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思いやり

                             釜石の朝焼け
%E9%87%9C%E7%9F%B3%E2%80%9914_resize.jpg一年一ヶ月振りでまた釜石に行ってきました。
一年に一回は行きたいと思うのだが、なかなか仕事の調整が付かず、一年を過ぎてしまいました。今回の活動は三日間。イベント等もなかったので、仮設住宅の集会所でみなさんが集まれる場を提供する「お茶っ子サロン」の主催のお手伝いが主な内容。手芸やゲームをしたり、お茶を飲んだり、新聞を読んだり、と皆さんが思い思いに自由に過ごすのだが、「何かをしながら」自然と話が出来る場を提供している。傾聴、心のケアが目的となっている。

仮設にいらっしゃる方は,一人一人がそれぞれに深い傷や大きな悲しみを背負っているのだが、今回は本当に「時間による癒し」を感じる事が出来ました。どんな人でも負った傷というものは消えないものだと思うが、やはり時間が経つと、それは生々しいものではなくなり、最初の頃は血が出たり,膿みが出たりしたものがかさぶたが出来るように、今回の皆さんのお話やお話する様子を見ると、あの地震との「距離」を少しだけ感じる事が出来ました。一緒に手芸をした優しそうなおばあちゃんが「あなたと同じくらいの娘がいたのよ。流されちゃったけど...。」とそれはそれは悲しそうな目をしていらしたし、小学生の女の子がトランプしながら「おじいちゃんはいるけど、おばあちゃんは流されちゃった」と話してくれると、心の中では本当に悲しくなってしまうのだが、皆さんの雰囲気が前とは比べ物にならないくらい良くなっているのを感じて「人って凄い力を持っている!」と、本当に勇気づけられました。

最後の日は、いつもお世話になっている釜石カトリック教会内での活動で、こちらもいらした方と卓球をしたり、お茶を飲んだり。そして、今回,初めて少しだけ,ピアノを弾きました。音楽は直に心に訴えかける力があるだけに、逆に私は自分の周りで大きな傷を負った時に音楽を聴けなくなってしまったという友人が何人かいるので、被災地でピアノを弾くのは本当に気を付けたいと思っていた。今回,釜石に行くのは5回目だが2回目位からいつも子供が好きそうなアニメの歌や唱歌の楽譜だけは持って行っていたが、今まで機会がなく...。
今回はちょっとリクエストがあったので、いらしていた方にお訊きしてから、静かにBGMとして弾いていました。シューベルトやバッハ、ドビュシーを何曲か弾きましたがやはり「月の光」は好評でした(笑)。あれは、やっぱり名曲なんだろうな...。
その後に、いらしていた方と一緒に唱歌を。びっくりしたのが、こちらのピアノと自由にハモって下さっていて聞いた事もない素敵なメロディーラインを作っていました。お母様と家で時々歌っているという事だったが、「ここに来るとインスピレーションが湧いて上手く歌える。家では全然だめだけど」と云っていた。

とにかく、被災地にいると色々と見たり,聞いたり、感じたり、思ったり、考えたり、と本当に濃い時間を過ごします。自分は自分の気持ちのために行くのだけど、ベースキャンプの方が、「被災地に来なくても、媒体を通してこっちの事を見たり聞いたりして心を痛める人がいる。それも祈りだと思うんだよね」と仰っていた。

集会所でのお茶をする場所提供の心のケアも「本当はもっとたくさんの人に来て欲しいけど...。でも、引きこもっている事で平和な人もいるからね。」とシスターがマリア様のような笑顔と声で話して下さったのもとても印象に残っています。

ボランティア・ベースキャンプのスタッフ、ボランティアでいらしていた方達、そして被災された方々自身がお互いを本当に心から思いやっている事が本当にひしひしと感じられる数日間でした。

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