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立ち位置

昨日、オーボエとピアノとのバランスで「ゾーン」なるものの発見について書いたが、色々と考えているうちに、実はソロのピアノにも当てはまるのでは、と思い始めて来た。

ここ数年、ソロのピアノにおいても、自分がどのような位置に立って弾くべきなのかというのが最大の課題であった。主観と客観のバランス。感情移入をしながらも自己陶酔に陥る事なく音楽を見失わないようにする事は本当に難しい。

学生時代にブレンデルがマスタークラスではなく、講義に来た事があった。今思えばとても不思議なセッティングだったが、アカデミーのDukes Hall (デュークス・ホール)というかなり大きなホールの舞台に100人程の生徒がオケのようにピアノの前に座っているブレンデルを囲んで座って聞く形を取っていた。

講義のテーマは特になく、生徒がする質問にプレンデルが答えていくものだった。その中にやはり「ピアノを弾く時の主観と客観のバランスはどのように取ったらいいのだろうか?」というものがあった。ブレンデルも「いい質問だ。これは音楽家にとって一生つきまとうテーマ」と云っていた。

内田光子さんも何かのインタビューで自分の半分は観客の真ん中に、半分はピアノの前にいるバランスで聴くようにしていると云っていた。そうしたいのは山々だが、これはなかなか出来る事ではありません(笑)。

ソロのピアノ演奏において、自分は音楽の中にどっぷり浸かり過ぎたり、冷静になり過ぎて、完全に音楽の外にでてしまったり、となかなか音楽に対しての自分の立ち位置と云うのが見いだせていなかった。しかし、今回のオーボエとのリハーサル、そして特に先日聴いた野平一郎さんの完全なる演奏を聴いて多くのヒントを得たような気がします。主観と客観のバランスが見付かりそうな気配。相当大きな前進になるはずなので、楽しみになってきました。

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