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ピアノマニア

震災から一年が経ち、少し自分の中でも気持ちの切り替えが出来るようになりました。
どうしてもブログも震災関係以外の事を書くのに気が引けていたが、これから少しずつ自分に出来る支援を模索しながらも音楽の事もないがしろにしないようにしたいと思っています。

なので、今まで溜ってしまった音楽の話を少しずつ。
まずは、数カ月前に珍しく映画館まで足を運んで観た「ピアノマニア」という映画。
超一流のピアニスト達のコンサート会場でのピアノを調律する調律師を追いかけたドキュメンタリー。確かにとってもマニアック(笑)。調律の腕は確かでも相当変わった人だったように思う。

私にとって調律はとても興味のある事なのだが、何しろ知識があまりないので、自分の勘だけに頼っている所がある。どういう調律が好みになのか具体的にいえないのがなかなかもどかしい。コンサートをしていると様々な調律師さんにお会いするのだが、個人的にはもう30年近く調律をしてくださっているKさんに絶対的な信頼をおいています。Kさんは自分の好みに近い状態にして下さるので、後は最終的な微調整をお願いするだけで自分の理想にかなり近い状態になります。ときどき調律した『音』だけで感動出来る程に素晴らしい時があって、それは自分が実際にピアノの近くに行って聞かなくても、隣の部屋で聞いていても「今日は凄いかも」と調律が出来上がる前に分かる時があります。

それにしても、映画の中で、ピアニスト達が好き放題云っているのには相当心を痛めた。自分もかなりKさんにわがままを聞いて頂いているので、思い当たる事がいっぱい。3時間調律して頂いた後に微調整に1〜2時間以上掛かる事もしばしば。。。本当に申しわけないと思いつつも妥協出来ない所がまた困りもの。でも、調律一つで自分の弾く感覚も状態も変わるのでどうしても譲れない所が出て来るのは確か。本当にいつも一生懸命にリクエストに応えようとして下さるKさんを筆頭に調律師さん達に感謝です。

この映画で色々なピアニストがコメントしていたが一番的確と思ったのがブレンデルの言葉。「理想的な調律は音量と音質が全部均一のもの」と云っていた。これは当たり前のようで、意外と出逢えないものです(笑)。何ヶ月か前にピアノを調律して頂いた後に、いくつか気になる音があって、微調整をして頂いているうちに、調律師さんが「海老原さんは音量を均一にしたいんですね」と。あまりにも当たり前の事を云うのでびっくりしました(笑)。音量が均一に出るように調整した上で調律をしているのかと思いきや、意外と「音量」というのは重要視されていないのかも、と新たな発見がありました。音質が違うと、微妙に音量も違うような感覚に陥るので、なかなかその兼ね合いが難しいのだが。

この映画で超ド派手なジェスチャーで有名なランランも登場。音楽というより、そのジェスチャーが気になり過ぎて、あまり今まで好きではなかったのだが、素顔で話して、リハーサルをしているランランは誠実そのもの。好感を持てるようになりました。
これもこの映画の収穫の一つ(笑)。

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