夏:素晴らしきLiz
色々と調べてくれるLiz
ロンドンに長期滞在する時のピアノの練習場所に苦労していた時に、友人の紹介で個人宅で練習出来る場所を教えてもらいました。紹介して頂いた家は絵や彫刻、そしてヴェネチアングラスのシャンデリアの掛かっている素敵な家。ピアノの置いてある部屋は2階にあったので日の光も入って、本当に気持ち良く、集中した練習の出来る場所でした。家主のLizはとっても気さくなおばさんで、彼女も絶対に練習の邪魔や余計な話をする事がなかったので、3年程は朝の「おはよう」と帰りの「さようなら」という言葉を交わす程度でした。
しかし、数年前にそこで練習をする必要も無くなり、お世話になったのに全然会わなくなってしまうのも残念に思い、お茶に誘ってみましたが、彼女は予定が詰まっていたので「申しわけないけど、うちに来てもらえないかしら?」と、逆にお茶に招いて下さいました。
いつもは1階と2階の部屋しか見た事がなかったのだが、初めて、彼女が居住スペースにしていた地下に招かれました。とにかく、本の多さにびっくり。そして、話し出すといかに彼女が凄い人かが分かって来ました。「能ある鷹は爪隠す」とはこの人のためにある言葉と思う程に知識が豊かな人で本当に次から次へと面白い話をして下さるので、いつまでも帰りたくなかった。
お母様がダンサーで、お父様がピアニスト。お母様はダンス・メソードの創立グループにいらした事で、ヨーロッパでは結構名が知れていたようで色々な画家のモデルにもなっていたそう。戦時中、パリの画家達が彼女達のロンドンの家に避難したそうだが、その中に藤田嗣治もいたという話をさらっとしてくれる(笑)。このお茶をきっかけに、とっても親しくなり、今ではロンドンで会うのが最も楽しみな一人です。
Liz自身とても勉強家で、(もう70近くだと思うが)数年前からイタリア語の勉強を始めて、Aレベルの試験(大学入試程度!)を受けて、受かったらしい。私がイタリアのコモ湖に行く話をしたら「今、ちょうどコモ湖を舞台にした本を読んでいるのよ!」とイタリア語原文の分厚い本を見せてくれた。
ダンテの「神曲」の短期集中コースを受けていたり、プルーストも4年かけて、フランス語の原文で読んだ話などなど。とにかく凄い...。
今回は私が好きな劇作家のMichael Frayne (マイケル・フレイン)の話で盛り上がり、大きな事典を取り出して来て、色々と調べてくれました。そして、もう一つ感激したのが、彼女がつい最近、孫のために読んだという絵本の話。Liz自身が小さい時に読んでいた革張りのボロボロの絵本を見せてくれたが、絵も文も突拍子もなくて、本当に面白い!孫も大喜びだったそうだが、本が大きくて重いので、孫と一緒に古本屋に行ってもっと小さいサイズの物がないか探しに行ったそう。おばあちゃんと孫が二人で古本屋に行った光景を想像するだけでも、ほのぼのとしてしまうのだが、その古本屋でその本が見つかったというから、また感動しちゃう(笑)。
やけに長いブログになってしまったが、とにかくLizは話の宝庫。そして、知識だけでなく、とてつもなく大きな「心」のある彼女と一緒に過ごす時間は本当に何にも代え難い。
「The Book of Nonsense (ナンセンスの本)」↑
子供を見ていて、よく思うのだが言葉の「音」に対してとても敏感。この本は正にそこを付いていて、韻のふみ方が面白い。絵も相当奇抜!→