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太刀を抜け

数年前の友人との会話。
私: 「ピアノ弾くのは大好きだけど、人前で弾くのはあまり好きじゃないんだよね。」
友人:「じゃ、なんでコンサートするの?」
私: 「上手くなりたいから」(一回のコンサートは練習の何十時間にも匹敵する)
友人:「なんで上手くなりたいの?」
私: 「人を感動させたいから」

矛盾しているこの自分の答えに凄く驚きました。

そして、今になってこのやり取りから当時、自分が凄く間違った道に進んじゃったのが見えています。
まず、人を感動させようと思って作った音楽なんかに人は感動しないのだ。もうここからして大きな勘違い。サービス精神はいいのだが、聴いてくれる人の事に思いが行き過ぎて、音楽から遠く遠くに離れてしまった。音楽とだけ向き合うべきなのに。自分の思いや感情はさておき、とにかく音楽だけが存在しなくてはいけないのだ。やっとそれが見えて来て、まだ完全な形にはなっていないが少しずつ出来つつある手応えがある。そして、自分でもそれが本当の音楽と思えるようになってきたら、人を感動させたい、という傲慢な思いではなく、共有したいとは思うようになって来た。
「人前で」っていうのも何だかその時の心境を映し出しているような気がする。「人前で弾く」というのは好きではなくても、「コンサート」というものは当時でも好きだったように思う。

%E7%82%B9%E6%BB%B4%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AB_resize.jpg秋に30分の短いプログラムだが、久しぶりにソロのコンサートがあります。昨日、やっとプログラムも最終的に決めたので、後は練習のみ。この一年半の修業の成果、出てくれるのかな〜。。。とちょっと弱気にもなったりするのだが、最近勇気づけてくれている詩があります。

太刀を抜け
太刀を抜け
今、太刀を抜け
生命の奥座敷に
据えてあるはず

岩崎航さんの五行詩。
今こそなのだ。
ここまでの覚悟を決める勇気が本当に欲しい。


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