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舞踏会の手帖

「舞踏会の手帖」というとっても素敵な映画を観に行きました。1937年制作のフランス映画。白黒映画はあまり興味がないのだが、「イタリアのコモ湖が舞台だよ」と云われ、いそいそと出掛けて行きました。

(内容を知りたくない人は以下は読まないで下さいね)

とにかく優雅の一言。全てが美しい。まず「舞踏会の手帖」という題名からして素敵すぎる。今で云う「ブラックブック(過去の恋人達の電話番号が記されている手帳)」を想像していたのだが、とんでもない!初めての舞踏会(今で云えばデビュタント舞踏会だろうか)で踊った相手の名前が書いてあるもので、「第1のダンス 〜〜氏」と今の時代では想像出来ない粋な手帖です。

画面が荒く、音も割れてたりするのだが、オープニングの題名や監督、俳優名を記した字体さえもが素敵。そして、俳優陣の髪型からファッションもため息もの。回想の中で出て来る舞踏会の場面がやはり夢のように美しい。男の人の燕尾服にフリルいっぱいのシャツも嫌みがなく、そして女の人のシフォンのようなドレスは今目にする事がありません。ダンスする時のドレスの生地の動きというか流れ方がゆっくり(!)で何とも優雅。ああいう生地は今存在するのだろうか...?

そして、ヨーロッパで大きな貴族の屋敷やお城に行くと、豪華なシャンデリアが天井からぶら下がっていて「当時はこれにロウソクが灯っていました」と説明されて、きっと素敵だったんだろうな〜なんておぼろげながらに想像したものだが、まさにこのロウソクの灯ったシャンデリアが出て来ました。白黒ながらそれはそれは素敵でした。

舞台になっているコモ湖も今と変わらず本当に美しいし、髪にかけるパーマのシーンやキャバレーでのダンサーやギャングのシーンなどなど、身を乗り出して見入ってしまいました。

名優揃いという事だが演技も本当に素晴らしい。繊細かつダイナミックで、大袈裟ではないのに心情が本当によく伝わって来る。人間がいかに感情的に豊かかを目の当たりにしました。

そして、肝心の話はというと...こんなに悲観的な映画は観た事がない、という程に人生に対して悲観的な映画でした。今ではあんなに希望のない映画は作られないのではないだろうか?それがまたとっても新鮮だったのだが...(笑)。主人公の女性が初舞踏会で一緒に踊った相手を20年後に一人一人尋ね歩くのだが、本当に幸せそうにしていたのは床屋になった一人くらいで、後は死んでしまったか、どうにも落ちぶれてしまったかのひどい有様。初舞踏会が16歳の時なので、20年後というと36歳。人生、そんなに早くに諦めないで〜!と云いたくなってしまう。

何もかもが新鮮だった「舞踏会の手帖」。知らない世界を観るのは本当に楽しい!

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