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山あり谷あり

Tascam_resize.jpg練習に集中していたらまたブログが滞ってしまった...。
そしてブログを更新しない間に練習は色々な段階を経て来ました。

削ぎ落としに削ぎ落とす方向で練習を進めていたら、弾いていてもどんどんと曲の骨格が見えて来て余計なものが付かなくなりました。勝手に付けていた「感情」も意識しなくても削がれるようになって弾いていると、まるで自分が弾いていないかのように客観視出来ているような気になって、完全に自分の感情とは関係なく「自分を明け渡している」ような感覚でした。
自分でもこれには大満足で、やっとここまで来れたか、と自分でもハッピーでした。
ちょうどこの時期にグレン・グールドの記事を読んでいて彼がバッハの「フーガの技法」の曲について次のように語っていました。『これらの曲は,果てしなく続く灰色の陰影の世界です。私は灰色が大好きなのです。実は、シュヴァイツァーが素晴らしい事を云っています。『静寂で厳粛な世界、荒涼としていて厳しく、色も光も動きもない』と。」

これを読んで、自分の今の演奏自体も「灰色の世界」,水墨画のようなのかな〜と考えていました。演奏する側としては敢えて、色を付けず、聴き手側の心や想像に任せる感じなのかな〜と、妙に納得してしまいました。

ところがリサイタルも一ヶ月前に近づいて来ていたので、先週位から録音をし始めました。「調子がいい」と思い込んでいたのだが.....。

聴いてみて、愕然........................。

こんな事になっていたとは!!!
水墨画どころか,全く何もない!!!灰色一色の濃淡も何もない音楽になってしまっていた。そのあまりの面白なさ,魅力なさに大ショック。青くなってしまいました。どうしよう...。

しかし、コンサートも一ヶ月後なので落ち込んでいる暇もなく、すぐに改善に乗り出しました。ここからが面白いのだが、削ぎ落としに落としていはいたので,脚色する方はそんなに大変ではなく、逆に今までにないくらいに,楽しい。渋谷の超厚塗りの山姥メークを全部取って、スッピンにした状態に,今度は自分の顔を生かしたメークをするような感じでしょうか。素顔が見とれる程美しければそれが一番良かったのだが、そうもいかなかった(笑)。

昨日は初めての全曲通し練習。録音してみたら、ずっと良くなっていた(ホッ)。面白い事に結構自由に思いの向くままに弾いても,骨組みはしっかりと身に付いているので、音楽が壊れる事がなかった。あそこまで削ぎ落としたのは無駄ではなかった(笑)。

それにしても自分の演奏を録音するのは本当に大切。参考にしかならないが、色々と気付かされたり,考えさせられたりする事は間違いない。録音するのは憂鬱(自分と向き合わなくてはいけないから)だが、覚悟を決めて,録音して本当に良かった(笑)。危ない,危ない...。

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