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壊して、壊して

昨日、久しぶりにビデオに録ってもらっていた映画を観ました。
ミンゲラ監督の「Breaking and Entering」ー 邦題は「壊れゆく世界の中で」。ロンドンが舞台だったが、「人間」というものを深く描いていて本当に深々と感動しました。色々な意味で感動したのだが、一人の人間としての可能性や不完全さ、そして人と人とがどこまで向き合えるのか、その可能性もリアルに描いていて、本当に色々な意味で人間関係に希望を持ちました。

よく日本の結婚式で取り挙げられるサンテグジュペリ(星の王子様の作家)の言葉「愛とは、お互いに向き合う事ではなく お互いに同じ方向を見つめる事である」。私はいつもこれに疑問を持っていて、どうしてもそうとは思えなかったが、まさにこの映画は、サンテグジュペリの言葉をくつがえしてくれた。自分といかに向き合うか、そして人と向き合うか、そしてその先にある凄い可能性を描いていてくれていたので、本当に嬉しくなりました。

「何かが壊されたり、壊れた時には、すぐに直そうと思ってはいけないのかもしれない。その時はどんどんと壊さないといけないのかもしれない」と主人公がいう台詞があった。台詞はここで終わってしまうのだが、映画の題名や話の内容とも繋がって、実はどんどん壊してこそ、その先の一歩を踏み出せる事を暗示している、と云う風に取りました。ぶつかって、ぶつかって、壁にぶち当たっているようにもがいていたとしても、逃げ出しさえしなければ、先には確かに何か道が開かれる。そこまで、人との繋がりを追求する人間が他にもいると思えるだけで、孤立感がなくなりました。

この『何かが壊されたり〜』という言葉を考えていたら、自分の今のピアノにも繋がってきました。今はとにかく今まで積み上げて来たものを壊して壊して、ゼロの状態にするために練習しているようなもの。特に何年も弾き込んであった曲は自然ともう形は出来てしまっているので、一つ一つの音を分解して、再び作り上げているような作業をしている(笑)。ちょっとでも気を抜くと、あっという間に意図していない昔の弾き方に戻ってしまうので、異常に集中力を使っているように思う。練習中はそんなに感じないのだが、練習の後、10分くらい経つととてつもない疲れがドーッと出るので、生徒のレッスンに行く電車の中では自分でもビックリする位深ーい眠りに入っちゃっています(笑)。とにかく、こんなに練習時に集中出来るのは感謝な事です。目指している演奏に近づいているからだと思いたい。

追伸:「壊れゆく世界の中で」は音楽も素敵。不思議な気分になります。
上記のリンクからオフィシャルサイトに行くとメニューの右横にサウンドトラックがあり、順次聞けるようになっています。

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