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偉大なる芸術家

Tchaikovsky%20Trio_resize.jpg4月にコンサートする事が決まり、チャイコフスキーの「偉大な芸術家の思い出に」というピアノ・トリオの曲を練習している。50分近い長い曲で楽譜にすると90ページ近くになる。ニコライ・ルービンシュタインという音楽家の死を偲んで書いた曲なのだが、チャイコフスキーのルーピンシュタインに対するとてつもない尊敬と亡くなってしまった無念さがひしひしと伝わってくる。
 あの広大なロシアで偉大なチャイコフスキーが偉大と思っている芸術家に思いを寄せて作られた曲は時間的にも長大なのだが,とにかく音楽的なスケールが大きい。普通は練習して、曲を手中に収めていくうちに曲が短く感じられていくのだが、この曲は弾き込めば弾く程、曲が広がっていってしまい、改めてその壮大さを知らしめられる。日本に住んでいる普通の人間があのスケールまで自分を持っていくのは至難の業。
 おまけにテクニック的にも相当難しく、常に自分の能力の100%以上を要求されているような気がします。練習しながらいつもハリソン・フォード主演の「逃亡者」という映画を思いだしてしまう。次から次へとH.フォードに災難が降り掛かっていたように、これでもかという難関が次から次へと待ち受けているのです(笑)。

Tchaikovsky_resize.jpg実は今度のコンサートで演奏するプログラムは1年半前に日本でも一度弾いている。しかし、その時はいかに大変なプログラムか,という事に自覚がなく、準備が完全に計画不足であった。おまけにチャイコフスキーは練習しても手に入っていくどころか、実際に思っていたよりもさらにさらに音楽が大きくなっていってしまうためにどんどんとやりたい事が多くなっていってしまい、最後まで曲を自分のものにする事が出来なかった。
 たまたまコンサートをした二日後に演奏したホールの前をバスで通ったのだが,あまりに不本意な自分の演奏を思い返していたら、知らないうちに涙が出てきた。
 今回は絶対曲に見合った演奏をしたい。『偉大な芸術家の思い出に』の『偉』にだけでも近づけるようにしたいと思っています。

追記:コンサートは4月28日にロンドンのレイトン・ハウスという所です。詳細が決まり次第Informationページにてお知らせ致します!

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