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アメリカ旅行記:心の変化

Broadway_resize.jpgマンハッタンに落ち着いて何日かいる事が出来たので、生活のリズムみたいなもの出来てきました。手頃で快適な練習スタジオも見付かったので、朝から午後に掛けては数時間練習。気分もすっきりして午後は観光なり人に会うなりして、日本では出来ない事を満喫していました。飛行機に乗ってしか会えない人がいるというのはなかなか辛い事ではあるが、だからこそ一緒に過ごす時間が本当に大切に思えて、一瞬一瞬の密度が濃い。

アメリカに到着してから一週間程でとても興味深い事が起こりました。完全にリラックスした状態で人と会ったり、周りの事を吸収したり、そして四六時中アメリカ英語だけで過ごしているうちに、急に小さい頃に英語しか話せなかった自分の感覚を思い出したのです。英語が本当にスラスラと出て来るようになり、従妹のKとも英語で話す事も多くなりました。自分の意思や気持ちを何の壁もなく伝える手段が,自分にとってはアメリカ英語だった事を再確認すると共に、日本語ではワンクッションを置いてしか気持ちを伝えていないのだと気付いたのです。

そして、当時持っていた過剰な自信も感覚として急に思い出しました。アメリカ時代は現地校では何でも得意だったというか、何でも簡単に出来るような気がしていたし、周りも褒める事が人を延ばすと信じているような教育なので、子供としてはそれを素直に信じていたのだと思います(笑)。8歳で日本に帰って来た時にはカルチャーショックと共に日本語が話せないがためのとてつもない自信喪失を経験し、二度とあの怖いものなしの自信を取り戻す事がありませんでした。しかし、それが今回の旅行中に急に思い出せたのです。自分でもびっくり。数日間、自分が云いたい事は云いたい瞬間にパッと言葉になって出て来るし、自信から来る迷いもないので何とも気持ちが良かったです(笑)。

しかし、数日もするとまた面白い変化が。我ながら、相手の気持ちや云った後の影響を考えずに物を云うのも本当に考えものだな〜ハッとしたのです。あの8歳の自信満々のまま大人になっていたら本当に自己中心の嫌な人間になっていただろうな〜と思う事が出来ました。Rockerfeller%20Center%20Tree_resize.jpgいつも何となく、「あの自信満々のまま自分が育ったら、もっと強いピアニストになっていたかな〜」と思ったりしていたので、今回の発見は自分にとってはとても大きな事でした。あの自信喪失の経験があったからこそ、人の気持ちを考えたり、感じたり出来るようになったのだと思うし、音楽家に最も重要な要素だと思っています。

自分がこの人生で経験している一つ一つの事が本当に意味があって、自分の糧になったり、自分を成長させるためにあるんだという確信を持てたというのは私にとっては今回の旅の一番の収穫でした。

小さい時にはアメリカにいた事、そしてその後日本やイギリスに住んでいた事は本当に意味があり、その時々に自分がいるべき場所にいたんだと思えました。昨年は親しい方が何人かリスクを背負いながらも外国に移り住んでいるのを見て、自分も外に目を向けなくてはいけないのかと一年くらい悩んでいたのですが、今回の旅で、きっと自分が今日本にいる事には意味があるんだと思えるようになり、今ここで自分の出来る事を一生懸命しようと思えるようになりました。

思いがけず、とてつもなく大きな心の変化が色々とあった旅となりました。

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