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森林浴

昨日、恩師のリサイタルがあり、浜離宮ホールへ。オール北欧プログラムで、デンマークはC.ニールセン、フィンランドはシベリウス、そしてフィンランドの血を引く先生ご自身の作曲された曲、ノルウェーはグリーグを取り上げた渋いプログラムでした。一曲も馴染みのない前半でしたが、一つ一つの音を本当に丁寧に真摯に作り上げていらっしゃる先生のピアノに本当に背筋の伸びる思いで聞き入っていました。ピアノに対する姿勢や生き方までもを問い正された気がして、もっともっとやはりピアノに真剣に向き合わないといけない、とつくづく思わされました。

そして、後半のグリーグの「抒情小品集」。とにかく次から次へと北欧の美しい情景が見えるだけでなく、空気感や色や匂いまでもが感じられる素晴らしい演奏でした。大分前にロシアの有名ピアニストPさんのオール「抒情小品集」プログラムを聴きに行ったことがあるのだが、その時は何てつまらない曲集なんだろう、と思って帰ってきました。きれいなメロディーが並んでいるだけで、最初は何となく気持ちよく聞いていたのだが、10分もすると飽きてしまい、2時間近いコンサートが本当に苦痛となってしまいました。そして、つい最近、偶然なのだが、この作品集が好きな友人が「いつか弾いてほしい」とCDをくれたのだが、やはりあまり面白いとは思えませんでした。

しかし、今回の先生の演奏を聞いて、初めて、この曲の素晴らしさが分かりました。本当に一つ一つの作品は全く違う「抒情性」を持っており、作品ごとにこちらの感じるものも違うので、全く飽きることがありませんでした。昨日は東京は雨で、空もどんよりと黄色い色をしていましたが、グリーグが始まると、一気に透明感のある済んだ空気の中の真っ青な空と緑と深い青い水の情景の中にいるようで、本当に森林浴をしている気分になってしまいました。
何も映像がないのに、音だけでこれだけの情景を作り出せる先生は本当に凄いな〜と感激しました。こんなに素晴らしい先生にずっと習っていたことが本当に感謝で、これからも先生のように真摯にピアノと向き合い、精進しなくては、と思わせて頂けた素晴らしいコンサートでした。

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