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古都

とってもとってもいいものを観ました。それも全然行く気の無いものだったのに...。

鎌倉に小さな映画館があり、昔の古い映画を上映してくれるので、珍しい映画や名作をお手頃な値段で観れるという本当に有難い存在です。数年前に出来たのだが、鎌倉市民としては、最近新しく出来た嬉しいものナンバーワンかもしれません。

今回観たのは「古都」。1963年製作、監督が中村登、主演が岩下志麻さん。京都が舞台の川端康成原作の映画。チラシを見た時に全然魅かれなかったので興味も持たなかったのだが、前日に「急に行けなくなったから」とチケットが手に入り、たまたま予定が無かったので行く事に。

もうオープニングの2分間で感激。効果音の使い方やショットの美しさと斬新さにまずびっくり。(音楽が武満徹さんだったという事が今日,発覚しました(笑)。そして、映画全体を通して、とにかく全てが全てが美しい。風景も人も言葉も音/音楽も着物も所作も人の心の機微も全てがため息もの。原作が素晴らしいんだろうけど、日本古来の美意識とか美学を見せられたようで、つくづく「日本って本当に凄かった!」って思わせられました。過去形なのがちょっと残念だけど、あの映画一つの極みが凄い。今、あそこまで極めているものってなかなか見掛けないかも...。

岩下志麻さんの演技も素晴らしいし、ビックリする位に美しい。正座している姿一つに感動出来ちゃいます。
パウル・クレーの絵が出て来たり、着物なのにマニキュアしていたりと、斬新な面もあるし、着物の柄や思いがけない台詞、湯豆腐を食べる時の器一つにも興味津々。一つ一つの場面が本当に飽きさせない。
途中から色々な事に感動し過ぎて、体中を感動が渦巻いていました(笑)。

全然自分から行こうと思っていなかったものに、こんなにも感動を貰えるなんて。
本当に感謝な時間でした。

聖者たちの食卓

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コンサートが終わるまで観に行くのを我慢していた映画「聖者たちの食卓」。生徒の家に行く途中にあるインディー系の映画館でチラシを一ヶ月程前に見て、「どうかコンサートが終わるまで上映していますように!」と祈るような気持ちで毎週、前を通っていた。(そうしたら、実際に上映期間が延びて観に行けました!笑)

とにかく目からうろこの連続!久々に凄いカルチャーショックを受けました。
舞台はインドの聖地、ハリマンディル・サーヒブ(黄金寺院)。ここでは毎日10万食のカレーが無料で提供されていて宗教も人種も階級も職業も年齢も関係なく、皆が公平に食事を共にする。これが500年以上受け継がれていると云うから驚きだ!この映画はその舞台裏を初公開。

プログラムの批評に
「ものすごい事がさらっと描かれているのだが被写体にとってはこれが日常なのだ。この特別感のなさがおかしくて仕方がない。だから食器を洗いながら「別に普通ですよ、こんなの」という表情さえも面白い。」

本当にみながつくづくと淡々としているのがあまりにも面白い。急ぐわけでもなく、おしゃべりもする事なく、無表情ににんにくの皮をむいたり、タマネギを切ったり、お皿を配ったり、お皿を洗ったり、床を掃除したり、お鍋を洗ったり、お祈りをしたり、食べたり。混沌としたカオスのようでいて、とてつもない秩序があるようにも見えて来る。何でもない一つ一つの動作や一人一人の人間が本当に神聖に見えて来るから凄い。

最初は驚きの連続だったが、だんだんと「あれが本来の人間のあるべき姿で自分の生活や価値観の方がおかしいんじゃないか?」と思えて来た。一人一人の人間を越えたとてつもない生命のエネルギーの力強さを感じる事ができました。ぐじぐじと悩んでいる自分もバカらしくなって来て、もっと淡々と、でもエネルギッシュに生きれたらいいな〜と思いました。

世界にはまだまだ知らない事がいっぱい!

追記:何回か思わず声を上げて、笑ってしまったのだが、その中の一つ。寺院に入る時に靴を預けて足を洗うのだが、その靴を預ける場所が写っていて、「10万人分の靴。絶対預けたら無くなっちゃいそう...。」なんて疑いの目で見ていたら、何と預けた後にローテーションで何人もの人がその一つ一つの靴を磨いていた!!食事を提供してくれる上に靴まで磨いてくれるの〜〜!!!???」と自分の懐疑心を深く反省しました...。

舞踏会の手帖

「舞踏会の手帖」というとっても素敵な映画を観に行きました。1937年制作のフランス映画。白黒映画はあまり興味がないのだが、「イタリアのコモ湖が舞台だよ」と云われ、いそいそと出掛けて行きました。

(内容を知りたくない人は以下は読まないで下さいね)

壊して、壊して

昨日、久しぶりにビデオに録ってもらっていた映画を観ました。
ミンゲラ監督の「Breaking and Entering」ー 邦題は「壊れゆく世界の中で」。ロンドンが舞台だったが、「人間」というものを深く描いていて本当に深々と感動しました。色々な意味で感動したのだが、一人の人間としての可能性や不完全さ、そして人と人とがどこまで向き合えるのか、その可能性もリアルに描いていて、本当に色々な意味で人間関係に希望を持ちました。

よく日本の結婚式で取り挙げられるサンテグジュペリ(星の王子様の作家)の言葉「愛とは、お互いに向き合う事ではなく お互いに同じ方向を見つめる事である」。私はいつもこれに疑問を持っていて、どうしてもそうとは思えなかったが、まさにこの映画は、サンテグジュペリの言葉をくつがえしてくれた。自分といかに向き合うか、そして人と向き合うか、そしてその先にある凄い可能性を描いていてくれていたので、本当に嬉しくなりました。

「何かが壊されたり、壊れた時には、すぐに直そうと思ってはいけないのかもしれない。その時はどんどんと壊さないといけないのかもしれない」と主人公がいう台詞があった。台詞はここで終わってしまうのだが、映画の題名や話の内容とも繋がって、実はどんどん壊してこそ、その先の一歩を踏み出せる事を暗示している、と云う風に取りました。ぶつかって、ぶつかって、壁にぶち当たっているようにもがいていたとしても、逃げ出しさえしなければ、先には確かに何か道が開かれる。そこまで、人との繋がりを追求する人間が他にもいると思えるだけで、孤立感がなくなりました。

この『何かが壊されたり〜』という言葉を考えていたら、自分の今のピアノにも繋がってきました。今はとにかく今まで積み上げて来たものを壊して壊して、ゼロの状態にするために練習しているようなもの。特に何年も弾き込んであった曲は自然ともう形は出来てしまっているので、一つ一つの音を分解して、再び作り上げているような作業をしている(笑)。ちょっとでも気を抜くと、あっという間に意図していない昔の弾き方に戻ってしまうので、異常に集中力を使っているように思う。練習中はそんなに感じないのだが、練習の後、10分くらい経つととてつもない疲れがドーッと出るので、生徒のレッスンに行く電車の中では自分でもビックリする位深ーい眠りに入っちゃっています(笑)。とにかく、こんなに練習時に集中出来るのは感謝な事です。目指している演奏に近づいているからだと思いたい。

追伸:「壊れゆく世界の中で」は音楽も素敵。不思議な気分になります。
上記のリンクからオフィシャルサイトに行くとメニューの右横にサウンドトラックがあり、順次聞けるようになっています。

読めなくて

Napoleon%20Dynamite_resize.jpg不思議〜な映画を観ました(笑)。生徒さんが冬休みにいくつかDVDを貸してくれたのだが、その中の一つ、「バス男」(原題「Napoleon Dynamite」)という2004年のアメリカ映画。全米でたった6館で始まった公開が口コミで驚異的ヒットになり、ついには1000館以上に広がったらしい。(ちなみに邦題の「バス男」は日本でヒットした「電車男」に便乗して促販目的で付けれたらしいが全く関係ない。おまけに日本では未公開。)

観ながら、ファッション含め、相当前の映画と思い込んでいたが、途中でネットチャットの話が出て来たので、DVDの箱を確認したら結構最近の映画なのに驚いた。最初は「全然ついていけないかも...。」と思っていたが、話があまりにも読めないので、結局最後まで観てしまった(笑)。見続けてしまったもう一つの要素は、主人公の目がほとんどといっていいほど画面に映らないこと。いつも伏し目がちの上に大きな眼鏡を掛けているので、全く主人公の心情も読めない(笑)。いかに目が多くを語るのを頼りにしているか、そしてその目を観たい欲求がいかに大きいかを実感した(笑)。

このDVDは生徒さんのお母様が「どうかしら...?」といいながら差し出して下さったが、側にいた生徒のE君はぼそっと「みほ先生はあんまり好きじゃないと思う」と云っていたので、どんな映画か興味津々だった。声を出して笑ってしまったシーンもいくつかあって結構面白かったが、さすがに好きな映画の一つには入らないかも...。E君、よく私の事を分かっていらっしゃる(笑)。

ウォー・ダンス

War%20Dance_resize.jpg凄い映画を観て来ました。実は3人程に「一緒に観に行こう!」と誘ってそれぞれに違う理由で断られました(笑)。結局一人で観に行きましたが、しかし、このブログを読んで下さっている皆さんにはどうしても見て欲しい映画です。

「ウォー・ダンス」という映画。ウガンダ内戦で平和な日本からは想像もつかないような心の傷を負った子供達が音楽やダンスを通して生きる力や喜びを取り戻して行くというドキュメンタリー。子供達が抱えている過去はあまりにも壮絶で私がここで言葉にする事自体が申しわけない。その上に痛ましいのが、家族を亡くした子供達が自分だけ生き残ってしまったという罪悪感を持って生きているという事。そんな子供達が奏でる音楽やダンスはもう「生」そのもの以外のなにものでもなくなっている。全身全霊とはこういう事だ。

色々と言葉にしてしまうと、現実が凄すぎてどうしても陳腐に聞こえてしまうので、ぜひサイトを見てみて下さい。ウォー・ダンス オフィシャルサイト(東京都写真美術館で確か12月12日まで公開。休館日があるので注意)

107分の映画、泣かなかったのは15分足らずだったと思うので、相当の覚悟はいると思うが、本当に出来るだけ多くの方に見て頂きたい。これがほんの数年前の事実、そして今コンゴ共和国も同じような危機にあるわけです。今すぐ何が出来るかという答えは出て来なくても、日々の生活の中での考え方や感じ方、人との接し方が変わるはずです。

P.S. I Love You

衛星放送でやっていた「P.S.」という映画を観たが、久しぶりに相当自己中心的(意地悪?)な人が主人公の映画でした(笑)。ラブストーリのような気がしないでもないけど、何か不愉快な気分になってしまった。(ちなみにP.S.とは手紙等の最後に書く「追伸」という意味です。)
 
 これとは反対に、先日飛行機の中で観た『P.S. I Love You』の映画はとっても幸せな気分にさせてもらえました。日本では10月公開らしいが、本の方は原作を林真理子さんが翻訳していて、ベストセラーらしい。恋人同士の愛の深さにも感動するが、それだけではなく彼らを取り巻く家族や友人達の愛にも感動します。私たちは本当にそれぞれ色々な人達とのそれぞれ違った形の愛で支えられて生きているんだな〜としみじみ思える映画です。

 

人と人

大忙しの一日だったが、最後はファゴットのHさんのコンサートに。オーボエとファゴット、そしてピアノとのアンサンブルでのプログラムでした。私も何年か前にHさんと一緒に同じ編成のコンサートをしましたが、それはそれは楽しいコンサートでした。リハーサルからコンサートに対する思い入れが三人ともに一致していたので,本当に充実した準備期間、そしてそれによって作り上げた信頼関係で遊ぶ余裕がありながらも、隙のない本番だったように覚えています。

今日のコンサートでは,一緒に演奏したフランセのトリオも入っていたので楽しみにしていました。とても,音が良く解け合っていて,耳に優しいアンサンブルでした。同じ曲、そして演奏者も一人は同じなのに、こんなにも違うものができるのだな〜と、改めて曲の懐の深さを見せつけられました。

シンドラーのリスト

                            クラクフの聖マリア教会
Krakow%20Church%20resize.jpg先日テレビで映画「シンドラーのリスト」をやっていた。ずっと観たいと思っていた映画だったが、なかなか3時間という長い時間を取るチャンスがなく今に至ってしまった。
 昨年の夏、アウシュヴィッツに行くのが目的でクラクフというポーランドの一番近い街に行きました。ついこの間歩いた町並みやミサに与った教会、シナゴーグが集中してるユダヤ人地区、そして強制収容所が映画にそのまま映っていたので、とても複雑な思いでした。

Ray

今日はテレビでレイ・チャールズの伝記映画『レイ』をやっていた。これは、以前飛行機の中で見始めたはいいが、映画が終わる前に目的地に着いてしまい最後まで観れなかったので、いつか全部観なくては、と思っていた(笑)。
 アフリカ系アメリカ人の全盲のミュージシャンの生涯は本当に壮絶。たった、50〜60年程前の話だがアメリカで人種差別がまだまだ顕著に残っていた時代の中で威厳を持って自分の音楽を信じて生きていく様が凄い。(たった半世紀でアフリカ系の大統領候補になり得る人物が今熱戦を繰り広げている事実も凄い!)