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パルカローレ Ⅱ

今年に入ってもう一ヶ月になってしまうのですね。早い。。。

昨年の12月、色々と事情があり、練習を最低限にしていたのだが、1月1日からまた張り切って練習しています。本当にクラシック音楽を思いっきり弾けることに感謝。やはりクラシック音楽にしか辿り着けない領域があり、それを自分で追及・体験できることは本当に幸せなことと実感。5月のリサイタルのプログラムも決まり、毎日の練習がとても充実しています。

去年の最後のブログがバルカローレⅠだったので、遅ればせながら、その続きを(笑)。
ショパンのバルカローレ(舟歌)の思い出だが、私がとても尊敬しているピアニストTはとにかくショパンが素晴らしく、本当にショパン弾きと言っても過言ではないと思っている。数年前にコンサートで弾いていたシューベルトも素晴らしくて感動したのだが、彼のショパンを聴くと、作曲家との隔たりを全く感じないのである。

10年以上も前の話になるが、その彼がレコーディングをするというので、ついて行くことに。イギリスの田舎の小さなチャペル(All Saint's Church Tudeley)でのレコーディングだったのだが、そのチャペルのステンドグラスは全部シャガールがデザインしたものでした。周りに建物は全くなく、自然の中にポツンと建ったとても小さなチャペルに、友人のTとエンジニアの方が一人、そして私だけの3人。会衆が座るベンチでTが演奏するのを聴きながら、レコーディングは進んでいきました。もちろん防音ではないので、外の音(車や飛行機の音)が入らないように、と時間的にはかなり夜遅く、外はもう真っ暗。何曲か弾き進んだ後に、「集中するためにチャペル内の電気を消したい」、とTが言いだしました。消してしまうと完全に真っ暗になってしまうので、外からチャペルを照らす電気を付けたらどうか、という話になりました。チャペル内の電気を全部消して、外の照明を点けると、シャガールのステンドグラスの絵が全部チャペル内にほんのりと映りました。シャガールのあの美しい青色が壁に映る中で、Tはバルカローレを何回も弾き、私はそれをベンチで見ながら、聴きながらこんなに完璧な時間があっていいのだろうか、永遠に続いて欲しい!と思っていたのだが。。。

残念ながら、暖房も付けず(音がしてしまうため)にいたので、とても寒くて、トイレにどうしても行きたくなってしまい、おまけにチャペルにはトイレがないので、近くのパブまで車で送って頂き、そこで待機することになってしまった(涙)。
チャペルでの至福の時間は2時間ほどでしたが、今でも忘れられないバルカローレの思い出です。そんな夢のような時間をくれたTに本当に感謝。

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