてありました。嬉しい報告です(笑)。
マンハッタンに落ち着いて何日かいる事が出来たので、生活のリズムみたいなもの出来てきました。手頃で快適な練習スタジオも見付かったので、朝から午後に掛けては数時間練習。気分もすっきりして午後は観光なり人に会うなりして、日本では出来ない事を満喫していました。飛行機に乗ってしか会えない人がいるというのはなかなか辛い事ではあるが、だからこそ一緒に過ごす時間が本当に大切に思えて、一瞬一瞬の密度が濃い。
アメリカに到着してから一週間程でとても興味深い事が起こりました。完全にリラックスした状態で人と会ったり、周りの事を吸収したり、そして四六時中アメリカ英語だけで過ごしているうちに、急に小さい頃に英語しか話せなかった自分の感覚を思い出したのです。英語が本当にスラスラと出て来るようになり、従妹のKとも英語で話す事も多くなりました。自分の意思や気持ちを何の壁もなく伝える手段が,自分にとってはアメリカ英語だった事を再確認すると共に、日本語ではワンクッションを置いてしか気持ちを伝えていないのだと気付いたのです。
そして、当時持っていた過剰な自信も感覚として急に思い出しました。アメリカ時代は現地校では何でも得意だったというか、何でも簡単に出来るような気がしていたし、周りも褒める事が人を延ばすと信じているような教育なので、子供としてはそれを素直に信じていたのだと思います(笑)。8歳で日本に帰って来た時にはカルチャーショックと共に日本語が話せないがためのとてつもない自信喪失を経験し、二度とあの怖いものなしの自信を取り戻す事がありませんでした。しかし、それが今回の旅行中に急に思い出せたのです。自分でもびっくり。数日間、自分が云いたい事は云いたい瞬間にパッと言葉になって出て来るし、自信から来る迷いもないので何とも気持ちが良かったです(笑)。
しかし、数日もするとまた面白い変化が。我ながら、相手の気持ちや云った後の影響を考えずに物を云うのも本当に考えものだな〜ハッとしたのです。あの8歳の自信満々のまま大人になっていたら本当に自己中心の嫌な人間になっていただろうな〜と思う事が出来ました。いつも何となく、「あの自信満々のまま自分が育ったら、もっと強いピアニストになっていたかな〜」と思ったりしていたので、今回の発見は自分にとってはとても大きな事でした。あの自信喪失の経験があったからこそ、人の気持ちを考えたり、感じたり出来るようになったのだと思うし、音楽家に最も重要な要素だと思っています。
自分がこの人生で経験している一つ一つの事が本当に意味があって、自分の糧になったり、自分を成長させるためにあるんだという確信を持てたというのは私にとっては今回の旅の一番の収穫でした。
小さい時にはアメリカにいた事、そしてその後日本やイギリスに住んでいた事は本当に意味があり、その時々に自分がいるべき場所にいたんだと思えました。昨年は親しい方が何人かリスクを背負いながらも外国に移り住んでいるのを見て、自分も外に目を向けなくてはいけないのかと一年くらい悩んでいたのですが、今回の旅で、きっと自分が今日本にいる事には意味があるんだと思えるようになり、今ここで自分の出来る事を一生懸命しようと思えるようになりました。
思いがけず、とてつもなく大きな心の変化が色々とあった旅となりました。
ロンドンでもそうだが、ニューヨークでも必ず一回は劇場に足を運びたいと思っている。
吟味している余裕がなかったので、出演者のキャサリーン・ゼタ・ジョーンズに引かれて「A Little Night Music」というミュージカルを観に行く事にしました。
最近はシリアスなものに行く事が多かったので,ミュージカルは本当に久しぶり。キャサリーン・ゼタ・ジョーンズは昔から好きだったが、映画「シカゴ」での歌とダンスの素晴らしさに感激して以来ファンに。今回観れたのは本当にラッキーでした。
何回もリバイバルされて来たミュージカルだが、ロンドンでも今やっていて、評判がとても良いのは知っていた。内容的にはスエーデンを舞台にした愛の五角関係のような軽いものだが、一曲とても有名な曲があり、皆その曲を待ち構えているくらい。ちなみにこの歌は愛する男性に告白して振られ、相手を目前にして歌っている傷心の歌。
「Send in the Clowns」という曲で私も大好きな歌。
ミュージカルはやはり内容的に軽いので感動はなかったが、キャサリーン・ゼタ・ジョーンズには違う意味で感動しました(笑)。とにかく美しい!彼女の所だけ本当に光が発しているような錯覚に陥りました。他の女優もきれいなのだが、存在感が全然違う。スタイルもマネキンのように完璧なのだが、とにかく目と顔から光を放っていました。スター(星)っていう意味が分かりました(笑)。
しかし、(これはあくまでも個人的な意見だが...)面白いと思ったのは意外と演技が下手だったような気がする(笑)。他の役者とのやり取りがある時にはステージ慣れしている男優や女優の方に引き込まれる事が多かったように思う。しかし、美し過ぎて見ているだけでも満足なので、十分楽しめました。「綺麗な人は得」とはこういう事なんだと実感してしまいました(笑)。
ニューヨークにいくつか好きな建物があるが、その一つがグランド・セントラル・ステーション。NYに行くと電車に乗る事が多いので、この駅には毎回来ているように思うが毎回感動します。メインフロアーのダイナミックさは本当に素晴らしい。石が全て白っぽいので(大理石?)とても明るい感じが大好きです。大きな窓と高い天井は圧巻。見とれてしまいます。こんなにも楽しみで行く駅も珍しい(笑)。
地下には食事が出来る場所やホームがずらっと並んでいるが、あちこちの細部が本当に美しい。こんな駅は今もう作る事は不可能でしょう...。とにかくゴージャスな気分になります。アメリカのスケールの大きさと当時の経済力の凄さを目の当たりにします。
(左)プラットホームの入り口がズラーッと並んでいる地下。
(中)素敵な入り口の奥は何とも殺風景。このギャップが凄い(笑)。
(右)メインフロアの天井には時間毎にレーザー・ショー。
音楽と共に楽しませてくれます!
プレゼントのスカーフとセーターを着て
12月25日、クリスマス。
前日,教会から帰って来たのが2時過ぎだったので、朝はゆっくり。
従妹のKと彼のAと3人でクリスマスのプレゼントを開けたりして、のんびりとした楽しい朝。旅行中、なかなか朝のんびりする事がなかったので、久しぶりに気持ちもゆったり。
午後はグランド・セントラル・ステーションから電車で一時間程の郊外のコネチカットまで。友人のJ宅にクリスマス・ディナーに呼ばれました。家族が総勢15人も集まって、それはそれは賑やか。クリスマス気分を満喫出来ました。
最初の予定では2時頃に集まり、4時くらいに食事をして7時過ぎに解散という風に聞いていたので、お昼を食べず、帰りの電車の時間も7時台,8時台を調べて行っていた。しかし、5時になっても食事をする気配が全く無く...。結局皆でテーブルに座ったのは7時過ぎ!大人数なので、なかなか食事も終わる気配もなく段々と帰りの事が心配になって来た。
今はまた変わって来ているのかもしれないが、ヨーロッパのクリスマス当日と云うのは街が本当に閑散としている。ロンドンは地下鉄までもが止まってしまうので本当に街が静まり返っている。(イギリスは普段でも無人駅や空いている電車の中での犯罪の話をよく聞くので、乗る時間帯や乗る駅にはいつも気を使っています。)そんなイメージがあったので、ニューヨークに帰る電車、そしてそこから乗る地下鉄も夜中になってから一人で乗るのは旅慣れているとはいえ、心配に...。
なので、デザートまで辿り着いていなかったのだが、9時頃の電車に乗る事に決めました。まず駅についてびっくり。10人以上の人が既に待っていました(笑)。ちょっとここで安心。そしてホームに入って来た電車にもびっくり。座る席がないくらいに混んでいました。クリスマスの日でもこんなに人が出歩いていたんですね。無駄な心配でした。怖い思いをせずに楽しい気分のままクリスマスの一日を過ごす事が出来て、本当に良かった(笑)。
アメリカ自然史博物館は小さい頃にニューヨークにまだ住んでいた時に何回も来ていた事を覚えています。今回は大人になってから初めて訪れたのだが、展示の仕方が素晴らしく、大人でも相当楽しめる。動物の生態や恐竜の化石の展示がダイナミックで迫力満天。子供の頃はあまりにもそれがリアルで恐竜の化石が今にもみんな動き出して襲って来るのではないかと、急にとてつもない恐怖感に襲われた時があって、着いたばかりというのに「帰りたい,帰りたい!」とせがんだのを今でも覚えている。それが、後に「ナイトミュージアム」の映画で映像となって実現した時には「アイデアを盗まれた!」と思いました(笑)。
とにかく一日飽きる事なく楽しめます。こんな風に楽しみながら学べるのは本当にうらやましい。体験として知識を得られるのは本当に素晴らしい!
ダイナミックなBuddakan
12月24日、クリスマスイブ。ニューヨークを満喫出来た一日となりました。
朝はどうしてもきちんとした練習がしたくなったので、スタジオを2時間予約。思いっきりスケールを弾けるのも気持ちがいい(笑)。普段あまり気にしていない事だが、周りを気にせずに音を思いっきり出すと云うのは相当発散にもなっている事を実感。予定よりも少し時間を延長して3時間程した所で気が済みました。
気分もとっても晴れやかになって、少し観光。前日にC家のE君とHさんと少しだけ立ち寄ったアメリカ自然史博物館(American Museum of Natural History) があまりにも良かったので、もう一回行く事にしました。今回は博物館の中にあるプラネタリウムにも。最先端のプラネタリウムと云う事を前々から聞いていたので、もう何年も前から行きたいと思っていたのだが、やっと念願が叶いました。プラネタリウム自体、10年以上振りだったので,その進化に驚きました。あまりにもリアルに宇宙を旅しているようで、途中でちょっと酔いそうに...(笑)。宇宙の事を楽しく学べて、本当に充実した時間でした。(入場料が結構高いのが残念...。もう一回くらい観たかったが...。)
そして、夕方ダウンタウンに向かって、ディナーは従妹のKと彼のAと三人で食事。Buddakanというエスニック創作料理のレストラン。メインエリアはさすがにニューヨークのダイナミックな感じで、ドラマにも使われていたが,我々が案内されたのは奥のこじんまりとした場所。最初は少し正直がっかりしたが,逆に落ち着いて静かに話せて良かった(笑)。お料理の一つ一つが凝っていて,運ばれて来るお皿にいちいち感激。アンコウのお料理も初体験。とにかく全てが美味しかった!
大満足で帰って来て,少し一休憩。クリスマスイブなので、夜中のミサにその後行きました。近くに歩いて行ける教会を見付けたので、最初は一人でも行くつもりだったが、Aが一緒に行きたいと云ってくれたので、私としては嬉しい限り。11時30前に着くように出掛けました。教会はもうすでに人がいっぱい。かろうじて座る席を確保出来ましたが、あと10分遅かったらきっと立つ事になっていたように思います。それほどにたくさんの人達が来ていました。クリスマスの音楽が30分程演奏された後にクリスマスの御ミサ。お説教も素晴らしく、
そしてAと一緒にお祝いで出来た喜びというのがありました。ニューヨークで自分がいつも行っている教会ではない場所でもとっても素敵な心温まるクリスマスを迎えられたのは本当に幸せでした。
前回のブログに書いた教会。アッパー・ウエストサイドにあって実はいつも練習させて頂いていた友人宅の数軒隣だった事が判明。この教会に立ち寄ってお祈りした事もあってびっくりしました(笑)。
今回はCさんのお兄様が聖堂内だけでなく色々と案内して下さいました。まずはその広さにびっくり。建物の奥にはいくつも集会が出来るような広い部屋があり、バスケの練習をしていた子もいた(笑)。そして、奥には寝泊まり出来る施設も完備。そこの壁画に大感激。今は亡きポップ・アーティストのキース・ヘリングの絵が!!!最初はデザインに沿った既成のものを誰かが模写したのかと思いきや、キース・ヘリングが直々に書いたものだそうで、日本からもわざわざ見に来る人がいるらしい(笑)。なぜキース・ヘリングがここの壁に絵を描く事になったの?と訊いたら、ここの教会の信者さんだったらしい。さすがニューヨーク...。
デトロイトからニューヨークに帰って来て、やっと一段落。一週目にフィラデルフィアにも行くはずだったので何となく落ち着かない一週間だったが,デトロイトも無事に行けたので、これから少しはニューヨークでのんびり出来る日程。
デトロイトから帰って来た翌朝。少し余裕が出て来たせいか、猛烈にピアノが弾きたくなってしまった(笑)。それまでは時々「弾かなくては...。」とふと思ったりもしていたが、それが「どうしても弾きたい!!!」の気持ちに変わってしまったので、本格的に「練習」出来る所を探し出した。いつもニューヨークで練習させて頂いていた友人宅は、友人がニューヨークにいなかったのでどこかを借りなくては、と考えていた。インターネットでも練習場をいくつか探し当てたが、ちょうど夜に一緒にディナーをする約束をしていたCさんにそのお話しをしたら、お兄様の教会にあるピアノ(スタインウエイ!)で弾けるように、アレンジして下さいました。こんなにすぐにピアノを弾けるようにして下さって大感激、大感謝!
夜、会うはずだった約束を繰り上げて,教会で待ち合わせ。クリスマスツリーが飾ってある横に大きなスタインウエイのピアノがありました。教会は暗く静かで、クリスマス前と云う事もあり、お祈りにいらしている方が一人、二人。ピアノの「練習」をするのは気が引けたので,出来るだけ静かで出来上がっている曲を弾き続けました(笑)。一時間半程で切り上げたが、やはり一人で久しぶりにピアノと向き合えたのは嬉しかった。ピアノを弾く事で自分がどこにいようと心が他では得られない落ち着きを取り戻します。逆にいうと、ピアノがないと落ち着けない人間でもあるという事だが...( 笑)。
素晴らしいキッチンでお料理
12月21日〜22日、デトロイト。
自分が全く興味のない街に行く事になると云うのは本当に不思議。それも自分で仕掛けた訳ではないご縁をきっかけに。本当に人生は自分では想像できないサプライズがあります。
デトロイトまで行って会いに行った弁護士のJ。6年振りとは思えない再会で、空港に向かえに来て下さったが、家まで帰る車の中で興奮しながら話し通し。全く時間のブランクを感じさせない。こんなに相性が良くて,デトロイトに住みながら出逢えたと云うのが本当に私は不思議でならない(笑)。人との出会いって本当に授かり物だな〜と実感してしまう。
Jはご主人様と子供5人(!)の大家族。長男のTは日本で会っていたが、子供が5人もいるとは知らなかった(笑)。18歳から上は30歳(位?)なので3人は独立してアメリカのあちこちに散らばっていたが、クリスマスと云う事で、私が着いた21日に全員が揃い、大家族と一緒に過ごす事に。
とにかく,私はこの家族に感激しまくり。とにかく仲がいい。それも表面的に仲がいいのではなく、けなし合ったりぶつかったりするもするのだが、お互いに対しての並々ならぬ愛情が感じられるので、とにかく一緒にいて気持ちがいい。こんなにも愛に溢れた家族も珍しいと思う。そして、この環境の中で育ったからこそ、一人一人の人格がまた素晴らしい!一つ一つの言葉や行動にとにかく愛を感じる。そして、みんなが本当に温かく私を迎えいれてくれた事も本当に大感激。Jとゆっくりと話せた事も楽しかったが、今回の旅はこの子供達と会えた事が何よりも楽しかった。とっても素敵な家に住んでいて,部屋数も多いのだが、どの部屋に行っても必ず誰かと誰かが話していて、すぐに話に加わらせてくれる。本当に一人一人の子供達と話す機会があって、「知り合えた」という実感がある。
今回のアメリカ旅行の一番の出会いはこの家族でした。まさかデトロイトでこんなにも素敵な時間を過ごせるとは思わなかった。22日の午後に自動車のフォード車を創立したフォード家の素晴らしい家を観光しに行ったりもしたが、よっぽどJの家族と暖炉の前で話したりして過ごした時間の方が心に残っています。今回のアメリカ旅行のハイライトの一つとなりました。
(左)居間のクリスマスツリー。家の他の場所にも2カ所くらいあったように思う。
(中)Jがおばあちゃんから受け継いだというミシン。今は母娘共に使っているそう。
(右)ジャーマン・パンケーキ。外側がシュー生地のように膨らんでいる。朝食をみんなでレストランに食べに行った時に初体験。
デトロイトも雪
12月21日(月)。
デトロイトへ。2日前に降った大雪で前日はニューヨークからの飛行機が殆どキャンセル、とニュースでやっていたので、さぞ飛行場は大混乱と思いきや、意外と閑散としていて、飛行機も一時間だけ遅れて無事デトロイトに到着。デトロイトなんて全然行くはずではなかったんだけど...。
6年程前に父の仕事関係の弁護士さんJが日本に出張にいらっしゃいました。半分お仕事、半分休暇と云う事で息子さんと二人で来ていたのだが、一日鎌倉を案内する事に。初めてお会いする二人だったが、とにかくすぐに意気投合。本当に楽しい一日を過ごしました。その後、再び会う機会がなくメールのやり取りだけでしたが、一緒に過ごしたその一日は私の中でもくっきりと記憶に残っていました。
そうはいっても、今回のアメリカ旅行は目的が3つあって、それをこなすだけでも大変と思っていたので,デトロイトに行く事は全く考えていなかった。しかし、アメリカでも敏腕の弁護士さんと云う事だったので、もしかしたら出張でニューヨークに来る事もあるかも、と思いアメリカに行く事を知らせました。そこから急展開。「出張はないが、招待するからデトロイトに来て欲しい!」との返事。何週間もかけて綿密な旅行計画を既に練っていたので絶対無理、と最初思っていたのだが、毎日のように来るメールの猛アタックにこちらも心が動いた。そこまで会いたいと思ってくれるのだったら、と思い、他の友人達との約束を知恵を絞って組み換えて、デトロイト行きを可能にしました。
今回の旅行の一番の目的だった小学校の先生には結局,(先生の健康状態を考慮して)会えませんでした。この旅行の予定は先生に会うために全て計画立てたのだが...。しかし、逆に全然予定に当初入っていなかったデトロイトで本当に素晴らしい時間を過ごす事が出来ました。自分の思い通りにならない事もあれば、自分では予想もしなかった素晴らしい事も起こる事もある。自分の人生、自分で舵を取っているようだが、全然そうではないとつくづく実感。デトロイトでの時間は天から降って来たような「贈り物」でした。
←デトロイト行きの飛行機は42番ゲートなのに、41Bから43に通り越している飛行場内のターミナルの地図!助けになるどころか余計に不安をあおられる。
12月20日(日)。
朝、目覚めた時に急に日曜日である事に気付いた。それまで日付で毎日動いていたので曜日を考慮に入れていなかった。日曜日は教会に行く日。急にそれに気付いて,大慌て。まずはどこの教会に行くかも考えていなかった。ニューヨークに行くとアッパー・イーストサイドのSt.Igantius Loyolaと云う教会にいつも行っていたが、まず目が覚めたのが8時過ぎと云う事もあり午前中の御ミサには間に合わないと判断。おまけに翌日にはまたデトロイトまでの旅が控えていたので、夕方の御ミサは避けたかった。なので、出来れば午後の早い時間で,近くの教会が良かったのだが、この条件にぴったりの教会をインターネットで見付けた。なんて運がいいんだろうと思い、地図で見ると歩いて20分もあれば着きそうな所だったので、迷う事も考えて少し余裕を持って40分前に家を出ました。
外は素晴らしい青空が広がっていて、太陽がサンサンと照っていた。前日に降っていた雪がきらきらと輝いて本当にきれい。しかし、アパートの前はすっかり雪かきがされていて、芝が広がっている所はすっかり足跡と雪だるま作りの跡が残っていたので,前日夜中に手つかずの雪景色を見れたのは本当に良かった。
それにしても、雪かきされた所はいいのだが、されていない所もいっぱいあって、相当歩くのが大変。20分と見込んでいた所だったが、これは余裕を持って出て来て良かったとつくづく思った。地図で見る目標の教会の途中にも大きな教会があったが道の反対側にある上にあまりにも近かったので、無視してひたすら真っすぐ歩き続けた。しかし歩けども歩けども教会らしきものが見当たらない。御ミサの時間の1時は迫る一方で氷点下と云うのに汗をかきかき、苦労しながら雪の中を必死で歩いていた。
なぜこんなにも御ミサに行きたいのか、歩きながら、色々と自問していたのだが、やはり自分がいい精神状態でいるためには本当に必要な事なのだと実感。日本にいる時の生活でも、自分が精神的にあまりぶれないのは御ミサとピアノのおかげと思っている。特に旅行中と云うのは様々な人に会って、人から吸収するもの、街から吸収するものでどんどん心が豊かになったり、感覚や視野が広がったりして、本当に楽しいのだが、逆にいうと自分を見失う気がします。そんな中、やはり教会に行く事でまた自分をリセット出来るのです。ニューヨークに着いてからは、ピアノに触れる余裕がまだなかったので、どうしても御ミサには行きたかった。世界中のどこに行っても一貫したものに出会える教会には本当に感謝です。
そんな事を思って小走りになりながらも、教会が見付からないままについに1時になってしまいました。執着するのもいけないな〜と反省して、トボトボと引き返したのだが、人になんとなく「カトリック教会を探しているんだけど...。」と訪ねたら、実は最初に通り過ぎた大きな教会でした!地図が完全に間違っていた...。
なので、結局10分遅れで御ミサに授かる事が出来ました。教会の雰囲気も活気があって、神父様のお説教も日常生活と結びつくもので、とても身近に感じる事が出来て、本当に心の糧となる御ミサでした。これでまた一週間のいいスタートが切れました。心は完全にリセット!
Kちゃんが焼いた大きなケーキ!
12月19日(土)夜。
従妹のKちゃん&ボーイフレンドのAが自宅で友人達を招いてのディナー・パーティー。さすがに時差があるはず、と思っていたので眠くなったら先に寝させて頂くはずだったが、結局楽しくて彼らが帰るまで元気溌剌。久しぶりのロンドンでの友人達とのディナー・パーティの雰囲気を思い出しておしゃべりに花が咲きました。深い話が出来るので、どんどん興味が湧いて眠気もどこへやら、といった感じでした。
そして、昼間からサラサラと降っていた雪も相当本降りに。友人達が帰宅した後にあまりにもきれいなので、外に見に行こうという事になりました。大人な従妹のKは「私はいいや」と云うので,子供な二人の私とAだけが完全防寒して外へ。夜中の1時近く、誰にもいじられていない銀世界は本当にきれいでした。クリスマスのライトに照らされて,本当におとぎの国にいるよう。二人で大はしゃぎしてしまいました。
相変わらず仲良し家族
12月19日(土)昼。
以前からプログにも度々登場の生徒さんのご家族、C家。ニューヨークに夏に家族全員で引っ越してしまったので、数カ月ぶりの再会。アメリカに行く前から、一緒に過ごす計画を色々と立てていたが、早く会いたいという事で、急に会う事に。 (少し脱線するが、今回の旅行の一番の目的が小学校の時の先生に会うためでした。もうお年なので、やはりお元気なうちにと思い、わざわざ早い冬休みを取って、ニューヨークに着いた翌日にすぐにフィラデルフィアに行く予定だったが、アメリカに発つ前日に先生からお電話(skype)があり、疲れているので予定を変更したいと云う事でした。お正月明けに会う事にしたので、急にここ2日が空く事に。)
久しぶりに会うC家。やはりみな顔がニューヨーカーっぽくなっていた。鎌倉ののんびりとした空気の中にいる時とは違う、キリッとした緊張感があって皆(お母様も含め)かっこ良くなっていました(笑)。
「鎌倉はどう?」と聞かれると、こちらは「何も変わりないよ」としか云えなかったが、C家の生活は一変。学校の話やニューヨークでの生活の話など、本当に皆それぞれに一生懸命頑張っているんだな〜と実感しました。自分もコンサート前は過度に緊張感のある生活をしているのだが、コンサートがない時でも、もう少し自覚を持って生きなきゃいけないな〜とつくづく思ってしまいました。
ランチはユダヤ系ダイナーに。巨大なオニオン・リング(と〜っても美味しかった!)に超薄切りビーフのサンド(ここまで詰めてくれなくてもいいのだが...笑)。そして「赤いベルベット・ケーキ」。どれもこれもが心踊ってしまうメニューでした。
ニューヨーク到着翌日(12月18日)夜。
昔からの家族の友人Jがビレッジの方でスタンドアップ・コメディーをやると分かったので,急遽見に行く事に。Jはもともと「Life」マガジンの記者で超エリートの道を進んで来た人だったが、40歳位(の時だったと思う...)に急にコメディアンになる決意をした異色の人。ご主人様も子供二人も皆ハーバード大学出のエリート家族の中で、本当に凄い決断をしたな〜と思わされる。
そんなJが今回コメディーをやったのが、場所的にもあまり治安の良くなさそうなハワイアン・バーの奥。最初は「来ないで,来ないで!」と云っていたが、今まで彼女のコメディーを見る機会がなかったので、無理矢理押し掛けた。話を聞くと、年末に1000人以上のパーティーでやる事が決まっているので、その前に新しいアイデアを試したいためにこの小さな所でやる事にしたらしい。自分のコンサートと同じだな〜とつくづく思ってしまう。
怪しげなバーを通り抜けて、入った奥の部屋は15人も座ればいっぱい。お客さんは私と従妹含め5人もいなかったように思う。出演者も一緒に座っているので、今ひとつ正確な数が分からないが、出演者の方が数が多かった...。
スタンドアップ・コメディーは日本の今で云えば、お笑い芸人でしょうか。一人でマイクの前に立って、ジョークを云ってお客さんを笑わせる。エディー・マーフィー、ロビン・ウィリアムス、スティーブ・マーティン等は皆スタンドアップ・コメディー出身。
今回のショーは出演者は6人程。ライブバンドもあって、盛り立ててくれる。
初めて見るJは普段の落ち着いた感じのJとは全然違って本当に生き生きとしていた。いつもの何倍ものエネルギーを舞台から放っていて、暗〜い怪しげな場所ながら、彼女は本当に輝いていてきれいだった。いつも思うのだが、自己実現をしている時の人の姿は本当に美しい。
ショーが全部終わった後におかしなおかしな抽選会があり、一等賞が当たってしまった。舞台に呼ばれて、2008年のカレンダーやスペイン語の雑誌,何の料理に使うのか全然分からないイタリアの粉等、とっても役に立ちそうな物を頂きました(笑)。なんだかニューヨークに着いた翌日なのに、もうすでにこの不思議な雰囲気に違和感を感じていない自分が怖かった(笑)。本当に楽しい夜でした!!!
ニューヨーク到着の翌日(12月18日)。
ロンドンのアカデミー時代のTさんとランチ。地味なピアノとは違い、歌の彼女は大学時代も毛皮を着てたりするいつもゴージャスな雰囲気のお姉様だったが、性格はとっても気さくで心優しくて、そして関西人ならではの面白さでいつも笑わせて下さっていました。
そんな彼女は今は家族と共にマンハッタンに駐在。じっくりとマンハッタンの教育事情、ニューヨーカーの家族事情の話を聞く事が出来て、本当に興味深かった。情が深い彼女ならではの視点からの話に涙したり、大笑いしたり。心を頑にする事なく、しかしながら子供を守らなくてはいけない時には強くならなきゃいけない彼女のたくましさに感動しました。
ランチは日本のガイドブックで見付けたベジタリアンの老舗的レストラン「Candle Cafe (キャンドル・カフェ)」。彼女の家の近くだったので選んだのだが、5年も住んでいる彼女に「いい店教えてもらった〜」と逆に感謝された(笑)。ヘルシーでメニューも豊富で美味しくてお店の雰囲気も良くて、全てに大満足。アメリカ旅行のいいスタートが切れました。
ニューヨークは一般的に食事が美味しいと云われているが、私は特に小さい頃にアメリカに育ったせいか、さらに全てのものが美味しく懐かしく感じてしまいます。昔食べたあま〜いお菓子も健康に悪そうな物も行く前から楽しみにしちゃっています。
ニューヨークに行く前からまず楽しみにしているのが、自分で作るサンドイッチ。日本もこんなに世界中の食材がありながらもこのサンドイッチは作れないのです。
まずはパン。ワンダー・ブレッドという白い食パン。そのしっとりさと柔らかさと軽さがどうしても他の国では見付からない。。。私が小さい頃から売られている定番のパンだが、何日経ってもパサパサにならないし、カビも生えない。まさにワンダー(不思議)なパンです。(きっと身体に悪い物がいっぱい入っているんでしょう...。)
Hellmann`s(ヘルマンズ)というマヨーネーズを塗ったら、中身は超薄切りのハニー・ロースト・ハム(蜂蜜でコーティングしたハム)に超薄切りスイス(エメンタール)チーズ。この超薄切りと云うのがニューヨークのデリの特徴で、デリ・カットと云う名前で売っている。この薄さがとにかく美味しさの秘訣。
これを最初に食べる時が何とも幸せ。いつも期待して食べるのだが、その期待を上回る美味しさにいつも感激してしまいます。面白い事に今回、保育園時代からの友達に会ったら、この同じ組み合わせのサンドイッチを作ってくれて、「私もこの組み合わせが一番好き!」と云ったら、「ハムはスイス・チーズ、ターキー(七面鳥)だったらProvolone(プロヴォローネ)のチーズが最高の組み合わせよ」と教えてくれた。ニューヨークに戻って来た時に早速作ったら,本当に美味しかった。ニューヨークに行く時のまた新たな楽しみが出来ました。
↑有名なスーパー”Fairways" 。店員がきびきびと働いているのが何とも気持ちがいい。アメリカに着いた日に行ったが、一気にニューヨークに来た実感があった(笑)。
K&A そしてフランスパン(笑)
今回のアメリカ旅行は移動が多かったので、ニューヨークにいたという実感が実はあまりない(笑)。おまけに人に会う事が多かったので街と云うよりも人の印象がやたらと強い。
移動が多い今回のベースとなっていたのが、マンハッタンから20分程のクィーンズに住んでいる従妹とフランス人のボーイフレンドのお家。あちこちから帰って来ては温かく迎え入れてくれて、本当にホッと出来る場所でした。
アパートには本物のクリスマス・ツリーも飾ってあって、外では雪まで降ってくれたので3人でとっても素敵なクリスマスを過ごす事が出来ました。クリスマスの朝は子供のように、3人でパジャマのままサンタが持って来てくれたプレゼントを開けて(笑)。
今回の旅行がハード・スケジュールにも関わらず、疲れも出ずにスムースに全ての事が運んだのは本当に従妹のKちゃんのおかげ。本当に大感謝でした。
素敵な帽子屋さん
日本のお店のショーウィンドーは無難にセンスが良いような気がする。大感激する事も少ないが、「これは何?」と思う程ひどいものもないように思う。
(ちなみに日本で一番好きなウィンドーは銀座の資生堂ビルと和光。)
イギリスはそこへいくと本当にセンスの差が激しいように思う。小さなお店でも、うっとりするようなウィンドーもあれば、全然やる気のなさに笑ってしまう所も。ロンドンでいつもその斬新さにハッとさせられるのが、「Harvey Nichols (ハーヴィー・ニコルズ)」というファッションビルと紅茶で有名な「Fortnum&Mason (フォートナム&メーソン)」。素敵すぎて、見ずにはいられません(笑)。
そうかと思うと、「ウィンドーない方が...。」と思うお店もいっぱい。今までで一番ショッキングだったのはブライトンの目抜き通りにある古本屋。相当大きなお店で壁全面がガラス張りだが、本が山積みと云うよりも、山となってそこら中に散らばっている。おまけにプライトンに住んでいる友人に聞いたら、何十年とそうなっていって、それで有名な本屋らしい。衝撃がありました(笑)。
これだけセンスの差があると、ショッピングをしなくても、ウィンドーを見ているだけで相当楽しめます。それぞれにそのお店の個性というか、そのお店に携わっている人間を垣間見ているようで本当に面白い。
←ベッドのお店
何もかもがおかしい...。
ケーキ売り場
イギリスの豪華なデパートと云ったら、やはりハロッズになるだろうか。以前は伝統的な感じのお店だったが、やはり1〜2年前までのロンドンのバブル景気と経営者の交代で相当趣向が変わってしまった気がする。しかし、相変わらずいつも感激するのはFood Hall (フード・ホール)と呼ばれる食品売り場。とにかく室内が素晴らしい。良く写真を撮っている人がいるが、本当に芸術的に美しい。床も壁も天井も装飾してあるし、ショーケースも並んでいる食材の数が半端でないので本当に豊かな気分になってくる。
チーズだけでも100種類以上は並んでいるように思う。肉、魚やソーセージやケーキ、チョコレートや紅茶もしかり。見ているだけでとても勉強になります(笑)。日本も世界中の食品が手に入って凄いと思うが、ここの食材そのものの充実には目を見張るものがあります。
←チーズ売り場
とてつもない数の種類が並んでいる。
聞いた事も無いチーズの名前を見ていくだけでも面白い。
ロンドンにいくつかデパートがあるが、それぞれに個性がはっきりしていて楽しい。
客層を絞り込んだウィンドウのディスプレイや内装は本当に見事。Oxford StreetにあるSelfridges(セルフリッジ)は数年前に大改装をして、最先端路線の相当ヒップなお店に変わり果てた。本当に洗練されていて、デパートなのに天井も高い上にスペースを贅沢に取ってあるのでぶらぶらと歩き回るだけでも楽しい。
超派手な外のウィンドウとは対照的に内装はシックでモダン。
冷たい感じにならないのはユーモアのセンス?ピンクの鎧がかわいい(笑)。
シャンデリアや壁に直接書いてある絵のデザインもとっても素敵。
右端で頑張っている(笑)
イギリスに来ると毎回何かしら新しい発見があります。昨日のブログのように、ずっと変わらないものもあれば、進歩も常にある国のような気がします。
今回の旅行での一番の驚きはテレビから来ました。
MTVのようなミュージックビデオばかりを流すチャンネルがいくつかあるが、その一つがある時間帯に手話付きのものを流していました。聴覚障害の方に音楽を体験出来るように色々と考えられて来ている話は耳に入って来るが、ミュージックビデオの歌詞を手話で伝えるという発想には驚いた。手話をしていたのは男女一人ずつだったが、ノリノリで踊りながら手話してくれるので、きっと音が聴こえなくても相当ノレる気がします。
障害のある人が社会の中で確固たる地位を持っていて、いかに健常者同様に充実した生活を送れるように出来るかに当たり前のように力を注いでいる国ならでは、と本当に感動します。
←ぽっちゃりしたおばさんも踊りながら手話。
楽しい(笑)
ドアに貼ってある開け方説明
イギリスは一見、合理主義のようだが、逆に「こんなに不便なのに!」と思う事がずっと改善されないことも多々あってそのアンバランスさが面白い。
タクシーに関しては、あの有名な「ブラックキャブ」というのは何十年と形が変わっていないらしいが、理由は改善する必要がない程に完成されているかららしい。確かに、中は折りたたみの椅子が二つあるので、最大人数は5人まで乗れるし、人が多くない場合は大荷物が乗せられる程に広々としている。
一つ不便でいつもどうにかならないものか、と思うのが銀器のティーポット。取っ手の部分まで銀なので暑くて持てません(笑)。なので、みな布ナプキンで柄をくるんで注いでいます。それも、何だか優雅な気分にはなりますが...。
そして、毎回イギリスに来て「まだこういう電車もあるのか!」と驚いてしまうのが、自分で開けなくてはいけない手動ドアのもの。もちろん電動式の自動ドアの電車も大分見掛けるようになったが、今回のヘレフォードから帰って来る電車はこの手動ドア付きのものでした。実は、このドア、中からは開けられません。どうやって開けるかというと、何と窓を下げて、外に手を出してドアの外側に付いている取っ手を回すのです(笑)。初めてイギリスに来た時はそのやり方が分からず、危うく降りるはずだった駅で降りられなくなりそうになったが、今では説明書きが貼ってあります。(おまけに注意書きには「駅によっては電車よりもプラットホームの方が短い場合もあるので、プラットホームがある事を確かめてからお降り下さい」と書いてある。笑)この電車に乗るとイギリスにいる実感がします(笑)。
←外側にしかないドアの取っ手
しつこいようだが、またさらに一昨々日の続き(笑)。
日本に帰国後にさらに自分の反省点を浮き彫りにしたテレビの番組を見ました。
白隠禅僧が生涯を通して描いたダルマ像を取り上げた番組だったが人生を歩んで行く上での発展が絵に表現されていてとても面白かった。一番興味をひいたのは、若い頃には描かれていなかった「心」という字が絵の一部として描かれている事。解説の中で、「彼は一生、心の真理を追究し続けた」と云っていたが、まさに自分が今回最後の最後でおろそかにしていた事だったと思います。
このブログを書くのに、百隠の事をちょっとネットで調べてみたが、五百年に一人の名僧だったらしい。悟りを開いても、尚も修行を続ける重要性を説いたらしいが、本人は36回も悟りを開いたと書いてあって思わず笑ってしまった。この一生で一回ですら悟りを開けなさそうなのに...(笑)。
コンサートの準備や練習自体をおろそかにしていた訳ではないが、内容に問題があった。いつでも「真理」を追求し続ける事を忘れないようにしなくては。
昨日書いたブログの続きになるが、日本に帰ってからコンピューターの前に座ると、以前に書き記したメモにはっとしました。書類がごちゃごちゃしていながらも、すぐに目に付く所にあって、今回のコンサートの反省点を言い当てていてびっくりしました。何から書き写したのかさえも覚えていないが、今後同じ過ちを繰り返さないようにしたい。(日本語と英語と両方を書き留めていたが、英語の方が原文の気がします。)
「何をするにも旅を続けて、行き先に満足するな。どこかで満足したら、それで終わりだ。
可能性は現状より大きい」
"Whatever you do,always travel
but never agree to arrive anywhere.
The minute you think you've got it
then you're gone.
Because it's always bigger than whatever you have."
Primrose Hill
ロンドンにいる間に一回だけレストランへ。Primrose HillにあるOdettesというモダン・ブリティッシュの素敵なレストランに友人のTが招待してくれました。
コンサートも聴きに来てくれて、直後に色々と話したお陰で自分の中で今回のコンサートの事が頭の中で整理出来始めていた。今回のディナーは少し間を置いていた事もあり、コンサートの夜に話した事も消化した状態で再び話し合えたので、色々とクリアになった事が多かった。
実は、今回のコンサートの自己評価と云うのが珍しく出来ないでいた。いつもは観客の感想や反応とは別に、自分が掲げている目標や目指している物に対して、どれくらいの事が出来たかで自分の評価を出せていたが、それが今回は自分の中での出来不出来の実感がなかったので不思議に思っていた。
しかし、これもTと話して謎が解けました。今回のコンサートはいつもとは違う準備の仕方をしていました。というのも、曲数が多いだけでなく新曲も多かったので、「弾き込み」という名目で最後の2週間程は細かい練習よりも「通して曲を弾く」という練習が多くなってしまっていた。これもとても必要な事だが、この練習に満足していたがために掘り下げるという作業を(今振り返ってみると)おろそかにしてしまっていた気がします。Tもこのような練習をしてレッスンに持って行ったら先生に「何かがおかしい...。」と云われ、結果的に演奏としては安心感は得られたものの「失ったものが多すぎた」と云っていた。自分もまさにその道を歩んでしまった。
クラシック音楽の凄い所は、音楽の中の意味(真実)は幾ら追求しても追求し切れない所にあると思っている。「今日、ついにこの真実に辿り着いた!」と思っていても、明日にはまた明日の真実が出て来るのである。おまけに今日のうちに、今日の真実を追究し切ろうとしない限り、明日の真実も出て来ないので毎日が一生懸命である(笑)。
今回の失敗は、コンサートの2週間程前で、私はこの追求をもうやめてしまい、その時点で辿り着いたものを固めていく方向でコンサートに向かってしまった。結局、演奏としての完成度を目指し過ぎて、守りに入ってしまったのです。鮮度が命だった自分の演奏とは違うものを目指してしまい、そしてさらに最終的な完成度もいつもとあまり変わらなかったので、自分としては評価のし所がなかった訳です。もちろん今後のコンサートにこの経験は生かせるので、無駄な事ではなかったと思っているが、珍しく後悔の念の残るコンサートとなりました。(いつもは反省はする事はあっても後悔する事はほとんどなかった...。)
自分の演奏を良く知っている友人との交流で、自分をもっと良く知る事が出来ます。音楽の道は長く、迷ったり、道を間違えたりもするが、信頼できる友人の導きによって自分の目指している道を再発見する時もあります。全然音楽的なタイプは違うのに、お互いの音楽を尊重して、励まし合える仲間がいて、本当に感謝です。
Tと話せたお陰で、今回のコンサートをしっかりと整理して心と頭に留める事が出来ました。コンサートの内容自体は大きなステップとはならなかったとしても、今回学んだ事は次のコンサートのための大きなワンステップになったと思っています。
せっかく来たロンドンなので、唯一夜に予定を入れていなかった日に演劇を観に行く事に。
今回はA.ミラー(マリリン・モンローの夫としても有名)の「A View from the Bridge」という近親相姦を匂わせる愛憎劇。主人公の役者Ken Stottに対しての批評が素晴らしかったので、この劇に決めたが、本当に素晴らしかった(笑)。相当に深刻で重い内容だが、開演の前に「俳優陣は感情的にとても神経を使うので、どうぞ静かにご鑑賞下さい。」との放送があった。今までも色々と深刻な劇を観て来たが、このような前置きのアナウンスは初めて。
後から履歴を見たら、主人公が以前に映画で観て好きだった俳優だったのを発見したのだが、強烈な素晴らしい演技だった。
私は今回のコンサートを振り返って、色々と考えさせられる事があったが、その一つに準備の最終段階で相当精神的に辛くなってしまっていた事が気になっていた。こういう状態になってもコンサートをするべきなのかと自問自答していたが、このKen Stottの演技を観て、相当自分の中での答えは出た気がします。
色々な音楽家がいて、楽しく、日常生活の延長で演奏出来る人もいると思うが、やはり自分はそうではないし、自分が音楽に求めているのは、自分にとっては簡単に手に入る物ではない事を再認識しました。掘り下げに掘り下げて行って追いつめられた状態に存在する世界があって、そこに自分は感動したり、人が感動したりするのだと思う。
Ken Stottの演技には観客として大感動しつつ、「自分の魂も心もヘズッてまで毎晩舞台に立つのはさぞかし大変だろう...」と思わずにはいられなかった。本当に鶴の恩返しのよう。凄い俳優だと思う。彼を見て、「自分が求めている音楽もきっとここまでしないと辿り着かないのだろう」、と確信して、勇気が湧いて来ました。人をあれだけ惹き付けて、感動させられるものが今の自分ではまだ出来なくても、目指したいとは思う。
余談だが、この日は高校生と思われる子達が団体で来ていた。あれはきっと学校の引率だと思うが、こんなに素晴らしい演劇(内容も俳優陣も)をこんなに若い時から見れるというのが本当にうらやましい。選択肢のいくらでもあるロンドンなのに、こんなに深刻で重い内容のものを選んでいるところも凄いと思う。終わってからの観客全体が興奮状態だったが、年齢問わず、ずば抜けて良い物はちゃんと伝わっている事を目の当たりにしました。
イギリス人としても大きいJ君
ヘレフォードからロンドンへ。コンサートが終わって、帰国まで4日間。飛行機がいっぱいで希望日が取れなかったために、結果として余裕のある日程となりました。
「少しゆっくり出来る!」と、思っていたにも関わらず、やはり色々な人に会っているうちにあっという間に時間が経ってしまいました。
代子のIちゃん、J君家族にそれぞれ会いに。数ヶ月毎にしか会えないので、その成長振りにいつもはっとさせられる。Iちゃんは学校の宗教の宿題のリポートをすらすらと万年筆で夕食を食べながらあっという間に書き上げて、私も知らない事を色々と教えてくれました(笑)。
J君は会った途端に「もうすぐ同じ背の高さになるね!」とはしゃいでいた。今、学校ではスター・ウオーズ(クローン戦争?)が大流行りらしく、家ではずーっと仮面をかぶったまま。顔があまり見れなくて残念(涙)。こちらも事細かに、スター・ウオーズの登場人物を教えてくれたので、相当新しい知識が増えました(笑)。
そして今回どうしても会いたかったのが、オックスフォードに住んでいるF。去年の夏に会った時に婚約して、秋に結婚したF&Aに赤ちゃんが生まれていました。妊娠している事も知らなかったので、コンサートが終わった翌日に電話した時に発覚。相当びっくりしました(笑)。なので、「生まれたてで睡眠不足だから会えないかも...」と云われたにもかかわらず、「30分で帰るから、顔だけでも見たい!」と押し切ってオックスフォードまで会いに。
とにかく、ロンドンから毎日電車で郊外の方まで色々な友人達に会いに行っていたが、コンサートも終わって、思いっきり羽を伸ばせる楽しい時間でした。
二人から三人に!
Anne&Liz
今回のコンサートが可能だったのは、全てLizとLizのお母様Anneのお陰。二人にはお礼の云いようがない。Lizは大親友だが、本当に心から尊敬している人の一人。人生観や信仰心では見習うものが多く、自分の至らなさにハッとさせられる事が多い。
Anneもとても情熱的な人で、とっても上品ながら、テレビのスポーツ観戦で大声を上げて応援したり、結構きわどい冗談にも大笑いしたり、と本当に楽しい。今回は道を塞いでいたトラックの運転手にキレた話をしてくれて相当笑わせてもらいました。(英語でも「キレる(切れる)」という単語を使うのを知って面白かった。)
やはり信仰心が厚く、今回のコンサートでも教会でリハーサルをしていた時に、私のためではなく、私を産んでくれた母に感謝するためのロウソクを灯した、と聞いて本当に感動しました。信仰のレベルが全然違う...。
帰る駅のホームでお別れを云う時に、「友達のために、こんなにしてくれる人はなかなかいないよ。本当に有難う。」と云ったら、「誰だってするよ!」と云う答えが返って来た。誰だってしません(笑)。
自分の人生にこんなに人間的に素晴らしい二人がいる事を心から感謝している。自分もこういう人間になりたい...。
Lizの家と雲一つない青い空
一日でこうも気分が違うものかと思う程に心が軽い。
日曜日の朝なので、教会の御ミサに行くために8時に起床。3時間程しか寝ていないが、コンサートの無事をさんざん神様にお願いしていたのに、お礼にいかないのは都合が良すぎるので、頑張って起きました。しかし、気分はいいので全然苦ではなかった。おまけに、外は抜けるような青空。今回の旅での初めての快晴でした。
Lizのお母様が気を使って下さって、カトリックの修道院の教会へ連れて行って下さる事になりました。いつもは正教会に一緒に行っていたし、宗派にこだわる方ではないのだが、新しい教会に行けるのはやはり楽しみ。建物や神父様のお話等、やはりそれぞれの教会でカラーが相当違う。この日は太陽がサンサンと照っていたので、まずは教会内に入った瞬間に感激。窓から射し込んで来る光の美しさに大感動。本当に天国からの光が射しているようでした。お説教はあまりピンと来なかったが、皆で歌う聖歌のメロディーが何とも美しく、またまた感動。現代の聖歌だったが、みな心に響くもので、毎週こういう聖歌を歌っているのかと思ったら、つくづく羨ましくなった。なんで、こんなに音楽のセンスがいいんだろう...?
真っ青な空の下を車で帰って来て、家に着いたのが12時過ぎ。家には既に人がわんさか(笑)。Lizがコンサートのお手伝いをして下さった方達や聴きに来てくれた友人達を招いてランチ・パーティをひらいてくれました。総勢12人。年齢もまちまちだったが、約6畳程の部屋にみんなギュウギュウ詰めになりながら、わいわいと楽しみました。以前のブログで大人数で集まる場は苦手と書いた事があったが、この場では誰と話しても向き合って一生懸命に話してくれるので、本当に心から楽しかった。全てLizの手料理のランチもとっても美味しく、心もお腹も大満足。
午後5時頃に大体の人が帰宅。残った数人で散歩に行こうという事になった。ちょうどこの日に夏時間になったので日もまだ高く、とっても気持ちがいい。いつも「変な人がいるかもしれないから、遠くへはいかないで!」と云われた散歩コースの丘を初めて越えましたが、とってもきれいでした(笑)。心が許せる人達とこんなに美しい田園風景の中を散策できて、本当に幸せ。
夜はまた暖炉の前で、LizとLizのお母様、そしてアイルランドから来てくれたRobinと4人でゆっくりと。本当に静かな素敵な時間でした。話も一段落すると、ゲームをしようか、という話になって探偵ものの「Cluedo」というボードゲームをする事に。メモ用紙が配られる程に頭を使うゲームだが、夜も遅いし、3時間しか寝ていない脳には相当厳しいものが...(笑)。結局、3回ともRobinが勝ったが、ゲームをするまではとっても穏やかそうな性格だった彼の相当負けず嫌いな面が見れたのが面白かった(笑)。
1時頃に寝る事に。皆で、「今日は本当にいい一日だった!」と云い合っていたが、Robinが「今日が終わらないで欲しい」と云う言葉に、本当に共感。こんなに完璧な一日も珍しい。
今でもこの一日が自分をとっても幸せにしてくれています。ロンドンにこの後戻って、今は日本の生活にすっがり戻っているが、この日の事を思い出すと心が満たされて笑みが自然とこぼれます。コンサートまでは大変だったが、それがきっかけでこのような時間が持てたと思うと、本当に頑張って良かったな〜とつくづく思います。音楽そのものの力を信じているからこそ、一生懸命練習したり、精神的に自分と戦ったりするのだが、このような思わぬ付加価値も付いて来ると本当に嬉しい。新しい活力を得た、ヘレフォードでのコンサート滞在でした。
コンサートが終わって、ほっと一安心。
楽屋には前回のコンサートに来て下さった方達も何人か挨拶に来てくれて、嬉しい再会がいっぱいありました。子供連れで来てくれた方も多く、子供に「どの曲が楽しかった?」と訊くと、揃って「ブラームスのワルツ」という答えが返って来たのは意外でした。今回のプログラムでいちばん長くて渋い曲だと思っていたが、さすがイギリスだな〜と感心してしまう。全く関係のない3家族の子供に訊いたのに、みんなブラームスが好きと云ってくれたのは本当に嬉しい。自分としても、一番大変だったが、やはり今回のプログラムでは一番好きな曲。そう云う気持ちも伝わっているのかな...?
コンサートのプレッシャーから解放されて、気分は晴れ晴れ!打ち上げはLizの家でインド料理の出前。オーストラリアから予定を合わせて来てくれた友人のTやアイルランドから来てくれてRobin含め数人で打ち上げ。コンサート前はほとんど食べていないので、凄い勢いで皆とわいわいと食べました。
夜中過ぎに殆どの人が帰ったり、寝たり。友人のTだけが残って、二人で暖炉の前で延々と音楽談義。コンサート内容の事だけなく、コンサートまでの準備や曲の作り上げ方等を朝の4時まで語っていました。この時に話した事が色々と後々になって考えさせられる事になったのだが...。
Tが帰る時に車まで送りに外に出ると、満天の星空。外の気温がマイナス4度で空気が澄み切っている上に周りには全く外灯もないので、本当に星が降り注いで来るようでした。あんなに凄い星空を見たのは、30年振り近い。大感動でした。
コンサートが終わって、友人達に囲まれて、その上にこの美しい満天の星空。こんな風に一日が終われた事に心から感謝。
3月28日(土曜日)
コンサート当日。窓辺にあった日めくりのカレンダーを見ながら、毎朝朝食を取っていたが、「いよいよ今日か!」という思いです。
教会の諸事情でリハーサルは朝の9:30〜11:30まで。ピアノが既に所定の位置に置かれていたので、照明の調整をしたり、暖房の感じや椅子の滑り具合を見たり。響きはとてもいいが、やはり高音が相変わらず気になりながらのリハーサル。調律で直る事を祈って...。
夜のコンサートとしては相当早いリハーサルだったが、これが逆にとてもいいようにはたらいてくれた。お昼をゆったり取って、それからは身体を休めるために昼寝。時間的に余裕があったので、たっぷり休めました。
しかし、午後の4時くらいに急に根拠のない不安感が。プレッシャーによる急な自信の喪失。「なんで私こんな事する事にになってしまったんだろう。私はこんな事出来ないのに!」という思いに悩まされる事に。本当に嫌な時間です。
しかし、これも不思議な事になんの理由もなく、5時にはすーっと気持ちも落ち着いて、心が急に静かに。不安感もすっかり消え、緊張感は残っていながらもコンサートに向かう心の準備は万端といった感じです。
6時過ぎに教会に到着。調律されたピアノを弾くと残念な事に気になっていた高音部はそのままでした。おまけに調律師はもう帰ってしまったので、もうどうする事も出来ません。
自分としては相当ショックだったが、コンサートで全てが完璧な状態でおこなえる訳ではないので、あまり執着しないようにして「出来る限りの事をしよう!」という心構えでコンサートに立ち向かう事に。こういう切り替えも本当に大切です。
あとはこの場で、この時に、この状況で自分に出来るベストの演奏をするのみ!
丘の上へと登って行く道
前日に自分の精神的な引きこもり状態を反省して、出来るだけ外に出るように努めてみました。午前中の練習が終わって30分、午後の練習も終わってから30分は散歩。
友人Lizの家から10分程歩くと丘を登って行く所があり、見晴らしがいいのでお散歩コースにしていました。散歩に行く時にLizは「独りで行きたい?それとも一緒に行く?」と毎回訊いてくれる。毎回訊いてくれる所が実は凄く有難い。コンサート前は自分でも精神状態があまりコントロール出来ないので、一人でいたい場合と反面妙に人恋しくなる事もあるので、その時々で独りで行きたい時と一緒に行って欲しい時が変わってしまう。いつもどちらの要望にも応えようとしてくれるLizには本当に心から感謝。
今回は結局毎回一人で行っていましたが、一番最初に一人で散歩に行くと行った時にLizが「あまり遠くに行かないでね。変な人がいるかもしれないから。」と云うので、殆ど家の近辺で人を見掛ける事がなかったので意外に思い、「具体的に変な人がいるの?」と訊いたら「うん、一人いる」と云う返事。急に少し不安になってしまったが、めげずに行く事に。「杖、持って行く?」と云われ、「なんで?」と訪ねたら、「追い払えるように。」という返事。全然安心感が得られない...。なので、本当は1時間くらい掛けて遠くまで行きたい所を30分くらいにとどめていました。 Lizに毎回「転ぶのは禁止だよ」と見送られながら(笑)。
コンサートまであと一日。「やっとここまで来たか!」という思いで美しい風景を見ていました。
3月24日(木曜日)
コンサートの行われるHoly Trinity Churchでのリハーサル。
昨年の夏振りに訪れた教会は記憶に残っていたよりも小さく感じました。ここ数ヶ月の準備期間中、「相当大きな教会」という考えの元に音楽作りをしていたので、どんどん想像が膨らんでいたよう。なので、ちょっと安心。「空間を埋め尽くせないかも」、という不安はなくなりました。
そして、ここのピアノを弾くのは2年振り。低音はとても良く鳴っていたし、相変わらず音色も暖かみのある美しい響きだったが、とても重要な高音部の一オクターブの音が全然鳴らないのが相当気になった。高音部が飛ばせないのは相当に苦しい。これによってスケール感が小さくなるだけでなく、盛り上がりに相当影響が出て来るのだが、これは自分ではどうする事も出来ない事なので、当日のピアノの調律師にかけるしかない。いじって欲しい音を全部書き出して、音がもう少し鳴るようにしてもらう事にしました。
リハーサルは夕方の4:30〜6:30までしたが、夕日の差し込む教会はとても静かで、楽しむという訳にはいかないが、やはり演奏にプラス・アルファーのものが付いた充実した時間となりました。
教会でのリハーサルも無事に終わって、少し心に余裕が。
帰って来た時は夕暮れ時で、まだ日があったのでお散歩する事に。考えてみたら、この前日の2日間、閉じこもって練習していたために日のあるうちは一歩も外に出ていなかった(笑)。気付いていない所がまた恐ろしい...。
家から10分程歩くと素晴らしい景色が広がっていて、この2日間、自分をいかに追い込んでいたかを痛感。目の前に広がる大きな世界と、新鮮で美味しい空気をいっぱい取り込みながら、自分の小さな世界に閉じこもらないように気をつけなくては、とつくづく反省。新しい活力を得て帰って来ました。
コンサートまであと二日。最後の一週間の一日一日がつくづく重い...。
暖炉のある素敵な「Jules」
コンサートのお手伝いをして下さるGillのご招待でWoebleyの村までディナーに。Woebleyはとても小さな村なのに、招待されたレストラン「Jules」というのが相当グルメな所。前菜、メイン、デザートそれぞれに20種類近くの選択肢があるので、メニューを見ているだけでも楽しい。おまけに日替わりという所が凄い。ヘレフォードに来る時の大きな楽しみの一つです。
オーナーのシェフと奥様とはもう顔見知りで、コンサートにもいつも来てくれています。ヘレフォードでの一番最初のコンサートでは一番前の席に二人で陣取っていて、終止厳しそうな顔をしていた印象があったのだが、今回会った時に「あの最初のコンサート、とっても素敵だった!」と云って下さったので何年か前の事ながら、ほっとしました(笑)。今回はコンサートが土曜日という事もあり、コンサートには来れない事が分かっていたが、店内にはリサイタルのチラシを貼って下さっていました。応援してくれていて、本当に嬉しい。
←コーヒー・リキュール掛けのチョコレート・ムース
友人宅の前庭にある満開の桜
3月23日(月)ヘレフォードへ。
ロンドンから電車で3時間。いつも思うのだが、この3時間が全く長く感じられない。美しい田園風景を見ている間にあっという間に着いてしまう。
今回はフル・リサイタルの上、移動も多いので日程的に余裕を持てるように計画しました。演奏に関しては日本で相当固めて来たので、これからの5日間は練習をしまくるというよりは、ベストの状態で弾けるように体調/精神状態を整えるための期間。
友人の家は丘の上にぽつんと建っているので、近くには家が3軒程ある他は見渡す限り平原が広がっている。本当に世間から隔離された状態なので、私にとってはコンサートまでの最後の数日間を過ごすには打ってつけの場所(笑)。
←これからしばらくお世話になる素敵なピアノ。
朝は太陽の光がサンサンと入って気持ちがいい。
練習の合間にふと外を見れば、鮮やかな緑と広い空。
贅沢な環境の中での練習となりました。
ロンドンに3月21日の夕方到着。飛行機が相当揺れて、怖い思いをしたが無事にヒースロー空港に定刻通りに着きました。町中までの外の景色は水仙や桜が満開に咲いていて、既に春の予感。リサイタルを控えているので、ウキウキ気分とはいかないが、やはりイギリスに戻って来るのは嬉しい。
少し休憩をしてすぐに大親友のDavidに会いに。彼に予約してもらっていた、ヘレフォードまでの電車のチケットを受け取るために約束をしたのだが、ロンドンに着いてすぐに友人に会えるのはとっても嬉しい。コンサート前はほとんど誰とも連絡を取らないので、彼と会うのは本当に例外中の例外。一時間程のディナーだったが、リサイタルのプレッシャーで重くなっている心が少しだけ軽くなりました。(軽くなり過ぎてもいけないのでそのバランスが難しい。笑)
3月22日
(ロンドン2日目)
朝11時からいつも行っているBrompton Oratoryのカトリック教会へ。光がいつもにも増して差し込んでいてその美しさにも心打たれたが、やはり音楽が素晴らしくて大感激。おまけにリサイタル前で、感情的に過敏になっているせいか、何回も感動して涙する事も(笑)。聖歌隊だけなく、オルガンの独奏も素晴らしく本当にオーケストラーを聴いているようでした。聖歌の中で「聖霊が下って」という言葉を歌う時のオルガンの音が本当に天から何かが降りて来たような気がして、はっと上を見上げてしまう程に素晴らしかった。
残念なことに、お説教は今回あまりインスピレーションを受けるものではなかったが、それでも心が満たされる御ミサとなりました。
午後はいつも練習しに行っているHolland Park (ホランド・パーク)にあるLizの家へ。
時差で朝5時から起きているので、集中した練習が出来るか心配だったが、やはり弾き始めたら全然大丈夫でした。3時間の予定だったが、4時間程で切り上げて、後はLizと少しお話。Lizは夏のブログにも登場している、芸術面でとてつもない知識を持っている人。今回もギリシャの話から発展して、私が20年近く前の超マニアックな「カオス・シチリア物語」という映画の話を持ち出したら、「私が最も好きな映画のエンディングの一つ」と大興奮してすぐさま共感してくれた。おまけに私が持ち出した話だったのに、私よりもよっぽど内容を覚えていた(笑)。またまた大尊敬。
いい練習が出来たので、気分よく一日が終わってくれました。体力も残っていたので、水泳をしにプールに行こうかとも考えたが、ここに来て風邪をひいてもいけないと思い断念。コンサート前はとにかく「風邪、病気にになってはいけない、けがしてはいけない、事故に遭ってはいけない」と何かと神経質になって来るので、色々と断念する事が多くなる(笑)。
翌日はいよいよヘレフォードへ。とにかくここまで、体調万全で来れた事に感謝。
桜が満開のイギリスから桜が満開の鎌倉に帰って来ました。
今回のコンサートは色々な意味で相当精神的に大変でした。演奏内容に関してはもう既にこれからしていかなくてはいけない課題が色々と頭の中で沸き上がっていますが、これはもう少し休憩してからじっくりと考えていこうと思っています。
いつも大きなコンサートの後はとてつもない空虚感に襲われるのだが、今回はコンサートを手伝って下さった方々や聴きに来て下さった方達と翌日に時間を掛けて過ごす事が出来たおかげで、全てを出して切ってしまった心に速攻で「愛」を溢れんばかりに注いでもらった感じです。コンサートをしたヘレフォードからロンドンへ、そして今、日本に帰って来てもその幸福感が続いています。コンサートを通して、自分にもこんなに大きな喜びが返って来る事に驚いています。本当に感謝です。
明日、ロンドンへ。
ここ数ヶ月、リサイタルのために相当の時間を掛けて来たが、ようやくここまで辿り着いたという感じです。何回も人に聴いてもらう場を作り、先週も最終的に全プログラムを友人・知人達に聴いてもらう事に。人前で弾く度に音楽的にしたい事が明確になり、最後のこの一週間はこれをもう固めていく練習となりました。本当に色々な人に支えられているんだな〜と実感していますが、今ではリサイタルがとっても楽しみです。良いコンサートになりますように!
アフタヌーン・ティーに招いて頂いたGreat Fostersはホテルにもなっていて、宿泊が出来るようになっている。普段の日常生活から離れて、本当に素敵な時間が過ごせそう。
エントランス・ホールの庭に面した一角のテーブルでチェスをしていらしたカップルがいました。まだ20〜30代の若い二人でしたが、ロウソクの灯りのもとで言葉を交わさず、真剣に勝負している姿がとても印象的でした。
チェスは出来ないが(笑)、カップルとして真剣に一緒に楽しめるものがあるのは憧れです。
先日テレビで(日本で)、キュウリの最上級のA級というのが箱の大きさに合わせて、きっちり50本入るかどうかで決まるというのを見て、相当がっかりした。味は全く関係ないそう。食べ物なのに、見た目だけで決めているんですね。
ロンドンにいた時に卵を買おうと思い、箱を開けたら(イギリスは割れてるのが入っている事もあるので必ずお店でチェックする)あまりに様々な色や大きさの卵が入っていて、笑ってしまいました。ここまで個性豊かだと楽しくなります。
見た目がきれいに揃っているのも大事かもしれないが、それで、評価が下されるのは、どうなんだろう...?
←ライオンの押し印がしてあってちょっと格調高い。
そこまで値段は高くなかったが...。
最終日に再びロイヤル・カレッジの図書館で調べものをしようと思い、たっぷり3時間取っておいたのに、月曜日で休館日でした。とっても残念...。しかし、時間が急に出来たので、フラッと近くの「Victoria & Albert Museum (ヴィクトリア&アルバート博物館)」に立ち寄る事にしました。
イギリスはとにかく物価が高く、今回の旅で相当痛めつけられたが、びっくりするのは美術館や博物館がただ、という事。寄付の提案はあるが、本当に短時間だけ見るには嬉しいシステム。2〜3回に1回の割合で寄付しています(笑)。
ヴィクトリア&アルバート博物館はロンドン市内でいつも行く教会に近い事もあり、よく立ち寄ります。今回もこの旅で3回目。この日は時間があったので、いつも行かないような所まで足を延ばしてみました。
この博物館は装飾美術を多く展示していて、大英博物館よりも華やかな感じがします。あちこちにコンピューターも設置しており、色々とインターアクティブに遊べて楽しい。
今回特に楽しかったのは、イギリスの昔の織物の展示室。コンピューターで昔の絵や模様を使って自分の好きなデザインを作れるようになっていました。モチーフや色、大きさ等を選んでいって、最終的にそれをプリントアウトしてくれます。見るだけでない楽しみがあって、本当に美術品や芸術作品が身近に感じられます。本当に文化の豊かな国ならでは、と感心します。
↑素敵な織物の数々 ↑大人も真剣。 ↑プリントアウトしたもの
猫が嫌いな訳ではないが、苦手なのは確か。その最大の理由がかわいがり方を知らないからだと思う。動物には基本的に好かれる方なので、猫も寄って来てくれる。撫でる所まではいいのだが、その引き際がよく分からない(笑)。犬だったら、構うのをやめたら、さっさとどこかに行ってくれるが、猫は撫でるのをやめると、「構って!」とまとわりついて来る。「もう忙しいから、今は構ってあげられないの!」と真剣に目を見て強い口調でいっても余計に追いかけ回される。この間、従妹にその話をしたら「猫にしてみたら、それは逆に遊んでもらえると思っちゃうんだよ!」といわれ、妙に納得した。「無視すればいいんだよ」といわれても、なかなかそうも出来ない...。構ってあげない事が段々と心苦しくなって、気が重くなる。という訳で、猫が苦手です(笑)。
G家のもう一匹の猫Tinker→
私の好きなネルソンとは逆に相当の甘えん坊(笑)
ソファーに座るといつもこんな感じで甘えて来ます。
無視しろといわれても.........。
昨日のブログを書いていて、急に思い出した事があった。
素敵な即興演奏をしていらしたオルガン奏者のMark。色々とお話していた時に、彼がやっている「Berakah プロジェクト」について教えてくれました。「Berakah」とはヘブライ語で「祝福」という意味らしいが、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の信仰をそれぞれに持っているミュージシャンで構成されているグループを作っていて、それぞれの音楽文化を背景に音楽も作曲、アレンジして演奏しているそう。イギリスでは、パレスチナ/イスラエル問題での反ユダヤ傾向、9/11以来の反イスラム傾向にあるのを、ミュージシャンとして何か出来ないか、という事で立ち上げたそうです。ライブももちろん、色々とやっているらしいが、学校等にも行って演奏し、子供達にそれぞれの文化についてお話しするそうです。おまけにホームページを見たら、主旨が凄いだけでなく、集まっている人達も実力派で、演奏が本当に素晴らしい!
宗教や人種、文化を越えて、存在し得る音楽は本当に素晴らしい。自分も音楽をする喜びを与えられて、本当に幸せだと思う反面、それがこの世の中にどのように役立っているのだろうかと、悩む事も多い。そういう中でMarkの携わっているプロジェクトの話を聞いて、同じ音楽をやっている人間としてとても嬉しくなるし、とても尊敬します。
テムズ川の脇に建っている小さな教会で、目立つ事なく謙虚にオルガンを弾いていらした人が、このような素晴らしいプロジェクトに携わっていて、本当に感動しました。
Isleworthの教会(英国国教会)
最後の日が素晴らしい青空だったイタリアから、とってもグレーなロンドンに戻って来ました。寒いし、雨は降っているし、気分が一気に変わる。それでも、またお世話になるG家に戻って来て、友人のMちゃんに迎えられると、やはり嬉しい。本当にロンドンは私にとっては第二(第三?)の故郷。
ロンドンに着いたのは土曜日の夜遅く。次の朝の日曜日は教会に行くために、少し早起きしましたが、寝室から廊下に出て、寝ぼけ眼に最初に目に飛び込んで来たのは「神は愛なり」の大きな文字。Mちゃんの叔母が書家だそうで、150センチ程の素晴らしい書が掛け軸になって壁に掛かっていました。朝一番に、強烈なインパクトがありました。
そして、G家皆と一緒にいつも行っている教会へ。(宗派が違うが私はあまり気にしません。)驚いたのが、ミサの一番最初の聖歌が「God is Love (神は愛なり)」!この聖歌自体歌ったのが初めてなのでこの偶然には本当に目を丸くして驚いた。相当強いメッセージとして受け止めました。
そういえば、ミサ中にオルガン奏者がお祈りのときの心情にぴったりの曲を弾いていらして、とても素敵だったので、ミサ後にその方にその旨を伝えて、「誰の曲?」と訊いたら「即興をしていた」というので驚いた。彼も信者さんだったので「お祈りの邪魔にならず、静かだけど心に響く音楽を心掛けている」と仰っていた。こういう所が、ヨーロッパの底力だな〜と思う。
←「God is Love」の聖歌。楽譜なしの聖歌集だが、皆完璧に歌っていた。凄い!
イタリアといったらやはり靴!
ショッピングはもちろん嫌いな方ではないが、基本的に物欲はないので、イタリアにいる時は、「したい事リスト」のかなり下の方に来る。今回は正味三日しかいなかったので、お店の空いている時間帯に街にいる事がなかった。
それでも、夜の街を歩きながらするウィンドウ・ショッピングはとっても楽しい。買わなくても、素敵なものを見ているだけで、十分満足感を得られます。
「CANALI」のディスプレイ→
トラディショナルながら一ひねりある紳士服。
男の人はおしゃれに無頓着なくらいであって欲しいが、紳士服を見るのは好きです(笑)。面白いのは色々な国に行っても、気づくと足を止めてまで見るお店が同じだったりする。東京でも、ロンドンでも「なんて素敵なんだろう!」と思ったら「CANALI」だった。
地図を持たないで歩き回る事が多いので、以前に良いと思った場所に再会するのがなかなか難しい。特にコモの街は小さい上に何回も訪れているのに、なぜか未だに把握し切れていない。毎回、新鮮でいいのだが(笑)。
前回訪れた時に、素敵な店構えのレストランを見つけたので、いつか行きたいな〜と思っていたが、その時は行く気分にならず、次回に見送りました。しかし、今回は最後の日の朝から行く気満々。楽しみにしていましたが、見付かるかも不安だし、お店自体まだあるかどうか分からない状態。
前回にコモを訪れたのはもう、4〜5年前。脳の中の遠い記憶と感覚だけを頼りに探し出したら、あっという間に見付かりました(笑)。こういう事もあるんですね。
←分かりずらくて申しわけないが、
ザクロとルッコラのサラダ。凄い量のザクロ!
最初はとっても美味しかったが、前菜なので、こんなになくても良かったかも(笑)
信仰は自分にとって大切なものだが、クリスチャン系の学校というものに行った事がないのでどうしても知識が足りない事を実感する事が多い。
今回もイタリア滞在中にちょうど聖母(マリア様の)被昇天祭というのがあったが、全然忘れていた...。イタリアでは休日になっています。
ホテルで朝食を取っていたら、アメリカ人の観光客数人が外から戻って来た様子で、先に食事をしていた友人らしき人達と合流。迎えた一人が「ミサはどうだった?」と聞いていて「素晴らしかったよ!」という答え。急に私もはっとして、[そう云えば!」と思い出しました。今回の旅では、土日は含まれていなかったので、ミサにはあずかれないと思っていたが、急に「行かなくては!」という気になりました。
観光案内所に行くと、コモのカテドラルでのミサの予定時間を全部印刷してくれました。朝もミサがいくつかあったが、時間が合わなかったので、昼間観光して夕方のミサに間に合うように帰って来ました。
コモには何回も来ているが、ミサにあずかったのは初めて。そういえば、フィレンツェでもそうだったが、ミサの間にお祈りをする箇所が歌になっていて、ミサが始まる前に神父様が事前にお手本を示して歌い方の練習をします。なので、ミサが始まると、事がとってもスムースに進んで行きます。(余談だが、イギリスの教会に行くと、聖歌集には楽譜は書いておらず、詞だけが書いてあります。音楽は自然と受け継がれているんですね。)
神父様の謙虚ながら威厳のあるミサには本当に、こちらも謙虚な気持ちになります。(全部イタリア語なので全然言葉は分かりませんが...。)信者さん達の信仰の姿勢や祈りも深く、あの空間の中で御ミサにあずかれたのは本当にラッキーでした。
イタリアは教会もとても多いが、カトリック国として良く目に付くのが聖母マリア像です。日本だと小さな鳥居やお地蔵様が道の脇にぽつんと立っている事が多いが、イタリアでは建物の壁や門等に聖母マリア像が置いてあったり、フレスコが描いてあったりして、良くお花が供えてあります。ふとこういう場所に出会うと、(一人で歩いて入る事が多いので)見守られているようでほっとします。
道の脇にあった水汲み/水飲み場と聖母マリア像→
人が全くいない所で迷子になりかけていたので余計に
嬉しい。問題解決になる訳ではないが(笑)。
ぶらぶらと歩いているだけで、周りの見るもの全てが美しい。太陽の光が強いのと、空気が乾燥しているせいで、全てが本当に色鮮やか。空や水の青さや、自然の緑の色も光り輝いているよう。
そんなセッティングで童話やおとぎ話に出て来るようなヴィラがあちこちに。観光スポットでなくても、本当に飽きずに何時間でも歩き回れます。こんな別荘に住んでいる人達が今でもいるんですね...。どんな人が住んでいるか想像するだけでも、本当に楽しい。世界が違い過ぎて羨ましいとも思わない所がいい(笑)。
コモ湖の山の上からの素晴らしい景色。峰沿いにずーっと道があり、少し先に展望台があったが、道の真下は直角に落ちる崖になっていて、柵といえば腰より低い3本の鉄の棒。景色も本当に素晴らしいのだが、展望台に至っては、美しさよりも怖さの方が先に立ってしまった(笑)。
展望台には私以外に3人組の男の人しかいなかったが、この絶景に相当興奮してしまったようで、終止はしゃいでいるだけでなく、なぜかずっと笑っていた(笑)。
大分前の事になるが、ジェットコースターが苦手な私が、友人に「どうしても一緒に乗りたい!」とせがまれ、押しに押されて乗った事があった。相当怖かったのだが、乗り終わったあとに、やはり笑いが止まらなくなってしまったのを覚えている。極度の興奮状態(恐怖感?)は笑いを引き起こすのだろうか...?
ケーブルカー乗り場
時間を気にする事なく、ゆったりと過ごせるのは、旅が楽しい理由の一つ。小さな街では特に地図もなく、当てもなく歩くのが本当に贅沢な時間に感じます。標識や人がいない方へいない方へと好んで歩いていってしまうので、迷子になったり、何度となく怖い目に遭わなくもないが、方向感覚は意外といい方なので、幸運な事に得るものの方が絶対的に多い。
コモは特に別荘地帯なので、歩いていると素敵なヴィラや庭園があったり、思わぬ所に教会があったりと、行く度に新しい発見があって本当に楽しい。
思わぬ発見があるのは楽しいが、地図を見ていないので、以前に見つけた素敵な場所でもどこにあったか思い出せなくなってしまうというマイナス点もありますが...(笑)。
コモの街から山沿いに登って行くケーブルカーに乗って山の上まで行く事が出来ます。数年前に初めて山の上まで行って、その後はぶらぶらとお散歩。観光客を避けて、住宅街へと入っていったが、道沿いにコモの街を見下ろせる場所を発見。そしてその周りには美しいヴィラが。車道でしたが、石が積み上がっている所に腰掛けて、美しいコモの赤い屋根屋根を堪能しました。
今回も同じ場所に行きたいと思い、またケーブルカーに乗って山の上まで行きましたが、このスポットにどうやって行ったかがどうしても思い出せなかった。あちこちを行ったり、来たり。最後はもうあきらめて、心新たにぶらぶらしよう、と。しばらく歩いていたら「見晴し台」の標識が。「以前と同じ場所かも!」、という期待感から歩き始めたが、相当の距離を歩いてもなかなか辿り着かない。おまけに途中で標識もなくなってしまったので、迷子になってしまったのかと、心配になりだした。その上、山の上なので緑もうっそうとしてきているし、他に歩いている人もいないので、怖くなって来た。一度あきらめ掛けて、逆戻りしたがもう少し頑張ろうと思い直して、また前進。楽しい旅行なのに、一人だとこういう心の葛藤があります(笑)。
しかし、緑の中の坂道を相当歩いた先にあったのはまさに絶景でした。急に視界が開けて、目の前に広がったのは湖と向かい側の山々。自分の大好きなコモ湖を一望出来て、本当に感激でした。
雨宿りに入った教会 ↓↓ 山の上の教会↓↓
イタリアは色々な意味で大好きで、いつかは(短くてもいいので)住んでみたいと常々思っている場所です。色々な理由があるが、やはり一番の理由は信仰のせいではないかと思う。
土地から流れている「気」そのものがキリスト教の歴史そのものを背負っているような気がして、何とも心地いい。教会はあちこちにあり、誰もいない事が多いが、教会の床や壁、すり減って黒光りしているような木の椅子やベンチからは脈々と続いて来た信仰の存在を感じずにはいられません。
外観は地味でも、中に入ると天井画や彫刻、装飾やパイプオルガンが素晴らしいものが多く、何とはなしに入った教会でも驚きを持って感動する事が多々あります。
そしてクリスチャンとしては「美しい」と思う以上のものを感じる事が出来るのは幸せです。
イタリアと云ったらやはりジェラート。空気が乾燥していて、暑いせいかやたらと美味しく感じる。おまけに種類もいっぱいで、3日しかいないのに全フレーバー試してみたくなってしまうので本当に困ってしまいます(笑)。
これでシングル!→
2種類まで目一杯詰め込んでくれます。
嬉しい(笑)。
コモ湖でも特にお気に入りなのが、湖にぽっかりと浮かんでいる小さな島、Isola C。緑がこんもりと生い茂っていて、レストランが一軒と丘の上の小さなチャペルだけがある島です。一周するのに20分も掛からないが、訪れる人も少なく、とっても静かです。数年前にここを発見して、今では必ず訪れる場所の一つです。
前回来た時は、一日ここでゆっくりと過ごしました。小さな湖岸があるので、お昼のパンとチーズとハムを買って行って、泳いだり、本を読んだり。ブラームスの書簡集の本を持って行ったが、本から目を上げて目の前の景色を見ると、あまりに美しすぎて見とれてしまうため、なかなか読み進められなかったのを覚えています。
今回は時間がなかったので、お散歩を一周する程度でまた次の目的地に行くために遊覧船に乗ってしまいましたが、この丘の上から見るコモ湖の絶景にはまたもや大感動。聞こえるのは蝉の声だけ。周りの緑と、湖の青が本当に美しい。私にとってはこの地上の天国と思える場所です。
お手製のジェノヴェーゼ・ソースの パスタ よそうのは男の役目(笑)
休暇中といえども、なかなか寝坊が出来ない(笑)。コモに滞在中に日帰りで、港町ジェノヴァの近くのボリアスコという街まで友人のAdriano家族に会いに。電車で3時間近く掛かるので、朝7:00過ぎの電車に乗って行きました。ボリアスコはAdrianoの実家のある場所だが今回で3回目。バルセロナに住んでいるAdrianoは予定を合わせて、イタリアに来てくれる事になりました。
海沿いの街だが、砂浜の海岸ではなく、海が切り立った崖に迫っているような所です。
初めてボリアスコに滞在した時、何回かこの海で泳いだが、結構こわかった。岩場から飛び込んでいくのだが、「波が入って来た時に飛び込んでね」と軽く云われても...。岩は相当ごつごつしているし、波も結構激しくて、相当勇気がいった。おまけに困ったのが上がる時で、同じように「波に乗って上がって来てね」といわれたはいいが、相当大きな波でないと体全体が押し上げられない訳だから、失敗すると岩に思いっきりぶつかる事に。いっぱい擦り傷やアザを作ったのを覚えています...(涙)。
2回目に日帰りで訪ねた時にも、けなげに水着は持って行ったが「今日は海が荒れていて、泳ぐのは無理だね」といわれて、内心とてつもなくほっとしました(笑)。
今回はAdrianoも2歳の娘を連れて来ていたので、海で泳ぐ事は最初からなし。緊張せずに会いに行く事が出来ました(笑)。見るだけなら、とってもきれいな海です。
←Bogliascoの海
泳ぐのに勇気がいる(笑)。
ベルギーからイタリアへ。私が世界で一番好きな場所、ミラノの北にあるコモ湖に。考えてみるとここに初めて来たのは、ベルギーの友人Erikと出会ったコンクールの帰りでした。コンクールで良い結果が出せず、相当落ち込んでいた時にこのコモ湖に来てそのあまりの美しさに魅せらて、長いため息をするように、気持ちが徐々に晴れ上がって行く感じがしたのを覚えています。
コモ湖は湖水地方の湖の一つだがあまりに美しいので、数年後に近辺の他の湖も3つ回ってみました。しかし、コモ湖は随一でした。海外のガイドブックを見たら、やはり「湖の中で一番ロマンチック」と書いてありました。自然の造形だけでなく、赤い屋根の建物や夢のようなヴィラ、教会の塔等が自然と溶け込んでいて、本当に身体中の力が抜けて行ってしまう美しさがあります。ここに来ると、自分の中の悪い「気」がすっかり抜けて新鮮な綺麗な「気」と取り替えてもらえている気がします。
残念ながら、今回はイタリアとしては珍しく大荒れの天気で、真っ青な空が見れたのは最後の日だけ。おまけに湖の真ん前の遊歩道が工事中だったので、いつもの雰囲気とは大分違ってしまいましたが、それでも、美しい「気」をいっぱいもらって来る事は出来ました。
ベルギーでのあっという間の滞在。とっても名残惜しかったが、次の目的地のイタリアに行くために空港まで友人が送ってくれました。
空港で目を引いた何ともシャレた標識「Kiss and Drive」。日本はどのようなシステムになっているか分からないが、ヨーロッパやアメリカは空港まで車で送る事が多いので、駐車場の他に短時間(5分程)停車出来る場所が設けてある場合が多い。荷物を降ろして、お別れをするだけの時間が許されている訳です。イギリスでは、「Short Stay (短期滞在)」と果たしている役割そのままの標識になっているが、ベルギーの空港ではそれが「Kiss and Drive(キスして走り去る)」標識に。キスが挨拶代わりにもなっているヨーロッパならでは。素敵だな〜...。(ベルギーなのに英語なのが不思議だけど...。笑)
ラヴェルのガスパールを
さらっと弾いてくれた(笑)
Erikとは実は2つのコンクールで一緒になったのがきっかけで友人になっているが、そのコンクールのメインだった作曲家がブラームスだった。私の一番好きな作曲家がブラームスだが、Erikも相当なブラームス好き。大いにイタリアでブラームス談義に花が咲いてすっかり意気投合してしまった。ピアノ/音楽に対する思い入れも似ていて、しょっ中会う訳ではないが、音楽的にこの人生を共に成長して行く同士の一人です。
人間的にも本当に素晴らしい人で、やはり同じコンクールで友人になった日本人のピアニストと先日話していたら「Erikって本当にいいやつだったよ。僕が全然英語話せないの分かっているのに、いつも声掛けてくれて、一生懸命会話出来るように頑張ってくれてた」というので、またErikの良さを再確認。こんな貴重な人と友人でいる事がとても誇らしい。
そんなErikと今回は5年振りの再会。「長過ぎるよ」といわれてしまったが...。数年前にとても悲しい事があり、一番辛かった時期に会いに行ったのが最後だったが、彼がその悲しみを乗り越えて、今までで彼を知っている中で一番幸せそうだったのが見れて本当に嬉しかった。
聴き入るマノンと私↓
彼が家族と一緒にいる様子を見ているだけでもとっても嬉しくなったのだが、何よりも感動したのはピアノを弾いてくれたとき。 弾いてくれる前にも色々と音楽の話で盛り上がっていて、「自分の弾き方が相当変わった。本当に自然に音楽が流れるようになってきた」と云っていたが、正にその通りだった。おまけに、大げさなように聞こえるかもしれないが、何だか魂が浄化されたような透明感が音楽にあった。本当に彼は悲しみから完全に脱却して、元気になれたんだな〜と実感。感動して涙が出て来た。
今回のイギリス/ヨーロッパの旅では本当に楽しい事や感動・感激した事がいっぱいあったが、今回Erikのとっても元気になった姿を見れたのが一番嬉しかった事でした。
幸せが私にまで溢れて来るErik家族 & お姉さん家族
仲良し家族
オランダまで迎えに来て下さったErikのお姉さん家族。人生で何が大切かを本当に良く知っていて、それを当たり前と思わず、意識を持って守っています。家族で過ごす時間をとっても大切にしていて、何よりも最優先にしているので、家族の絆が本当に強い。結婚の素晴らしさを本当に実感します。家の中に愛が溢れていて、一緒にいると私もとっても幸せな気分に。
今では13歳になってしまった娘と初めて会ったのは8年程前。驚いたのは、初めて彼らの家に遊びに行った時にちょうどその女の子のお友達が来ていましたが、「娘がマノンで、お友達がアイーダよ」と紹介してくれました。オペラの世界が本当に身近にあるんですね(笑)。
10年程前にイタリアのコンクールで親しくなったピアニストのErikに会いに行くため、ロンドンからベルギーのブリュッセルに2泊3日で行く予定を立てました。普通だったら飛行機で1時間弱で着くブリュッセルだが...。大変な目に遭ってしまいました。
イギリスというと、優雅にアフタヌーン・ティー、なんてイメージされるようですが、日常生活ではなかなかそう云う機会はありません(笑)。日本で云えば,お茶席に行くのと同じような頻度でしか,する事がありません。
しかし、今回、絵に描いたような素敵なアフタヌーン・ティーに招待されました。友人のOさんを通じてお友達になったMさんがロンドン郊外のEgham (エッガム)という所に住んでいて、家の近くの素敵なマナー・ハウス・ホテル「Great Fosters (グレート・フォスターズ)」でのアフタヌーン・ティーに招いて下さいました。
残念ながら雨だったので、ホテル内でのティーとなりましたが、庭の見える席でとってもしっとりとした優雅な時間を過ごせて,今回の旅の一つのハイライトとなりました。
結婚式があったようで、お茶を飲みながら、盛装した華々しいイギリス人達が庭を歩いているのを見ていると、本当に映画のワンシーンのようでした。
紅茶も銀器の大きなポットでたっぷりと。(日本はどうしてポットも小さくて,お湯もあんなにわざわざ少なくしているんだろう...?) サンドイッチ、3種類のケーキに大きなスコーンが2個ずつ!素晴らしい雰囲気の中、とっても豪華で美味しいアフタンーン・ティーを頂いて、心もお腹もいっぱい!
結婚式に来ていた女の子達。庭を走り回っている姿は妖精のよう!!!
Royal Academy of Arts
ヘレフォードからまたロンドンに戻って,早速展覧会を見にRoyal Academy of Arts (ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ)へ。デンマークの画家、ウィリヘルム・ハンマースホイの回顧展。とても物静かな絵ですが、数年前に友人のOさんがこの画家の絵はがきを送ってくれた事があり、心に残っていました。今回日本からロンドンに着いてすぐにこの展覧会のポスターを街で見掛けたので、行くのを楽しみにしていました。面白い事に、Oさんにこの展覧会の事を話したら「会社で招待券もらえるよ。私も行きたいと思っていたから一緒に行こう!」と云ってくれました。彼女が送ってくれたハガキの事は彼女自身忘れていたようだけど...。
ハンマースホイの絵は,独特の色遣いで、とっても地味ですが光の加減が素敵で何とも云えない味わいがあります。色のトーンは寂しげですが、妻の絵が多く,二人の静かながら深い愛の関係が伝わって来て,メランコリックな気分になります。
ちょうど、今この展覧会が国立西洋美術館に来ているようです。秋にぴったり...。
←今回の展覧会のパンフレットとOさんが送ってくれた絵はがき。日付を見たら8年前!
やはり心に残るものというのは何か縁があるんですね。
愛読書になっているC.S.ルイスの本
数年前にヘレフォードを訪れた時にLizがお誕生日にC.S.Lewisという作家の本をお誕生日にプレゼントしてくれました。彼が書いている様々な本からの抜粋を一日に1ページずつ読めるようになっているので、寝る前に取り出しては今でも時々読んでいます。
ちょうどこの本を頂いて、ヘレフォードからロンドンに帰る電車の中で読んでいたら,車掌さんが切符をチェックしに来ました。日本ではもう過去の遺物となってしまったが、イギリスではいまだに,切符にパンチで穴を開けていきます。そして,その時に返してくれた切符を見て感激。ハート形の穴が開いていました(笑)!!!後にも先にもハート形のくり抜きには出会った事がないのだが、この時の切符を今ではこの本のしおりに使っています。
右下に♥のくり抜きが
Byford Church
ヘレフォードに住んでいる友人のLizはとても信仰の厚いクリスチャン。その関係で,今までに彼女主催で教会のためのチャリティーコンサートを2回しています。一回目はByford Church (バイフォード教会)にあるフレスコ画修復のための資金集め、そして二回目はWoebley Church (ウェブリー教会)のためのチャリティコンサート。Lizはバイフォード教会の方にもともと行っていたらしいが,ミサに来る人が少なくなってしまったために,ウェブリー教会に合併されたようです。(両方とも英国国教会)
来年の3月にまたウェブリー教会の資金集めのためのコンサートをする予定ですが、場所はヘレフォードの街に近いHoly Trinity Church 。数年前にヘレフォードの街が新品のフル・コンサート・グランドのとても良いピアノを購入したらしいのだが、その置き場所で相当もめたらしい。結局,中立的な場所という事でこの教会に置かれる事になったのだが、誰でも借りる事が出来るので、Lizがすぐにコンサートの話を持ちかけてくれた。
昨年の春くらいにその話が出て,昨夏に試弾しに行きましたが、本当に素晴らしいピアノ。今まで弾いたピアノの中でもトップ3には入ります。まだ新しいピアノなので、鍵盤が重く感じるのと、天上も壁も床も石造りの教会なので相当響くため、色々と考えなくてはいけない事が多いが、コンサートをするのがとっても楽しみになりました。
今回はピアノを弾く事は出来なかったが,場所の大きさだけ確認するために下見にまた行きました。今、プログラム作りで相当悩んでいます。
↑→ Holy Trinity Church
結構大きい...。
ヘレフォードの近くに「Hay-on-Wye (ワイ川沿いのヘイ)」という街があり,川が綺麗なので何回か訪れています。古書で村おこしをしたらしく、古本屋がいっぱいあるのだが、5月に本のフェスティバルがあるので有名です。作家が何人も来て講演会をしたりするので,全国からたくさんの人達が集まって来ます。クリントン,カーター元大統領も訪れて話題になった事も。
いつも驚いてしまうのが、お城のふもとにある青空本市。芝生の上に本箱がいくつも並んでいます(笑)。それぞれの本箱にシャッターが付いているので、夜や雨の時には閉めるんでしょうけど、この気軽さが何とも云えず好きです。
詩を朗読中の彼に皆集中
ヘレフォードに何回も来ている上に、コンサートも2回しているので、住んだ事もないのに結構知り合いが多い(笑)。全ては友人のLizのお陰だが、今回もまた面白いグループと時間を共にしました。Lizが陶芸を一緒にしている方達だが年齢もまちまち、お仕事もまちまち。私をとても温かく迎え入れて下さって、大いに笑ったり、感動したり。本当はバーベキューのはずが、雨が降ってしまったので、山の上のパブに皆でお昼を食べに行きました。
集まったのは10人程だが、その文化レベルの高さにはただただ驚くばかり。前回ヘレフォードに行った時も、農家がやっている、アフタヌーンティーが出来る素朴なカフェに入った時に女主人が「夏には裏の納屋でシェークスピアの劇をやっているのよ」と話していて驚いたが、今回も相当なカルチャーショックを受けた。
Lizに最近甥っ子さんが生まれたのだが、その男の子の名前がAlbert (アルバート)。「Albert」という名前の男の子についての有名な詩があり、それをプリントアウトしたものをその集まりの一人がLizのために持って来てくれました。A4二枚程になる結構長い詩で、私がそれを一生懸命読んでいたら、「後で読んであげるから、今読む必要はないよ」といわれました。てっきりその紙を見て読むのかと思いきや、食事が一段落したら「詩を聞かせてよ」と誰かがいうと、「読む必要はないよ」と云ってくれた本当にふつ〜のおじさんがスラスラと暗唱し出したので本当にびっくりしました。それも音楽のように感情表現豊かに、手振り身振りをつけて!これには本当に大感激。おまけにこれに火がついたのか、今度は他の人(元俳優らしいが)が映画「マイ・フェアー・レディー」の一場面をヒギンズ教授そっくりに演じ始めたからまたまた大感激。その後は、誰かが謎なぞを出したり、と本当に楽しかったのだがショックも相当大きかった。
帰って来てから、Lizに「いつもああやって、詩を読んだり,劇を演じたりする文化的な会話なの?」と聞いたら「いや、今日はちょっと特別だったかもね」と答えたのでなぜかちょっとほっとしてしまいましたが、ロンドンからこんなに離れた所でも、こんなに文化水準が高いのには本当に感動してしまいました。イギリスって本当に凄い国だな〜と再確認した午後でした。
↑集まりに来ていらした方の一人のお庭。
孫のために作ったそうだが、幸せへの扉のよう!
ロンドンでの楽しいシティー・ライフをあとにウェールズの近くのヘレフォードへ。ロンドンから電車で3時間程。大親友のLizが住んでいるので、もう何回も来ています。(何回も行っているのに、先日初めて地図でその場所を確認しました。こんなに遠くまで来ていたんだな〜と改めてビックリしました。笑)美しいウエールズの山々が周りに広がる、結構大きな街ですが、自然がいっぱい残っているせいか、とっても静かに時が刻まれている感じがします。
Lizとは10年来の友人だが、とっても敬虔なクリスチャンで信仰がとても厚いので、他の友人とはまた違った心の繋がりがあります。こんなに遠く離れていながらも、心に最も近いところにいる友人の一人です。
彼女がお母様と一緒に住んでいらっしゃる家がシェークスピアに出て来そうな本当に素敵な家。丘にぽつんと建っている家だが実際に1500〜1600年代の家だそう!冬はすきま風が相当寒いのが辛いけれど、夏は景色も素晴らしいので、遊びに行くのがいつも楽しみ。しかし、夏と云えど、イギリスの郊外は結構寒い。今回も毛糸のタートルネックのセーターにジャケットを毎日着ていました(笑)。夜は暖炉まで焚いて!おまけに毎日雨が降ってしまったので天気には本当に恵まれませんでしたが、それでもとっても楽しい4日間を過ごす事が出来ました。
ベッドルームからの景色→
庭には薔薇やラベンダー等の花々が。そして、食卓やキッチンにも飾ってあって素敵なのだが、ベッドの脇に生けて下さるものは、温かく迎えられた感じがして特に嬉しくなります。
夏にロンドンに行くと、必ずしていく事がいくつかあるが、その中の一つがハロッズの「クリスマス・ワールド」コーナーに行く事です(笑)。お目当てはクリスマスカード。クリスマスカードは毎年80枚近く送る上に、日本だとなかなか信仰とつながったものが見つからないので、最近はもっぱら、この何とも季節外れのハロッズのコーナーに頼っています。ロンドンに住んでいた時は「なんでこんなに早く!?」と思っていたが、今では大感謝。夏のセールが終わるとこのコーナーが登場します。豪華なカードだけでなく、ちゃんと様々なチャリティーで出しているカードも売っているので選択肢が多くて楽しい。
イギリスにいる間も教会には毎日曜日行きますが、友人と一緒の時はやはり英国国教会に行く事が多い。しかし、一人の時は少し遠くてもナイツブリッジにあるBrompton Oratory (ブロンプトン・オラトリ−)のカトリック教会に行っています。
今回の滞在中もこの教会に2回行く事が出来ましたが、お説教が素晴らしく、新たな心の糧を頂く事が出来ました。一つだけ残念だったのが、いつもは大感激してしまう「音楽」が今回は今ひとつでした。夏休みで臨時の人が歌っていたのだと思うが、聖歌隊のソプラノが弱く、全体のバランスが完全に崩れていました。声もきれいで、とても正確には歌ってましたが、やはり一人の人のバランスが悪いだけで、全体の印象がこうも変わるのか、と驚きました。「何となくいい」というのと「素晴らしい!」の違いは本当にちょっとした事なんですね。
それにしても、教会内のあちこちにお祈りを捧げるためにロウソクに火を灯して、絵や像の前に立てる場所が設けてあるが、その数の多さが半端じゃない。このロウソクの火一本一本に人の祈りが込めてあって、そして、これだけの人がそういう切なる思いを持っていると思うと切なくなります。
昨日のブログで登場したOさん。映画や音楽情報だけでなく新しいお店やレストラン情報もとっても豊富。彼女のおかげで、ロンドンの楽しさが倍増します。
最もお気に入りの一つが「Levant (レヴァン)」というレストラン。数年前にOさんのお誕生日に行って以来、ロンドンに行く時の楽しみの一つになっています。
ロンドン滞在2週目からはピアニストの友人のOさんのお家に泊まらせて頂いていたが、とにかく他の友人達に会いに行く事が多く、最初の数日間は朝の30分位しか顔を合わせる事がなかった。やっと一段落した頃に一緒に食事をしたり、ショッピングに行ったり、映画を観たりする余裕が出て来ました。
Oさんのお家はブルーと黄色を基調にした素敵なお家でピアノの生徒達の憧れだそう。学生時代からブルーと黄色が好きだったのでず〜っとその好みは変わらず、とにかく徹底しています(笑)。台所も全てブルーと黄色。(確かフランスのジヴェルニーにある画家モネの家の台所も黄色と青だったような...。)そんなかわいい台所だと、お料理も楽しくなるから不思議。おまけに具沢山の(相当色々なものは入れていたが)サラダを作って「これでいいかな〜?」と訊いたら「最高!」とOさんが間髪入れずに云ってくれたのでますます作り甲斐があるというもの。やはり喜んでもらえると嬉しいものです。
ロンドンでのコンサートの後はそのまま招待してくれた友人と一緒に帰宅。春のブログにも登場した大学時代からの歌の友人達の家に泊まる事に。朝は子供達二人のJ君とC君の賑やかな声で起床。今回もお土産はポケモンづくし。Tシャツは大感激してくれたが、日本語で書いてあるカードに前回ちょっとがっかりしたのか今回もカードを何パックかあげたら「カードはこれでいっぱい揃ったから、もう次からは持って来てくれなくていいよ」と子供ながらうつむき加減に遠慮気味に云っていました。かわいい(笑)。大人もこういう風にダイレクトに云えると世の中の無駄はいっぱいなくなるのに(笑)。
丸いRoyal Albert Hall
お誕生日の日は昼間はピクニック・バースデーで大勢の友人達と一緒にお祝いしましたが、夜は友人の一人がコンサートに招待して下さいました。
ロンドンのロイヤル・アルバートホールでは夏になると3ヶ月近く、クラシックのコンサートを毎日やるという、音楽祭があります。クラシックコンサートの音楽祭としては世界最大規模を誇るらしいが、毎日プログラムは違うし、世界の一流オケも来るので本当に夏にロンドンに行く楽しみの一つです。一階席と天井に一番近いギャラリー席は千円程度で、皆床に座ったり(常連はクッション持参!)寝てたり、ととってもリラックスムード。こんな雰囲気の中で、クラシックを聴けるイギリスが羨ましい。(最近日本でもやっている「ラ・フォル・ジュルネ」に近い感じですが。)
コンサートは前半が現代曲とベートーベンのピアノ協奏曲4番。そして、後半がラフマニノフのシンフォニック・ダンス。ベートーベンの協奏曲の中では4番が一番好きな上に、ピアニストが6月に日本でも聴きに行っていたPaul Lewis( ポール・ルイス)。本当に嬉しい組み合わせでした。日本ではホールが小さ過ぎたと感じていたのだが、今回のコンサートで本当に彼の凄さを堪能出来ました。6000人近く入るホールの一番上で聴いていたが、ピアノの響きこそはあまり聴こえては来なくても音楽そのものはしっかりと伝わって来ていました。友人が以前「隣の部屋でCDの音がかすかにしか聴こえてなくても、上手い人はちゃんと音楽のエッセンスが伝わって来て、感動出来るよね」と云っていたが、正にそんな感じでした。姿は豆粒のようでしたが、伝えている音楽はちゃんと直に心に響いていました。本当に素晴らしい!
お手製ケーキに感激!
8月がお誕生日なので旅先でお祝いする事が多い。いつも、どこで過ごそうかと迷うのだが、今年は節目のお誕生日だったのでロンドンに残って過ごす事にしました。
友人の多くは結婚していて子供もいるので、何となく子供達と一緒に過ごせるように色々と考えていました。ロンドンに行く前から、皆予定は空けていてくれていたが、なかなか具体案が出ず、このまま立ち消えになっちゃうかも、と心配する中、友人のMちゃんが場所を考えてくれて、みんなに連絡してくれました。
Claremont Landscape Gardenという小さな湖のある本当に静かで美しい場所でのピクニック・バースデー。あちこちに散らばっている友人達が集まってくれました。緑も湖もキラキラと眩しく、子供達がはしゃいでいる中でお祝い出来るなんて、本当にこれ以上のお誕生日はなかったと思います。残念ながら、自分の家族を持つ可能性は今の所ありませんが(笑)、こんなに素敵な家族のような友人達に囲まれている自分は本当に幸せです。こんなに素敵なお誕生日にしてくれた友人達に心から感謝。
色々と調べてくれるLiz
ロンドンに長期滞在する時のピアノの練習場所に苦労していた時に、友人の紹介で個人宅で練習出来る場所を教えてもらいました。紹介して頂いた家は絵や彫刻、そしてヴェネチアングラスのシャンデリアの掛かっている素敵な家。ピアノの置いてある部屋は2階にあったので日の光も入って、本当に気持ち良く、集中した練習の出来る場所でした。家主のLizはとっても気さくなおばさんで、彼女も絶対に練習の邪魔や余計な話をする事がなかったので、3年程は朝の「おはよう」と帰りの「さようなら」という言葉を交わす程度でした。
しかし、数年前にそこで練習をする必要も無くなり、お世話になったのに全然会わなくなってしまうのも残念に思い、お茶に誘ってみましたが、彼女は予定が詰まっていたので「申しわけないけど、うちに来てもらえないかしら?」と、逆にお茶に招いて下さいました。
いつもは1階と2階の部屋しか見た事がなかったのだが、初めて、彼女が居住スペースにしていた地下に招かれました。とにかく、本の多さにびっくり。そして、話し出すといかに彼女が凄い人かが分かって来ました。「能ある鷹は爪隠す」とはこの人のためにある言葉と思う程に知識が豊かな人で本当に次から次へと面白い話をして下さるので、いつまでも帰りたくなかった。
お母様がダンサーで、お父様がピアニスト。お母様はダンス・メソードの創立グループにいらした事で、ヨーロッパでは結構名が知れていたようで色々な画家のモデルにもなっていたそう。戦時中、パリの画家達が彼女達のロンドンの家に避難したそうだが、その中に藤田嗣治もいたという話をさらっとしてくれる(笑)。このお茶をきっかけに、とっても親しくなり、今ではロンドンで会うのが最も楽しみな一人です。
ロイヤル・カレッジのすぐ近くにあるRoyal College of Organists (王立オルガン大学)。建物が美しく、いつも見とれてしまうが、ヨーロッパならではの大学だな〜といつも思ってしまう。
ヨーロッパならではといえば、先日大学時代の友人と話していたら、アカデミーで「教会音楽」という教科を取っていたと云うので驚いた。その頃は全然宗教には無関心だったので、その教科の存在すら知らなかったが、友人は歌だったので、そのような選択肢があったのかな、とも思う。
それにしても、なぜその話題になったかというと、いつもロンドンでミサにあずかる教会の音楽が素晴らしいのだが、偶然にもその教会の音楽監督をしているのが、当時私も論文でお世話になったアカデミーの教授。友人に「先日、あまりにも音楽が素晴らしいので、声を掛けに行ってご挨拶した」といったら『あ、僕も「教会音楽」で一年間お世話になったよ。今度僕からも宜しく伝えて!』と云われたのです(笑)。音楽の世界は本当に狭い...。
ロイヤル・カレッジ
ロンドンに行く時はしたい事がいっぱいあり過ぎて困ってしまうが、その中の一つがコンサートで弾くレパートリーを増やすための新しい曲探し。日本の音楽図書館もいくつか回ってみたが、(不慣れのせいか)どうにも使い勝手が悪く、手ぶらで帰って来るケースが多い。
自分が通っていたロイヤル・アカデミーの図書館も小規模で、収蔵していた楽譜やソフトが少なかったためにあまり利用する事もなく、ロンドンのあちこちの音楽図書館を渡り歩いていたが、、卒業後にロイヤル・カレッジ・オブ・ミュージックの図書館を知り、その広さと充実度に圧倒された。それ以来、ロンドンに行ったら、必ず行くようにしている場所の一つです。
たくさんのかわいいケーキがウィンドウに並んでいたケーキ屋さん。フルーツケーキに多分マジパンで飾り付けをしているのだと思うが、とにかくユーモアのセンスがあって、デザインが素晴らしい!結婚式にもこのようなスタイルのウェディングケーキが良く登場するが、このフルーツケーキが何年も保つという不思議な物。最初の子供が生まれる時まで一部は取っておいてお祝いに食べるそうだが、そんなに保つのかとビックリする(笑)。
オックスフォードで目に付いたもの色々。
←風情ある木の郵便箱。
外にあったものだが、
空気が乾燥している国ならでは。
これまた風情ある
文房具屋さん→普通のノートや鉛筆も売っていたが、ウィンドウの物も全て売り物。革張りの分厚い本のように見える物は実は紙で出来た箱形ファイル!
オックスフォード
友人のFに会いに大学の街オックスフォードまで。
アカデミー時代に一緒だったFはピアノから転向して小児科の女医さんに。同時期に入学し、同門だった事で顔を合わせる事が多かったが、彼女は私の執念で友達になったと思っている(笑)。何がどうこう、という訳ではなかったが、なぜか私はどうしても彼女の友達になりたかった。最初の一年は彼女自身はあまり自分の事が好きではないようにも感じていたが、それでも一方的に話しかけたりして親しみを持ってもらうようにしていた。このように書くと、色々と誤解を招きそうだが(笑)、生涯を通じての友達になれる直感が働いていたように思っている。今では本当に心から信頼出来る友人の一人になっています。
ブライトン
ロンドンに住んでいた時に、10ヶ月程フーラム(サッカーチームで有名な)という場所に部屋を間借りしていた事がありました。大家さんのAさんと英語を勉強しに来ていたMさんとの3人での共同生活でした。団体行動がほとほと出来ない人ので、住む前は色々と不安がありましたが、「他人と住むのがこんなにも楽しいものなのか!!!」と思わされる程楽しかった。学生時代に、凄く仲がいいから一緒に住む事にしたのに、口も利かなくなってしまったケースをいくつも見ているので、この発見には本当に驚いた。
まず、知らないもの同士というのが良かったように思う。ある程度の礼儀はお互いにいつも保っていたし、お互いの時間や空間に対しての気遣い方が同じだったように思う。そして、意外と最初に大家さんが提示していたルールが多かったのも気持ち良く住むための秘訣だったと思う。「2階には食べ物は持って行ってはいけない」、とか「週末にはみんなで掃除をする」、「長電話はしない」「人を泊めてはいけない」等など(笑)。これによって家はいつもとってもきれいだったし、基本的に自分の生活のペースを崩される要因が排除されていた。とにかく3人でとても仲良く住んでいて、外から帰って来て家に近づいて来ると「誰かいるかな〜」とワクワクしながら鍵を開けたものです。
前置きが長くなったが(笑)、その時の大家さんの素敵なセカンドハウスがブライトンにあり、ディナーに招いて下さいました。
ブライトンはロンドンから南に電車で一時間程の海辺の街。海水浴の人達だけでなく、ゲイやヒッピー(今でもこの言葉って使われているのだろうか...笑)の人達で賑わっている場所なのでいつも開放的な雰囲気です。
(←砂ではなく小石のビーチ)
パワフルに咲くイギリスの薔薇!
Robert家で数日過ごした後に今度はOさん宅にお世話に。
今までのゆったりとしたペースから打って変わってフル回転に。人に会いまくりの一週間。合計で7年住んでいた場所だけに友人達がいっぱい。おまけに、学生時代は皆ロンドンに住んでいたのが、今では郊外に散らばってしまっているので、会いに行くのも一日がかり。効率が悪く、たくさんの人達に会うので計画を立てるのも大変だが、逆にじっくりとした時間が過ごせるので心に残るような一日一日となって、日本に帰って来ても一人一人と過ごした時間が鮮明に心に残っています。この心に残ったものが身体に蓄積して、自分の音楽の糧になっているような気がするので、自分にとっては必要不可欠の時間と思っています。
日曜日は4人で一緒に教会へ
Robert家での数日間。T君とIちゃん、それから隣に住んでいらっしゃる子供達のおじいちゃんとゆったりと。お料理したり、トランプしたり、オリンピックの話をしたり、日曜日には一緒に教会に行ったり。
それにしても、こんなにいい子達が世の中にはいるんですね〜と感心してしまう。食事の手伝いもいそいそとしてくれるし、云わなくても歯を磨いたり、シャワーは浴びるし、おまけに気づくと何も云われていないのに、勉強していたり、ピアノやバイオリンの練習をしている(笑)。あまりに良く手伝ってくれていたので、その事をお母さんのMちゃんが帰って来た時に話していたら、Iちゃんがすかさず「だって楽しい!」というので驚いた。確かに思い返してみると、お料理する時も勉強や楽器の練習をする時も楽しそう。他の友人もここの子供達を見て、あまりにいい子達なので相当驚いていた。『ハッピーなんだね』と云っていたが本当にそう思う。とっても満たされている感がある。『〜が欲しい!』とか『〜がしたい/飲みたい/食べたい!」というわがままを聞いた事がない(笑)。凄いな〜...。こんな子達なので一緒にいるだけで私もとってもハッピーに。
←Iちゃんがヴァイオリンの練習をするので一緒にピアノを弾く事に。伴奏が結構難しく、私が「ちょっと一人で練習させてね」とお願いして、黙々と練習していたがハッと気づいたらピアノのすぐ横に(春のブログにも登場した)ネルソンが(笑)。
日本でのとてつもなく忙しいスケジュール後に無事にロンドンに到着。今回の飛行機はヴァージンだったので映画の選択肢が100本近く!11時間のフライトで5本は観ました(笑)。
今回のロンドン滞在の初めの数日は4月のコンサートで一緒に演奏したRobert家に泊まる事に。両親共にツアーに出ているので、14歳のT君と10歳のIちゃんと一緒にお留守番。子供が大好きな私だが、さすがに普通だったら少々重荷な状況。しかしここの子供達はまだ子供ながら、相当自立している上に本当に天使のような子達なので、一緒に時間を過ごせる事をとっても楽しみにしていた。ロンドンに行く前にお母さんのMちゃんと相談して、色々と楽しい計画を立てました。
日本を発つ前日の睡眠時間が2時間弱だったので、ロンドンに着いた晩は時差もなく熟睡。翌朝8時にすっきり起床。
朝は3人でわいわいと朝食作り。子供達が張り切って手伝ってくれるのでなんとも楽しい。目玉焼きからベーコン、ベイクド・ビーンズにトースト。フルーツサラダにシリアル、とフル・イングリッシュ・ブレックファーストの超豪華版。日本では分刻みで動いていたので、こんなにゆったりと出来て朝から嬉しい。「夏休み」を着いてすぐに実感出来ました。
午後は世界遺産にもなっているキューガーデンに。友人Yちゃん家族と待ち合わせてピクニック。おにぎりをたくさん作ったのに台所のテーブルに置き忘れてしまったとの事でしたが、Yちゃんの美味しい手料理(おかずがいっぱい!)にみんなで舌鼓を打ちながら、美しい緑の中、とってもゆったりと過ごせました。
自他共に認める文具フェチです(笑)。母もそうだったので、それを受け継いでいるような気がしないでもないが、とにかく文具関係のお店に入るとワクワクしてしまいます。ノートやペンや小物も楽しいが、なんといってもカードを探すのが好きで、ロンドンに行く時にも必ずチェックしているお店が数店あります。
←駅のカード屋さん
色がなんとも鮮やか!
ロンドンに行く時の楽しみの一つが演劇を観る事です。必ず一回は劇場に行くようにしています。映画も大好きだが、目の前で人が凝縮した感情を露にするのを見るのはとても贅沢な事で、とても豊かな気分になります。
今回は「Speed-the-Plow(スピード・ザ・プラウ)」という劇を観てきました。オールド・ヴィックという由緒ある劇場でやっていましたが、映画「アメリカン・ビューティー」「シッピング・ニュース」で有名なケビン・スペーシー、と「フライ」「ジュラシック・パーク」で有名なジェフ・ゴールドブラムの共演という超豪華キャスト。実は今、ケビン・スペーシーはこのオールド・ヴィックの芸術監督を務めていて、年に何公演かに出演している。やはり、大人気なのでなかなかチケットが取れないのだが、今回はコンサートとリハーサルの予定が全部決まった時点で、すぐに劇場のチケットオフィスに電話したお陰で、最後の一枚(本当かな〜...笑)が取れました。
ロンドンにとっても好きな猫がいます。猫は基本的には苦手だが、今までに2匹だけ、とても相性のいい猫に出逢っていて、その一匹がネルソン。今回一緒に演奏したRobert家にいる猫で、名前は南アフリカのネルソン・マンデラから取ったとの事。政治/人権にとても敏感なRobert家らしい。
なぜ、好きかというと、とても素っ気ないのです。全然媚びを売ったり、すり寄ったりしない。なのに、全然無関心かと云えば、そうではなくて、Robert家に泊まる時にはいつもベッドの上に来て、足下で寝たり、そして、今回も毎日お昼を食べにテーブルに座ると、背中を向けながらも(笑)、私のそばに座りに来るのです。この距離感がなんともかわいい。
あまり日本では見かけないもの。
←ひろ〜い公園にある、犬のためのトイレ。
友人と、『ここを使ってる犬って見た事ないよね...』と話していた。
トイレ用の掃除ブラシや石けんトレイ。陶器製で豚や象、魚の形があった。→
かわいいだけではない、センスの良さを感じます。
(トイレに象という発想が面白い。)
地下鉄の話題がやけに続いてしまったが、今回はトイレ。
イギリスの公共のトイレと云うと、本当にぴんからキリまで。日本のように便座が温かったり、ウオシュレットのような機能性に優れたものがないので、最低限の設備しかない所だと、日本のトイレの方がよっぽど、清潔で気持ちがいい。
しかし、高級なデパートやホテルに行くと、とても豪華です。内装もとっても凝っていて、イングリッシュガーデン風の壁紙に合わせて、中に置いてある家具が白木で統一されていたり、洗面所の所が絨毯ばりでくつろげるスペースがあったり、香水がおいてあったりと、とても贅沢な空間となっています。(ちなみにお薦めは、紅茶で有名なフォートナム・アンド・メーソン、ボンド・ストリートにあるフェンウイックというデパート、そしてハロッズなど。女性用ですが...。)
昨日のブログに載せた、散らかり放題の地下鉄の写真。チョコレートの包み紙やファーストフードの紙包み等、悪びれもせずに捨てて行く(置いて行く?)のだが、一番散らかる原因が「新聞」。 特に朝は、ただで配っている『メトロ』という新聞が散乱している。
相当の人がこの情報誌を読んでいるのだが、今回「Wii フィット」の宣伝が大々的に載っている日があった。初めて発売となった日のようで、表紙と裏表紙、両一面の宣伝で、前の人が読んでいても、横の人が読んでいても、下に落ちていても目に入らざるおえない。ニューヨークだったらあっぱれのPR作戦もロンドンだと少しやり過ぎのような気がしないでもない...。
それにしてもゴミが...。
地下鉄の話にまたなってしまうのだが、横並びのシートだけの車両、というのは殆ど見当たらない。必ずボックス席があって、シートは背もたれが背中の中程までと低く、そして真ん中に区切りがない。家ではないのに何となく、くつろげます。
以前にロンドンに到着したばかりだったらしいニューヨーカーがこの席を見て、感激していたのを覚えている。私の真ん前に座ったのだが、「こんなふかふかで綺麗なシートがニューヨークの地下鉄にあったら、皆、剥ぎ取って自分の家のソファーにしちゃっているよ!」と独り言ながら絶賛しているので、大笑いしてしまった。ニューヨークのシートは灰色(黒だったか?)でプラスチックなので座り心地が凄く悪い。「確かにそうかも」と妙に納得。
知らない人なのに、彼の絶賛に乗っかって、二人で大いに盛り上がってしまいました。
昔からいつもロンドンの地下鉄の椅子が気になっていた。日本と違って、電車の外側は色分けされていないのだが、中のシートや手すりの色が路線によって異なっている。何が気になっているかというと、クッションの色の配色に一見した決まりがない。
日本だと、幾何学模様でもすぐに察知出来るパターンがあるのだが、イギリスのはそれが分かりにくい。20年前と比べると配色や模様も大分洗練されたものになってきているが、やはり20年前のくどい色や単純な模様のときでも、そのパターンは複雑で、いつも地下鉄に乗っては、どういう決まりがあるんだろうと、じっくり観察していた。
もっと、単純なものに出来たであろうものなのに、こういう所に機能性だけを求めず、遊び心があるのがとても楽しい。こういう所で「デザイン」を抜け出て「アート」になっていくのではないかと思う。この自由さがとっても好きです。
地下鉄の床も不規則模様→
美術館のようなハロッズ
今日はもう日本に発つ日。夜のフライトなので、最後に街をゆったり歩いて、なんて思っていたが、最後まで走り回っていました(笑)。午前10時頃にはチェックアウトしようと思っていのに、期限の12時まで荷造りに追われて...。朝になって始めたので、当たり前ですが。
そして、午後はレイトン・ハウスに行って最後の用事を済ませたり、銀行や郵便局に行ったり。銀行での予約時間まで30分あったので、その間に隣のデパートのハロッズをちょこっと見る事は出来ましたが、結局それぞれの用事が思ったより、大分時間が掛かってしまい、空港に行かなくてはいけない時間にあっという間になってしまいました。色々と見たいものがあったのに、残念でした。
日本に帰る前日に、なぜか急に時差が出ました(笑)。午前4時に目覚めてしまい、7時まで寝れずじまい。コンサート前でなくて、本当に良かった。
午後はコンサートにも来てくれた友人の家に。この友人達は大学時代に初めて会ったときからカップルだった二人。二人とも歌手で在学中はずっと二人の伴奏をしていました。そんな二人も、今では結婚して二人の男の子がいます。長男のJ君の代母にもなっていますが、本当に家族のようです。
ホランド・パークのブルーベル
コンサートが終わって、ほっと一安心。後処理が色々とあるので、帰国まで余裕を持って二日間取っておきましたが、基本的には自由の身。
10時半に友人のTと待ち合わせ。ワイングラス返却の手配や清算をするために、一緒にレイトン・ハウスや酒屋さん等、色々と付き合ってくれる事になりました。Tは以前のブログにも登場している、オーストラリアに住んでいるピアニスト。彼もちょうどコンサートのためにイギリスに来ていたので、とってもタイミングが良かった。(残念ながら、彼のコンサートは私の帰国後だったのだが...。)ロンドン郊外に家のある彼だが、コンサートを聴くためと、コンサートの直後はきっとゆっくり話せないだろうという思いからロンドン市内にホテルを取ってくれていた。本当に感謝な事でした。音楽的にとっても信頼していて、尊敬している彼なので、朝起きた時に、わくわくしていた(笑)。やはり、弾く人と、聴いている人の感じ方は全然違うので、客観的な視点から聴いた感想を聴けるのがとっても楽しみなのです。
大学時代からの友人Yちゃんと
コンサートが終わって、たくさんの友人達に囲まれました。久しぶりに会う人も何人もいて、コンサートの興奮+久しぶりの再会で感動も倍増。しょっ中会えない人が多いだけに、短いながらも共にこのコンサートの時間を共有出来た事に本当に感謝です。コンサート後に一人一人と話せる時間は限られていて、いつも欲求不満になってしまうのだが...。
共演者の二人は、次の日の朝早くから仕事があるという事でひとしきり来て下さった方との挨拶が終わると帰ってしまったが、私は逆にこれで帰国まで自由の身(笑)。友人達7人で会場近くのイタリア・レストランに。行き当たりばったりで入ったが、イタリア人の代々やっている家族経営のお店で、何が出て来ても感動の美味しさでした。お店の人はとてもフレンドリーで明るいのに、お店の雰囲気は落ち着いていて、打ち上げといえど、久しぶりに会った友人達とじっくり話すのにぴったりでした。
コンサートが何とか無事に終わり、友人/家族に囲まれて、美味しいものを食べて、という本当に幸せな時間でした。
嵐の前の...
8:00 緊張感の中、起床。
10:00〜11:00 会場となるレイトン・ハウスで朝練習する事が出来る事が判明したので、会場での一人練習。ピアノやいすの状態をみたり。思ったより浅いピアノで、弾きにくい訳ではないが、深みがないので太い音を出そうとしても底をつく感じがあった。いつもの弾き方だと、ピアノの中に入るはずのエネルギーが全部身体の方に返って来てしまうので、30分もしないうちに肩が凝ってきた(笑)。音の底の限界を知るためのリハーサルとなりました。
実はこのレイトン・ハウスは10年前にリサイタルをした場所。当時はリサイタルする事自体、自分にとっては大変な事だった。レイトン・ハウスでのリサイタルを目指して、小さな場所で何回か弾き込んで、何ヶ月か掛けての準備でした。今でも、その時の事は鮮明に覚えています。当日の朝、あまりの緊張でどうにか逃げ出せないものかと考えていたのに、午後3時頃になったら急にさーっと気持ちが落ち着いた事や、舞台に出る直前にコンタクトの具合が悪くなって『どうしよ〜!』と思った事や舞台の照明が暗くて、鍵盤が見にくいな〜と思った事などなど。そして、何よりもコンサートに来て下さった、たくさんの友人や生徒さんの顔を今でもまざまざと思い出せます。本当に色々な人に支えられてこそ今の自分がいる事を実感します。
音楽も素晴らしい教会
7:00 起床。だんだんと体力勝負になってきているので、どうしようか迷ったのだが、やはり少し早起きしてでも教会に行く事に。困った事にミサが8:30からだったのか9:00だったのかが思いだせなかったので、用心のために早めにホテルを出発。
9:00〜9:45 ロンドンにいる時にいつも行っているBrompton Oratoryの教会のミサに。結局バスが20分以上も来なくて、8:40に到着したのだが、ミサが9:00だったので、心静かに色々とお祈り出来る時間が出来ました。この9:00ミサがラテン語だったので、解説書を見ながらでもなかなか内容が追えなかったが、ご聖体を頂いて、「これで心の準備も万端」という気持ちになれました。
母校のRoyal Academy of Music
8:00過ぎに起床。徐々に自然と目覚める時間が遅くなって来ている。
11:00にはRichmondに着いていたのだが、なぜか駅からリハーサル場所までの道路が大渋滞で30分以上も掛かってしまった。いつもは5分足らずで着くのだが...。
11:30〜12:00 一人練習。
12:00〜13:00まで3人でのリハーサル。今日はLucyが午後から仕事が入っていたために一時間だけの合わせ。前日に何をしようかという話になった時にRobertが「チャイコフスキーは練習しないといけないけど、ラヴェルは弾かないといけない」というので、ラヴェルをする事に。ラヴェルは細かな練習よりも、曲を感じて弾き込む事が必要という事で、流れに重点を置いてのリハーサルになりました。通して弾く事で3人の流れがより確実で説得力のあるものに。
13:00〜14:00 Lucyが帰ったのでRobertの奥さんのMちゃんとコンピューターで当日配るプログラム・ノート(曲解説)の打ち込み。普段マックを使っているのでワードに苦労しながらの作業。行間の幅さえも縮められない自分が情けない(涙)。
14:00〜14:30 一人練習。譜めくりを急遽引き受けて下さった方との打ち合わせが入っていたので、30分で切り上げ。
とっても温厚な人柄のLucy
8:00近くに起床。この時間帯に起きる都合のいい時差なのではないかと思いだした(笑)。睡眠が十分取れているのは本当に感謝な事。
昨日遅刻してしまったので、早めにホテルを出たら、地下鉄の連絡が良すぎて今日は30分も早くRichmondに到着。ロンドンで交通機関を使っての時間計算が全然出来ません(笑)。
11:00〜1300まで一人練習。昨日リハーサルで色々と出た新しいアイデアを自分のものにするための練習と、広い空間での3人の響きを考えての音楽作り、そして録音を聴いて気になった所を修正。
14:00〜18:15まで3人リハーサル。
今日はチャイコフスキーを徹底的に。
テムズ川沿いの教会でリハーサル
やはり7;30に起床。今日も時差に苦しめられる事なく朝まで寝れたので、身体の調子が良い。
11:10にRichmond到着。昨日、早く着き過ぎたので少し遅めに出たら、地下鉄が全然来なくて、10分の遅刻。(ロンドンの地下鉄は時刻表がありません!『8;00から21:00までは約4〜5分間隔』という何とも曖昧な予定表がありますが、これも『人員が足りず、運転手がいないため大幅な遅れが出ております』等という信じられない理由で10分以上来ない事も多々あります...。)
11:15〜12:30まで一人練習。チャイコフスキーのスケールの大きさや思いの深さを残しながら、重さをなくす方法を色々と試行錯誤。ペダルを少なくしたり、和音の輪郭をはっきりさせたり...。
13:00〜17:00まで3人リハーサル。
今日は徹底的にラヴェルを。この曲はピアノのソロで始まった後に、途中でヴァイオリンとチェロが入ってきますが、前回のコンサートではどうしてもこの最初のページをフランス音楽らしく弾く事が出来なかった。自分のありきたりの音楽の後に、ヴァイオリンのRobertがいつもなんとも素敵に歌って入って来るので、いつも聴き惚れながら、フランスのエスプリを感じさせる音楽を自分が作れない事に不満を感じていました。Robertも基本的にはあまり注文を出さない人だが、この最初のフレージングだけは何回も弾いたり、歌ったり、言葉で説明してくれたりしていたのだが、どうしても最後まで納得のいく音楽には辿り着かなかった。
しかし、今回は相当に自分も音楽面を詰めて行ったので、自分なりに良しと云える所までは持って行っていました。それでも、一緒に合わせていて、逆に誰からも悪いもいいも、コメントがないと少し心配になって来て、「フレージング(音の流れ)は大丈夫?」と訊いたらLucyが「It's beautiful」と云ってくれたので、一安心。Robertがどう思っているか訊くのを忘れてしまったが(笑)。
7:30起床。 何回か目が覚めたものの、すぐにまた眠りにつく事が出来たので,十分な睡眠が取れて、体調も万全。朝食を取って、
9:30に出発。 ロンドン市内のMarble ArchからリハーサルをするRichmondまで地下鉄を乗り継いで、約1時間15分。
11:00〜13:30まで一人練習。
本当は13:00に終わらせたかったが、一曲一曲が長いので、なかなか練習が終わらない。
14:00〜19:00まで3人でのリハーサル。
チェロのLucyは2時5分前に到着。Lucyとは初対面だったが、とってもオープンな人で最初から何の壁も感じない。お茶も飲まず,無駄話もせず、楽器を出して調弦して2時5分にはもうハイドンを合わせ始めていました。ラフな会話をして気持ちがだれる事がないのですぐに集中出来て弾きやすい。
100年近く前のピアノで練習
ロンドン・ヒースロー空港に予定より30分早く到着。入国審査もやけにスムーズに済んだので,待ち合わせをしたヴァイオリンのRobertが来るまで、インタネット・コーナーでメールのチェック。(今回はコンサートの窓口の一つがホームページになっていたので、まめに見なくてはいけない状況でした。)日本からは「行ってらっしゃい!」メール、そしてイギリスの友人達からは「いらっしゃい!」メールがいくつか届いていて、まだ誰とも会っていないのに、すでに歓迎されている気持ちに(笑)。
空港から20分程で家に到着。Robertの奥さんのMちゃんとも再会。今では子供が3人いますが,二人が大学時代に付き合っていた時から知っているので、本当に家族のように近しい関係です。
4月22日、11:30AM:NH201便にて成田を出発。
朝、家を出る時に3軒となりの家に住んでいる方とばったり会い,お互いにこれからロンドンに行く事が発覚。私は電車で彼らは車だったので、「偶然ですね〜」という会話を交わしてお別れ。しかし、成田で飛行機に乗る時の列でも一緒になり「同じ飛行機だったんですね」とまた一言交わしてお別れしたものの,席に着いてびっくり。あんなに座席があるのに真ん前の席でした!「付け回している訳ではありませんよ!」とお互いに大笑い。コンサートの事もお話しして、来て頂ける事になりました。
私の隣の席の方はオーストラリア人の男性だったが,朝のフライトなのにもう既にアルコールの匂いが...。少し不安になってしまったが,最終的にトラブルはなかったので余計な心配でした。(それでも,フライト中に食事は全く取らずに、ワイン6本、日本酒を10本近く飲まれていたので、ずっとなんとなく気にしていました...。)