Thoughts

March 2012

集中力

今日はあるプロジェクトのための編集作業を。ここ数カ月越に自宅で録音していたもので、当初は編集無しに作り上げようと思っていたのだが、録音している状態やピアノの状態も変わり過ぎていたので、統一感をもたらせるためにも、最終的にプロの方のお力を借りする事に決めました。

以前から何回かお世話になっているIさんは素晴らしい耳の持ち主で、私でも気付かない事を調整して下さったり、色々と提案して下さるので、想像以上にいいものが出来て本当に嬉しい。今回もまたしても、プロは本当に凄いな〜と唸らされました。

それにしても、1〜2時間で終わるかと思いきや、結局4時間近く掛かりました。Iさんも仰っていたが、やっている内に色々と欲も出て来て、妥協点がどんどん高くなるそう。おまけに凄く集中して聴いているので、時間があっとう云う間に過ぎてしまう。帰りの車の中で疲れがド〜っと出て気分が悪くなる程に...。こんなに集中力を使ったのは久しぶりなのかも(笑)。

怒り心頭

今日、久しぶりにとっても腹の立つ事がありました。

いつも行っているスポーツクラブでの事でした。ある方のお話をしている時にゲイ(同性愛者)に対しての暴言に出くわしてしまいました。真面目な顔で「不道徳」とか「異常」と話されて、まずはびっくりしてしまい、そして本当に不愉快な気持ちになりました。「今時そんな風にいうなんて、おかしいですよ!許されないことです!」と云っても、その方はキョトンとしていました。今まで、ここまであからさまに偏見を直接的に云う人に出逢った事がなかったので、本当にショックでした。本当にこういう人がいるんですね。

音楽の世界含め、芸術の世界はゲイの人が多く、特に男の人はずば抜けた才能を持っていたりするので(力強さと繊細さが同居しているせい?)大学時代からゲイの友人がそういう偏見にあったと云う話を聞いた事が無い。逆に、イギリス社会の中ではゲイの人はゲイ同士結束が硬いので、有利に働くというケースを聞いた事がある。

日本も文化的に、華道や歌舞伎の世界だけでなく、芸能人でも表に立っている有名な方がたくさんいらっしゃるので、逆に受け入れる器が備わっているのかと思っていたが。。。

やはり、偏見、差別というのはどこにでもあるのですね。

今回のフランスでの乱射事件も宗教的差別から来たもの。
人はそれぞれに様々で、一人一人が本当に尊ばれるべき人間であるのに。。。
こんなに身近に、こんなくだらない偏見を持っていた人がいたのが残念でなりません。

正統派

ブログには書いていなかったが、色々とコンサートにも行く機会があり、色々と勉強になったり、考えさせられたり...。つくづくクラシックのコンサートの意味を考えさせられます。
最近はとにかく「上手」な人が多いので、レベルの高さの問題ではなくなっているのだが、残念ながらなかなか「良かった!」と思えるコンサートに出逢えません。上手なのに、不愉快に感じたり、地味〜な演奏なのに心の奥まで響くものがあったり。本当に不思議です。

最近は特に目先の華やかさやエンターテインメントを意識したコンサートが多いので、内容的にがっかりする事もあるのだが、久しぶりに正統派のコンサートに2つ当たりました。

一つは東京文化会館でのイギリス人のピアニスト、John Lill (ジョン・リル)のリサイタル。オール・ベートーベンのプログラム。この方はイギリスでは超有名で、しょっ中しょっ中コンサートをしているピアニストです。私も学生の頃にロンドンで何回か聴きに行きましたが、当時は自分も若かったし、真面目な感じのリルさんは少し面白みに欠けているような気がしていました。しかし最近の傾向である派手な演奏がはびこっている中で、今回20年振りに聴いたリルさんの真っすぐなベートーベンはとても新鮮でした。この人は脇目もふらず、今までの一生を音楽と誠実に向かい合って来たんだな〜とつくづく思いました。全くコマーシャリズムとは関係のない音楽、そしてそこまで潔いその生き方を羨ましいとさえ思えました。

もう一つの正統派コンサートは知人のヴァイオリン・リサイタル。フランスでずっと演奏活動をなさっていらした方だが、音楽解釈がとても深く、一曲一曲をとても丁寧に演奏されるので曲の素晴らしさ、美しさが本当に良く伝わって来ます。

今回はバッハやブラームス、ラヴェル等、超有名どころの曲ばかりだったが、色々と工作せずに真っ正面から音楽と向かいあっている感じで、本当に気持ちのいいコンサートでした。凝った事を何もしていないのに、聴き慣れている曲もつくづく面白い。2時間近いリサイタルを隅々まで堪能しました。

本当に色々な誘惑に負けずに、正直に素直に真っすぐに音楽と向き合えたら良いな〜と思います。簡単なようでいてなかなか難しい...。

ピアノマニア

震災から一年が経ち、少し自分の中でも気持ちの切り替えが出来るようになりました。
どうしてもブログも震災関係以外の事を書くのに気が引けていたが、これから少しずつ自分に出来る支援を模索しながらも音楽の事もないがしろにしないようにしたいと思っています。

なので、今まで溜ってしまった音楽の話を少しずつ。
まずは、数カ月前に珍しく映画館まで足を運んで観た「ピアノマニア」という映画。
超一流のピアニスト達のコンサート会場でのピアノを調律する調律師を追いかけたドキュメンタリー。確かにとってもマニアック(笑)。調律の腕は確かでも相当変わった人だったように思う。

私にとって調律はとても興味のある事なのだが、何しろ知識があまりないので、自分の勘だけに頼っている所がある。どういう調律が好みになのか具体的にいえないのがなかなかもどかしい。コンサートをしていると様々な調律師さんにお会いするのだが、個人的にはもう30年近く調律をしてくださっているKさんに絶対的な信頼をおいています。Kさんは自分の好みに近い状態にして下さるので、後は最終的な微調整をお願いするだけで自分の理想にかなり近い状態になります。ときどき調律した『音』だけで感動出来る程に素晴らしい時があって、それは自分が実際にピアノの近くに行って聞かなくても、隣の部屋で聞いていても「今日は凄いかも」と調律が出来上がる前に分かる時があります。

それにしても、映画の中で、ピアニスト達が好き放題云っているのには相当心を痛めた。自分もかなりKさんにわがままを聞いて頂いているので、思い当たる事がいっぱい。3時間調律して頂いた後に微調整に1〜2時間以上掛かる事もしばしば。。。本当に申しわけないと思いつつも妥協出来ない所がまた困りもの。でも、調律一つで自分の弾く感覚も状態も変わるのでどうしても譲れない所が出て来るのは確か。本当にいつも一生懸命にリクエストに応えようとして下さるKさんを筆頭に調律師さん達に感謝です。

この映画で色々なピアニストがコメントしていたが一番的確と思ったのがブレンデルの言葉。「理想的な調律は音量と音質が全部均一のもの」と云っていた。これは当たり前のようで、意外と出逢えないものです(笑)。何ヶ月か前にピアノを調律して頂いた後に、いくつか気になる音があって、微調整をして頂いているうちに、調律師さんが「海老原さんは音量を均一にしたいんですね」と。あまりにも当たり前の事を云うのでびっくりしました(笑)。音量が均一に出るように調整した上で調律をしているのかと思いきや、意外と「音量」というのは重要視されていないのかも、と新たな発見がありました。音質が違うと、微妙に音量も違うような感覚に陥るので、なかなかその兼ね合いが難しいのだが。

この映画で超ド派手なジェスチャーで有名なランランも登場。音楽というより、そのジェスチャーが気になり過ぎて、あまり今まで好きではなかったのだが、素顔で話して、リハーサルをしているランランは誠実そのもの。好感を持てるようになりました。
これもこの映画の収穫の一つ(笑)。

一年

12-03-11_14-07_resize.jpg東日本大震災から一年。鎌倉の建長寺で仏教、神道,キリスト教による合同追悼・復興祈願祭が行われました。一万人を見込んでいたそうだが、実際にどれくらいの人がいらしたのだろうか。前回の鶴岡八幡宮よりははるかに多くの人が来ていたのは確か。

それぞれの宗教者が列をなして、建長寺の境内をお祈りしながら一周し、本堂に集まり、それから祈願祭が始まりました。

12-03-11_15-51.jpg午後2:46には鐘が鳴り、黙祷。あれだけの大人数が一瞬にして静かになり、とてつもない悲しみに襲われました。本当にあの一分間は日本中が心を一つにしていたように感じました。鳥の声さえも聞こえませんでした。

亡くなられた方,まだ行方の分からない方、被災された方、そして彼らを支えて働いていらっしゃる方達のために心からお祈りをお捧げ致します。

3月11日

日付が変わり,3月11日になりました。
もう少し前に書けば良かったのですが、鎌倉ではまた東日本大震災のための追悼・復興祈願祭が建長寺で行なわれます。神道・仏教・キリスト教が合同でお祈りを捧げます。
午後2時30分からです。
公式サイトはhttp://www.inorikamakura.comです。