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ユーモア

チェーホフの「かもめ」がきっかけでユーモアのについて色々と考えさせらているが、音楽の中のユーモアもかなり色々な形で含まれているように思う。クラシックは宗教や信仰と密接に関係しているので、もちろん曲によるが、ハイドンやモーツァルトなんて結構人を意図的に驚かせたり笑わせたりする要素があちこちに垣間見られる。

ベートーベンは特にそうで、「なくした小銭への怒り」という究極の面白い曲がある。ロンドン時代に一度だけ友人のMちゃんが弾いたのを聴いて一耳惚れ。面白い、というか、なくした1ペニーの小銭を一生懸命探している姿を想像すると、本当におかしくなってくる。未だにMちゃんに「あの曲また弾いて!」とお願いするのだが、「今、もう弾けない!あの曲凄く大変で,あの時は相当頑張った!」という。聴いている方はめちゃくちゃ楽しいのだが、短い曲なのに相当大変らしい。そういう理由からか、凄くいい曲なのに、コンサートでは滅多にお目に掛かれない。残念!

昔,友人のTとやはりベートーベンの最後のソナタ第32番に出て来る、延々と続く付点の付いたようなリズムについて「あれはどういうつもりなんだろうね?」という話になった。音楽的にちょっと軽いと云うか,ポップというか。さすがに弾いている方は厳格に弾くのだが、聴いている方としては真面目に聴くより、やはりノって楽しくなって来るし、楽しく聴かないと逆に滑稽に聴こえて来るような気さえする。「悲愴」や「熱情」、「テンペスト」そして宇宙の果てまでもいっちゃっているような「ハンマークラヴィア」を含む32もあるソナタ群の最後の最後に、このノリのいいリズムが出て来て、また延々と続いているのがとても不思議。友人と、「ベートーベンが本当にロックのようなノリで書いたとしたら凄いよね」という話で終わったように思う。
32曲のソナタの最後の最後でベートーベンは笑っていたのだろうか?どうだろう....。

苦しみや悲しみの多い人生。ユーモアに救われる事って本当に多いように思う。

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