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宇宙の鼓動

先日、トッパンホールでのKさんのリサイタルへ。オリヴィエ・メシアン生誕100周年記念コンサートで「幼子イエズスに注ぐ20のまなざし」の第2回目のコンサート。この曲は全20曲からなり、第1回目に最初の10曲、そして、今回は後半の残り10曲。難曲の上、超大曲なのでこのプログラムに挑むだけでも、凄いのだが、それだけにとどまらず、本当に音楽の核心にせまった素晴らしい演奏でした。

十曲のうち、一曲以外は初めて聴くものばかり。それぞれの曲には副題が付いていて、この時期にぴったりの「ノエル(降誕祭)」、「予言者、羊飼いと東方の三博士のまなざし」などの曲が聴けるとあってとても楽しみにしていた。解説にも「ノエル」では鐘の音が鳴り響くと書いてあり、つい先日友人が貸して下さったノートルダム寺院のクリスマスCDで聴いた静かな純粋な鐘の音を想像してしまったが、実際は全然違っていた(笑)。地が揺れ動くかごとくの不協和音の嵐だった。しかし、考えてみたらクリスチャンにとっては、神様がこの地上に幼子イエズス・キリストとして降り立って来る事(降誕)は天をも揺るがす出来事なのだから、すぐに自分の先入観をかき消す事が出来ました。

唯一、知っていた曲が第15曲の「幼子イエズスの口づけ」。これは和音が静かに進行しながら奏でられ、20曲の中でも一番旋律的で耳に優しい気がします。
 
大学の時の教授の薦めでメシアンは他にも小曲を何曲か弾いているが、この曲は大学時代に校内のコンクールで弾くために勉強した曲。和音が好きなので、この曲も最初から好きだったが、やはり現代曲なのでとにかく譜読みに苦労しました。夏休み中に相当頑張ったのを覚えています。大変な曲なので、当時、生徒同士の弾き合いのクラスで弾くと、暗譜しているというだけで褒められていた。その時は複雑な思いで聞いていたが、今回この曲を聞いて「よく頑張って暗譜したな〜。」なんて思ってしまいました(笑)。コンクールでは結局三位かなんかに入賞出来たので、いい思いのある曲だが、一から見直すのが大変なのでなかなかコンサート・プログラムに入れられずにいます(笑)。

それにしても、今回のコンサートを聴き終わって思ったのが、音楽を聴いて来たというよりも、「音」を聴いて来たような感覚だった事。人間的な音楽というよりも、宇宙の脈や鼓動みたいなものをメシアンは体現しているような気がします。そしてクリスチャンであるメシアンにとってはその広大なる宇宙も神の意思によって司られているのだという、その信仰の大きさを目の当たりにしたように感じました。

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