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イギリス旅行記:A View from the Bridge

Duke%20of%20Yorks_resize.jpgせっかく来たロンドンなので、唯一夜に予定を入れていなかった日に演劇を観に行く事に。

今回はA.ミラー(マリリン・モンローの夫としても有名)の「A View from the Bridge」という近親相姦を匂わせる愛憎劇。主人公の役者Ken Stottに対しての批評が素晴らしかったので、この劇に決めたが、本当に素晴らしかった(笑)。相当に深刻で重い内容だが、開演の前に「俳優陣は感情的にとても神経を使うので、どうぞ静かにご鑑賞下さい。」との放送があった。今までも色々と深刻な劇を観て来たが、このような前置きのアナウンスは初めて。

後から履歴を見たら、主人公が以前に映画で観て好きだった俳優だったのを発見したのだが、強烈な素晴らしい演技だった。

私は今回のコンサートを振り返って、色々と考えさせられる事があったが、その一つに準備の最終段階で相当精神的に辛くなってしまっていた事が気になっていた。こういう状態になってもコンサートをするべきなのかと自問自答していたが、このKen Stottの演技を観て、相当自分の中での答えは出た気がします。

A%20view%20from%20the%20Bridge_resize.jpg色々な音楽家がいて、楽しく、日常生活の延長で演奏出来る人もいると思うが、やはり自分はそうではないし、自分が音楽に求めているのは、自分にとっては簡単に手に入る物ではない事を再認識しました。掘り下げに掘り下げて行って追いつめられた状態に存在する世界があって、そこに自分は感動したり、人が感動したりするのだと思う。

Ken Stottの演技には観客として大感動しつつ、「自分の魂も心もヘズッてまで毎晩舞台に立つのはさぞかし大変だろう...」と思わずにはいられなかった。本当に鶴の恩返しのよう。凄い俳優だと思う。彼を見て、「自分が求めている音楽もきっとここまでしないと辿り着かないのだろう」、と確信して、勇気が湧いて来ました。人をあれだけ惹き付けて、感動させられるものが今の自分ではまだ出来なくても、目指したいとは思う。

余談だが、この日は高校生と思われる子達が団体で来ていた。あれはきっと学校の引率だと思うが、こんなに素晴らしい演劇(内容も俳優陣も)をこんなに若い時から見れるというのが本当にうらやましい。選択肢のいくらでもあるロンドンなのに、こんなに深刻で重い内容のものを選んでいるところも凄いと思う。終わってからの観客全体が興奮状態だったが、年齢問わず、ずば抜けて良い物はちゃんと伝わっている事を目の当たりにしました。

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