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カテゴリ "言葉" のアーカイブス

寿命を5年分

アメリカ滞在中はクラシック音楽に限らず、音楽自体をほとんど聴く事がなかったのに、帰って来てから一週間の間に5回もコンサートに行く事に。一気にまた音楽の世界に引き戻されました。ニューヨークでは練習も出来るので、ピアノの音を聴く事は皆無ではなかったが、帰って来て、耳が異常に敏感になっているのを感じて面白い。
生徒さんの出すピアノの音が最初は突き刺すように大きく感じたがそれも、一週間程すると慣れて来て今では全く違和感がない。音が新鮮に感じられるので、たまには音楽のデトックスもいいのかもしれない。

色々なコンサートを聴いて、たくさんの刺激をもらっているが、中でも凄かったのが、オペラシティーでのAYO(アジアン・ユース・オーケストラ)のコンサート。毎年、ご招待で聴かせて頂いているのだが、今年は指揮者が私好みだったせいか、私にとっては今までの中で断トツに良かった。若いオーケストラの魅力と指揮者のキャリアの魅力の相乗効果で本当に素晴らしかった。そして、今年はコンチェルトのソリストがチェリストのスチーブン・イッセーリス。有名になる前から素晴らしいな〜、と思っていてずっとファンなのだが、今回のあまりの凄さに驚いた。熱演も熱演なのだが、情熱的だけでなく、繊細な面は限りなく繊細で魂の隅々までもを見せてくれたような演奏だった。あの一曲で彼の5年分の寿命を貰ってしまったような気がしました。超売れっ子なのに、こんな凄い演奏を毎回しているの?と心配になってしまう程。本当にありがたいものを体験させて頂きました。

このコンサートは特にそうだったのだが、やはり生の演奏はつくづく良いな〜と実感させられています。まだまだながら、自分も直接的に音楽に携わっている事は本当にラッキーだな〜と思う。

人間に必要なもの

先日、テレビでトルストイに関する長編のドキュメンタリーをやっていて、今まで全然知らなかったロシアのあらゆる面を見る事が出来て、とても面白かった。

トルストイの思想自体が敬虔なクリスチャン思想から根付いているもので、その元となるアーミッシュにも近いキリスト教の宗派がロシアのあちこちにコミューンを作っていたのにも驚いた。トルストイはそのライフスタイルに憧れ、そしてそういうコミューンの支援もしていた。

そして、今ではそのトルストイの思想や文学を土台として生活をしている人々がいる。
ドキュメンタリーは昨年のものらしいが、今の時代に機械を使わずに広大な大地を耕しているのを見ると、何だか逆にその人たちの内なる強さが見えて来て感動してしまいます。
10代の男の子がトルストイ全集を愛読書にしていたり、3歳の女の子の一番最初の教科書がトルストイの書いたものだったり。

一番驚いたのは、トルストイの本がロシア国内で発禁になった時に、国外で出版されたものが国内に秘密に持ち込まれ、それを人々が手で書き写した事でロシア全土に広まったらしい。
読むのでさえもあんなに大変なものをロシアの人達が手で書き写していたかと思うと気が遠くなる。ロシアの底力を見せられたような気がする。凄い...。

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「人間には本当に必要なものがある。それを提供できる仕事を、本物の仕事というのではないか。・・・・・」

トルストイの残してくれたものは人間にとっての財産だと思うが、あの時代のロシアの人々にとっては本当にその必要性は切実だったんだと思う。

←実はこのブログ、先週書いたもので、今日アップしようと考えていたのだが、今日の雪の中を道を歩いていたら、道ばたに本が...。近づいてみたら、伊集院静氏の「なぎさホテル」だった。今日の面白い偶然(笑)。

己の卓越性

今日、レッスンの合間に5分しかなかったのだが、大好きな渋谷の文化村の地下の本屋さんに立ち寄って、目に入った「芸術家ガリレオ・ガリレオ−月・太陽・手」の本を手に取りました。600ページ近くある分厚い本でパッと開いたところに
「....芸術は、自分を制御して、己の卓越性の一点に凝集せねばならないのに...」という一文が目に飛び込んで、ずしんと心に響きました。

「自分を制御」するという事がどういう事で、どのような状態かがやっと分かったと実感しているところ。「己の卓越性」への追求は本当にこれから。今、やっとスタート地点にたどり着いた感じです。

それにしても、こういう事ってもっと前に誰かに教えてもらいたかったな〜と思うのだが、この一文が文脈の中であまりにもあっさりと書いてあったから、みんなもう既に分りきっている事なのかな〜。

こんな言葉との「出逢い」って絶対偶然とは思えない。
今日、「頂いた」この言葉に感謝。

余裕

金曜日に意を決して、やっと全プログラムを通し弾き。
夕方5時にスタートして、休憩15分入れて、弾き終わったのが6:45。

もちろん、まだまだ弾き込みは必要だが、疲れる事なく精神力、体力的には全然持ちそうなので、相当自信が付いた事は確か。ここ、数週間、生徒のレッスン以外は食事、睡眠、練習だけの修行僧のような生活をして来ただけにその成果が見えたのは嬉しい。やっとここに来て、心の余裕が出て来ました。必死さからやっと抜け出せたので、後は余裕のある演奏を目指すのみ。

言葉の重さ

BS%20Christmas%20Concert_resize.jpg先日、ピアノの生徒達の多くが通っている学校のクリスマス・コンサートに行って来ました。相当大きなホールが満席でしたが、あらゆる国の人がいっぱいで日本にいるとは到底思えませんでした(笑)。音楽はポピュラー曲もあれば、クリスマスの聖歌やジャズもあったりと多彩で、そして朗読等もあって本当に楽しかった。こういう所でセンスの良さを痛感します。


その中に20年以上前に流行って今ではクリスマスの定番曲となっている「Do They Know Its Christmas?」という大好きな曲も入っていました。イギリスでボブ・ゲルドフが当時の超有名アーティスト20名程を集めて作った曲で、アフリカの干ばつによる大ききんの悲惨な状態を世界に知らしめたあの曲です。

You are here

今日出逢った言葉。


"You are here.
There is nothing more joyful than that."

あなたがここにいる。それ以上に喜ばしい事はない。


原文は“You are there. (あなたがそこにいる)”だったが、"here(ここ)"の方が好きです。

機微

Jan%2014%20_resize.jpg 今日、「機微」という言葉を教えてもらった。これは皆さん、普通に使っている言葉なのでしょうか?友人が会話の中で『心の機微』という表現をしていたのですが、私は初めて聞いた言葉だったので、意味を聞いてとても日本らしい言葉だなと思いました。辞書で引くと「容易に察せられない微妙な事情・おもむき」と書いてあります。これを英語辞典で引いてみたら、やはり一単語ではないですし、何となく伝わりきれていない、しっくり来ない言葉になっていました。
 「容易に察せられない」というのがポイントのような気がします。人の気持ちや心の動きを察するのは本当に難しい。どんなに好きな人でも知らない間に傷つけていたり、反感を持たせてしまったりする事があります。特に「言葉」というのは相手に気持ちを伝えるのに適していないと思う事があります(笑)。気持ちを伝えるために言語は発達したのだとは思いますが...。もちろん私も今まで人にいわれた一言で凄く自信を持てるようになったり、前向きにものを考えられるようになったり、元気になったり、と言葉によって救われた事が何度もあるので、自分自身人に掛ける言葉はとても大切にしていますが、逆効果の威力もとてつもなく大きいと実感しています。本当に諸刃の剣ですね。
 辛い時期にある人にどういう言葉を掛けたらいいか分からない、でもそうだからといって何もしないわけにはいかないのが人間です。だから色々とぶつかってしまったり、悩んだりしてしまうのではないでしょうか。
 肩に手を置いてもらうだけで、一緒にいるだけで、元気や勇気をもらえる人がいます。自分もそういう人間になれたらなーと思います。

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