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その気になれば

常備しているルドゥーテのカード
redoute%20cards_resize.jpg昨日、薔薇の版画で有名なルドゥーテの展覧会を見に渋谷まで。良くカードにもなっている彼の作品ですが、私も彼の版画のカードを人に送る事が多いので、とても親近感のある画家です。バラも大好きなので展覧会が開催される前から楽しみにしていたが、今日が最終日というのを発見して急遽昨日行く事にしました。

 展覧会や美術館に行く事が多いが、海外の美術館はとてつもなく広い上に、一つ一つが凄い名画だったりするので慣れない頃は最初の数部屋にじっくり時間を掛けてしまい、目的にしていた絵に辿り着く頃には疲れ切って感動する気力さえも残っていない状態でした。なので、今ではさーっと見るようにして、目に留まったものの前で止まって集中して観る癖がついています。

redoute%20%E3%83%81%E3%83%A9%E3%82%B7_resize.jpg今回のルドゥーテ展もそのように少し絵から距離を置いた所から、ざっくりと見ていました。見慣れた絵も多く、全部薔薇なので、好きな絵の前で少しだけ止まって見るような感じでした。「本物の薔薇を見た方が感動があるかも...。」なんて思いながら(笑)。

 しかし、一つの絵の前で改めて思いっきり近づいて集中して観た時に、その絵の凄さに気づきました。とげ一つ一つの細かさ、そして茎の色遣いのあまりの繊細さに驚かされました。そして、急に葉っぱのふちの細かさ、そして花びら、雄しべ,雌しべの一つ一つがいかに丁寧に描かれているかに感動し出しました。解説にも書いてあったが、一筆たりとも機械的に描いている線がなく、本当に線、点一つ一つに愛を感じました(笑)。これは、きっと音楽でいえば、一音一音に愛を感じる感覚があるのと同じです。

roses%20%E9%89%A2_resize.jpgそんな訳で、途中でこれらの絵の凄さに気づいたので、また最初の絵から全て一つ一つ丁寧に観る事にしました。その気になって観ると、気づかなかった事がいっぱい(笑)。実はこれらの版画は全て図鑑のために作られたものなので、至近距離から見るために作成されたものでした。やはり「見る距離」というのがとても大事だったように思います。
 外に咲いている花を見るのと同じくらいの距離でこれらの版画を見ると、色の混ざり具合や輪郭の線が自然に溶け込んで、本当にみずみずしく、生きているよう。おまけにそれぞれの花の「ポーズ」のセンスが素晴らしくまるで「人格」を持っているようでした。ルドゥテの薔薇に対する愛情が本当に伝わって来ました。
 
 展覧会ではルドゥーテだけでなく、他の作家の版画や絵も展示してありましたが、彼の作品は気品と優雅さ、そしてテクニックとセンスにおいてずば抜けていました。その違いの一つの要因は花に対する愛情の深さと思っています。

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