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音楽的財産

昨日、本との出会いについて書いたが、音楽との出会いも思わぬ所にあります。曲ももちろんそうだが、演奏家に関してもコンサートを通しての出会いも様々。
 私が最も好きなピアニストとの出会いも不思議でした。ロンドンに行くまで、殆どコンサートに行く事はなかったのだが、行った途端にせきを切ったように母が連れ回していました。そんな時に、ホールで何十枚とチラシが置いてある中から、シューラ・チェルカスキーというピアニストの地味な白黒の写真のチラシが遠くから見えて、恐れながらも『上手そうだな〜』と何となく思い、自分で一人分のチケットを買いました。Cherkassky_resize.jpg
ホールの一番後ろで聴くのが当時好きだったので、3階の一番最後列の真ん中の席に。コンサートは満席ではなかったので私の前が何列も空いていたのですが、逆にとても音楽に集中出来ました。そして、本当に今までにない感動を味わいました。音楽がここまで人を幸せに出来るものなのかと、本当に驚いた。自分の目指すものをここで見付けました。そして、今でもその時の音と音楽と体中に感じた感動は忘れられません。
 チェルカスキーは日本にも毎年来ていましたが、本当にいつも楽しみに待っていました。そして、コンサートに行くと、いつまでも終わって欲しくない、本当に他では味わえない感動をおぼえていました。
 10年程前に彼は亡くなってしまいましたが、彼の演奏の話を聞く事もなければ、人に薦められた事も後にも先にもありません。彼の音楽との出会いは導かれたものとしか思えません。本当にあのような素晴らしい演奏を生で何回も聴けた事は自分にとっては音楽的財産です。本当に感謝です。

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