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今ひとつ

先日,テレビで将棋棋士のドキュメンタリーをやっていました。世代交代を象徴する羽生名人と若い渡辺明竜王の二人を取り上げていたが、棋士の思考の仕方や勝負に関して色々と知る事が出来て、将棋をよく知らないながらもとても興味深かった。将棋はやはり真剣勝負だから面白い。最近、テレビ等でよく目にするクラシック音楽は,心地よさや楽しさや癒しを安易に提供してくれるが、本当にクラシックの真髄に迫ろうと思ったら,真剣勝負以外の何ものでもないように思う。なので、将棋の世界はとても参考になります。

色々と面白いと思った事があったのだが、一つは一回間違った、というか失敗した手を打ってもそれで勝負が決まる訳ではない、と初めて知りました(笑)。一回まずい手を打っても意外と挽回出来るらしく、2〜3回はチャンスがあるらしい。私はてっきり一回の失敗も許されないのだと思っていた。

もう一つはやはり棋士によって癖があるらしい。それも打つ手というよりも、攻め方の特徴。「中盤から終盤に追い上げて来る」とか、「終盤で粘る」とか。そして、渡辺棋士はパソコンを使って自分のだけではなく、殆ど全ての勝負のデーターを取り入れて研究しているらしい。

一番「なるほど」と思ったのが渡辺棋士の言葉。羽生名人との勝負で追いつめに追いつめられ、「今ひとつ」の手を打ち続ける羽目に。苦しい中で「今ひとつ」の手を続けていたが、ある時に危険だけど『今ひとつだけど「好きな手」』を打とうと決心。それまでは『今ひとつだけど「嫌いな手」』だったらしい。そしてこの一手がきっかけでこの勝負,結局勝ったとの事。

この言葉を聞いて,自分の今までの音楽もこうだったのではないかと妙に納得してしまいました。今、やっと自分の手から出て来ている音楽が自分がまさにやりたいものに近づいている実感がある。では、今までは何をやっていたんだろうか、と思うと「今ひとつだけど、自分の好きな音楽」ではあったと思う。自分の嫌いな音楽を演奏する事はなかったが、いつも「ちょ〜っと違うんだよな〜」という感覚がぬぐい去れなかった。渡辺棋士の「今ひとつだけど好きな手」が正にそれを言い当てているように思いました。

音楽は自分との戦いだが、勝負の世界から学ぶ事が多い。勉強になります。

追記:昨日、またテレビで渡辺棋士がリーグ戦で会場入りする所を映していたが、赤い靴にバーバリーのコート、そしてコートを脱いだら、ネクタイもワイシャツも素敵でびっくり。顔は地味な感じだけど,オシャレなんですね(笑)。

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