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魂の奥深く

昨日、サントリーホールでのイーヴォ・ポゴロレリッチのリサイタルに行ってきました。
本当にすごかった。
素晴らしいとか感動とかを飛び越えたコンサートでした。

10代の頃、売れっ子だった時にも聴いたことがあり、それ以来のファンだったが、30年以上ぶりのリサイタル。一時は演奏活動もしなくなっており、病気もしたと聞いていたので、どんな演奏をするのか全く予想ができなかったが。。。

開演時間になって、会場が暗くなってもなかなか出てこない。会場も段々と緊張感に包まれ、10分以上経ってからやっと出てきたと思ったら、杖を持ってゆっくりゆっくりと歩いて出てきました。かなり心配だったが、最初の音から音が伸びやかに響いて、会場は一瞬にしてポゴレリッチの世界になっていました。

内面の世界に徹した演奏。あんなにも小さな音をあの3000人収容のホールで聴いたことがない。聴衆も一音も聞き漏らすまいと必死である。なので2時間以上のすごい緊張感である。
彼の魂の奥深くまで招き入れられている感があり、招き入れらている観客はその邪魔をしないように音ひとつ立てず、身動き一つしない。昨日の観客も素晴らしかったと思う。
内面の世界と言っても、独りよがりでもなく、おとなしいわけでもない。そこには情熱もあり、激しさも大きさもある。音楽の中のエネルギーで彼自身がどんどんと乗せられて爆発したりもする。最小限から最大限までの幅がスゴい。音楽、ピアノの可能性をまざまざと見せ付けられた。

プログラムを読むと彼の評価は極端に分かれるらしい。それもよく分かる気がする。世の中のコマーシャリズムに乗ってバリバリと弾いてコンサートを完売にする演奏家とは全く真逆の演奏である。派手さも華やかさもない。しかし、クラシックの本質をこんなにも実現している演奏家は今他にいないように思う。人間の魂の本当の美しさ、静けさ、愛の深さを感じ取ったコンサートでした。

余談だが、今朝ピアノを練習し始めたら、つくづく自分の世俗的な音にほとほと嫌になった(笑)。しかし、たどり着くことはできなくても、あのような世界が実現可能ということを見せられて、ますますピアノが好きになりました。

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